騒がないで




「なぁ、千紗」

「ん、何、鶴丸」

「君は俺たちが見えることについて、
どう思ってるんだ?」

「え、」





帰り道、突然そう問われた私は
思わず返答に困ってしまった。


鶴丸は来たばかりだけど三日月はもう割りと前からいるし、
比較的慣れたと言ってもいい。



では、それは私にとってどうなのか?



そんな事、考えたこともなかった。

急に波長が合うとかで目があってしまって、
君に決めた!と言ってついて来られた。


端から見たらどうなんだろう。



それは分からないけれど、
私はどうしてか嫌ではなかった。




最初は確かにはあ?と思っていたし
早く帰れよと思っていたけど、

たぶん強盗事件のあの時、
あの三日月の姿に安心していた自分に気付いてから。


もしかしたら、少しだけ、心のどこかで、
側に居てほしい、と思うようになったのかも知れない。





「ん……嫌では、ない、かな?」

「本当か!」

「ふふ、そうかそうか」





嫌ではない。


いないとちょっと寂しい、なんて本心は言えず、
そう答えた。



しかし二人はそれでも嬉しそうに表情を明るくした。







……あれ、待てよ。

安室さんに対してあれだけ嘘吐き嘘吐き
言ってたんだから私の嘘もお見通し?


えっ待って待ってそれは恥ずかし過ぎるでしょ止めてよ。



恐る恐る見れば、ニコニコと、いや、
なんだかニヨニヨと笑っている二人が居て、
私は顔が熱くなるのを感じた。




「もう!二人とも今日はベッド禁止、床で寝て!」


「えっちょっと待てそれは酷くないか」

「千紗、悪かった。謝るから許しておくれ。
じじいは床だけは嫌だ、腰がバキバキになるではないか」



咄嗟に出た言葉にすごく反応して焦る二人が面白くて、
私は思わず声に出して笑ってしまった。

三日月に至っては自分からじじいアピールをして
なんとか床就寝を避けようとしていて、
あっ狡いぞ!と鶴丸に言われていた。



「冗談だよ、冗談。半分くらい」

「もう半分は本気じゃないか!」

「千紗、千紗、じじいを殺す気か?」



もうちょっと、とからかってみれば予想以上の反応をした
二人に笑って、全部冗談だと分かった二人にチクチクと
言われながら私は家へ向かって歩いた。





(こんな日常が、すごく好き。)



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