その頃例の男性がこちらです





スーパーに足りなくなったトイレットペーパーや
洗剤などの日用品を買いに来た俺は、ある少女が目に入った。


少女と言っても、高校生くらいか。


洗剤を買いに来たらしい彼女は棚の上部にある
洗剤に手を伸ばしたが、届かない様だった。


つま先立ちで僅かに手が触れたくらいで洗剤を取ろうと
している姿にそれは危ないだろう、と思い近付いた。






案の定、バランスを崩した彼女はよろけ、洗剤が落ちる。


そのままでは彼女に当たりそうで、
咄嗟に腕を伸ばして彼女を支えると洗剤をキャッチした。




大丈夫かと訊ねればぴょんと姿勢を直して
お礼を言うその少女は、不覚にも可愛らしかった。




危険だからと注意をすれば判り易く落ち込む姿に
思わず笑みを溢すと不思議そうに見てくるその瞳に
つい、その頭を撫でた。





……自分でもどうしてそうしたのかは解らないが。












ふとどこからか視線を感じた。


なんだ?とそちらの方向__少女の後ろ辺りか?を見ると、
そこに何かモヤモヤとしたものが見えた。


見間違いではなく、明らかに何かがそこにある。



彼女を守るように纏り付くそのどこか眩しいモヤモヤに
俺は不思議と嫌な感じはしなかった。



が、うっすらと一瞬だけ、敵意を感じた。


それはどうやら、俺に向けられていた様だ。




すぐにそれも感じなくなり、は、と息を吐くと
自分が息を詰めていた事に初めて気付いた。









彼女の後ろ姿を見送りながら考える。

あれは何なのだろうか。


世間的に見たら幽霊だ守護霊だと騒ぐのかも
知れないな、と考えて、ふ、と笑った。



そんなオカルティックな話は、信憑性が薄過ぎる。
50:50(フィフティ・フィフティ)どころじゃない。



そう軽く自嘲して、俺も会計を済ませると
居候している家へと向かった。



- 29 -

*前次#


ページ: