たまの休息は




あの洗剤事故から約一週間。


私たちは何事もなく、平和に過ごしていた。





毎朝鶴丸にばあッと驚かされて飛び起きるため、
前よりは目がしゃっきりと覚めるようになった。



そして何より鶴丸の方が実は三日月より気遣いができる様で
鶴丸が空気を読んで三日月に声を掛けたりなんだりも
割りと多かった。意外だ。











さて、今日は平日だけど学校が休みで
両親と兄はそれぞれ仕事や大学に行っているため
私は家に一人でのびのびと過ごせる日!


……おまけが二人いるけど。






THUTAYAで借りたイギリスのドラマシリーズを
ひたすら観る日と決めたから、
DVDをセットして少し離れたところに
座椅子を置いてそこに座る。




ペネティクト・カンパーパッティの
シャーロック・ホームズシリーズだ。

ずっと気になっていたけど観たことの無い作品だったので
この日のために大人借りしたのだ
(兄にねだったら簡単だった、サンキューブラザー)




すると千紗、と呼ばれた。

何かと思ってそちらを向けば、胡座をかいて
自分の足をぽふぽふと叩く鶴丸がいた。



「……何?」

「ここに座るといい」

「え、なんで」

「え、嫌なのか?」



いや……嫌っていうか、なんで?

そう問えば、鶴丸はさも当たり前だろうと
言うように答える。



「君、これからそのでーぶいでーとやらを観るんだろう?
俺も観るからな、一緒に見れば良いだろう」



はあ、そうですか。

私座椅子のカケオくんに座るんだけど……
そう言いたかったけど、なんかもう面倒くさいので
鶴丸の言葉に従うことにした。


カケオくんは私が中学に入る記念で我が家に来た
私専用のふかふか座椅子くんです。



私重いよぅ……とかは言わないけどさ。
(重くてもそれは座れと言った方の責任だ文句言うな)






身長がそこまで高くないので、日頃細い細い折れそうだと
ちょっと馬鹿にしている鶴丸にがっしりと覆われて
いささか不本意だけど仕方ない。



私がリモコンの再生ボタンを押して映像が流れ始めると
鶴丸は私の頭に顎を乗せてぐでりだらりとのし掛かってくる。


重くて千紗ちゃんキレそう。




退いて、嫌だ、重い、嫌だ、やめて、嫌だ……と
不毛な争いを繰り返していると、
三日月はそれを気にすることなくこちらへ来て
斜め前に座ると私に撓垂れかかった。



……前後から重い……




しかしそろそろコマーシャルが終わり
本編が始まろうとしていたので
とりあえず諦めて映像へ意識を向けた。





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