さあ、酒を飲み交そう






次の日の夜、3人はニューヨークでNo. 1と評判のイタリアン
レストランのボックス席で3人で食べられる最後の(大げさだと
輪は笑ったが)食事を楽しみ、近くのパブへと入った。
輪は最近二十歳になったばかりだったが、既にある程度の
酒は飲み慣れていた。数ある中でも一番好きなのはエールビール
特にフルーツエールである。グイとビアグラスを煽ると輪は2人を見た。


マシューは最近のお気に入りだというテネシーウィスキーのロック
ミアは日本人の母の影響だと言って梅酒のソーダ割りをそれぞれ頼み
自分よりも年齢が低いながら警察に協力し、少なくともここ
ニューヨークで知らぬ者はいない霊能探偵“カミカゼ”のその姿を
見ていた。2人とも輪の事をかなり好いているのだ。


「Just the same way of drinking as you always did.」
(まったく相変わらずの飲みっぷりね)

「Be careful not to drink alcohol too much after this.
There would be a lot of delicious that in Japan, but
ought to be no man to help you when you get drunk
and get a tipsy lurch.」
(これからは飲み過ぎないように気を付けろよ。日本には美味い
酒もたくさんあるんだろうけど、お前が酔ってフラフラした時に
助けてくれる奴はいないかも知れないんだからな)


2人の心配は尤もだった。輪は酒の味を占めたせいか、
それとも常にストレスのかかる環境にいるせいか、飲み過ぎて
マシューやミアにケアされる事がままあるのだ。それが2人の
唯一の心配の種であった。


「Why, why! I know it, I'm not a child as you think!」
(ちょっと、もう!分かってるよ、私だって2人が思ってるほど
子どもじゃないんだから!)


顔色は変わらないながらも普段よりテンションの高い輪の
抗議の声に2人は自分たちからしたら年が一回りも違う輪は
充分子どもだと言って笑った。



時計の針が23時を指した頃、ミアがそろそろ最後のオーダーに
しようと言って“いつもの”酒をを頼んだ。それは『カミカゼ』。
輪と同じ名のついたカクテルである。


そのカクテル言葉は“あなたを救う”。マシューとミアからの思いと
掛けてあるのだ。何かあった時は、頼ってほしい。そんな願いを
込めて、2人は輪に微笑みかけるとカラン、とグラスを
鳴らして3人は勢いよく中身を煽った。





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