辺獄と星

 宵の口、紙をめくるさざめきがリビングに溶け込む。
「なあ、テウタ。俺とどこまで行ける?」
 つぶらな瞳がぱちぱちっと瞬きをふたつはじく。その星のかがやきを聞き逃すことは罪にも等しい。
「何言ってるの」
 この突飛な質問に彼女はなんと答えるのだろうと、一房零れた黄金こがねの髪を目で追っていたが、呆れのかげりがさした横顔に我ながら抽象的すぎだったかと反省する。テウタの反応を面白がりたかったのが裏目に出てしまった。誤魔化しではないけれど似たようなものだ。
 ちゃんと言葉にしなければならないと言葉を継ごうとした瞬間、くすんだレンズの向こう側から真っ直ぐな視線が貫いた。
「馬鹿ね、ずっと一緒よ!」
 ――天国だろうが、地獄だろうが。
「……そっか」
「ちょっと! リンボ⁉ 酔っぱらってる⁉」
「残念ながら一滴も飲んでない」
 もがくテウタが痛く感じないギリギリの力で抱き締める。うなじから漂うシャンプーの香りは鼻腔をくすぐって、柔らかな肢体へといざなう。
 俺のテウタ。
 愛しくて、カッコいい、たったひとりのおんなのこ。
「テウタ」
 たった三文字に静かな夜が軋んで第二幕が落とされる。先程まで二人を遮っていたメガネはとっくのとうにテーブルの上に置かれていた。
 これからどうするなんて訊いてやらない。他の奴らが明日まで帰ってこないことはテウタも知っている。
 星が瞬く空の下、重なる吐息に身を焦がした。


BoyMeetsLady
BoyMeetsXXX