トゥモローに寄ってきた野郎たちに虫がついたと深いに思ったことは会った。けれどちょっと目を離した隙に知り合いの男に笑いかけているほまれを見たら、その時以上の衝動に襲われた。
「――ハリーってば!」
グイッと力強く腕が引っ張られ、
「どうしたの。ハリーらしくないよ」
本当にどうしたのだろう。どうかしていることは間違いない。
腰の辺りまで長くなった髪。
差が縮まった身長。
どこからともなく漂う香水。
あの頃と変わったものすべてに腹の虫が騒ぎ出す。
――いいや、この世に変わらないものがあるというのか。
未来も明日も、今この瞬間も形を変えながら進んでいく。唯一変わらないと思っているこの細腕も自分の知らないうちに他の男が触っていたかもしれない。もしくはほまれから触っていたかもしれない。そう考えるだけでまた焦がされているのではと思うほど胸が苦しくなる。
心配そうに見上げてくるほまれの後ろで、さっきまでいた縁日の灯りが吹かれた風と蛍のように戯れていた。
言わなければならない。ほまれは理由を欲しがっているのだから答えるのが自分の義務だ。けれどもこの感情の名前を自分は知らなかった。
「ほまれ」
ようやく落ちた三文字は低く響き、ほまれの髪で咲いていた簪が静かな夏の夜に揺れる。似合うと思った己の感性を信じてよかった。
山吹の瞳に映る自分はどんな顔をしているのだろう。生憎暗がりではっきりとは見えない。
時間が止まっていた世界に花火がひとつ打ちあがる。だがどちらも互いの目を逸らすことができなかった。
飛んで火にいる夏の虫。
どっちが、だなんて神サマがいるのなら教えてほしかった。