甘えたがり

 俺は立ち上がると、目を瞑ってすうと息を吸う振りをした。体が流体のようにうねり、顔や体が少しずつ変化していく。先程まではちょうどぴったりだったサイズの騎士の服に少しシワができた。身長が10センチルほど下がり、ラピスフィーネとほとんど変わらない高さになる。
 銀髪はさらりと長く伸びていき、腰元まで伸びたあとにふわりと待った。顔は──こいつの顔でも参考にするか。顔つきは丸みを帯び、ほんの少し瞳が大きくなる。別にラピスフィーネの顔に難点があるわけじゃないが、それにもう少しアクセントを付けてやって、“かわいい女の子”の完成。

「さて、これでいい?」

 悪くない。私好みの声だ。

「えっと……あの……」
「見たのは初めてだったね。驚かせた?」

 さっきよりほんの少し丁寧な口調。私は一番似合う姿に、一番似合う声、一番似合う話し方を合わせる。いわば、私の姿は私の芸術だ。完璧でなくては意味がない。そして宝石が似合う姿でないと。

「えっと……本当に、女の子になって?」
「もちろん。触ってみる?」

 ラピスフィーネが立ち上がったので、私は彼女の手を取った。皮膚の上からでも、ありありと彼女の脈拍を感じられた。正しいリズムでありながら、どこか不揃いを並べたような音。これを真似すれば、彼女より美しくなれるだろうか。

「……ちょ、ちょっと! 女の子がこんなことをしたらいけませんわ」

 胸に手を当てたことに慌てているらしい。なんだこいつ、今更すぎる。

「男でも女でもないから。いいの」
「よ、よくないですの……」

 ラピスフィーネは羨望と憧憬の眼差しでこちらを捉えた。潤んだ瞳が僅かに揺れる。

「私よりも、かわいいですの……」

 当たり前。

「そりゃね。ラピスフィーネよりかわいくしたから」
「けど、私はラピスフィーネの方がかわいいと思うな」
「そ、そんなことありませんわ」
「そうだよ? その大きくて吸い込まれるような瞳も、艶めいた唇も、蒸気した頬も、食べちゃいたいくらい、かわいい」

 女の姿で言ったのに、彼女は照れてしまった。甘ったるい声で言ったから仕方ないか。

「いつもはそんなこと言わないのに。……どうして意地悪するんですの」
「まあ、女の見た目なら多少言いすぎても大丈夫かなって」

 男の時に言って、これ以上夢中になられても困る。とはいえこうして女の姿になったなら、多少からかっても罰は当たらないはずだ。別に嘘は言ってない。彼女を食べれば美味しそうだし、かわいい方なのはたしかだ。今私が参考にしたくらいなんだから。

「大丈夫じゃないですの。サフィアはサフィアだわ」
「そうだな」

 私は首を傾げて尋ねた。

「それで、悩んでたことってなあに?」
「……女の子になったからって、話せるわけじゃないわ」
「えー、これ大変なんだけどな」
「そうなんですの?」
「そうだよ。一旦姿を変えたら、1週間は怪我が治らなくなるんだ。だから気をつけて生活しなきゃならない」
「それじゃあ……刺されたら、サフィアは死んでしまうの?」
「まさか。死にやしない。ただ血が流れ続けるってだけ」

 ラピスフィーネはほっと息を吐いた。

「だが、ずっと流れてたらおかしいだろ?」
「そうですわね」
「だから普通はしないんだよ? この姿になって、変えたのは今回が初めて」
「本当に?! 嬉しい!」

 喜んでくれるなら何より。やった甲斐がある。私としては面倒だと思ったけど、運命がそう言うなら抵抗する気もなかった。

「どうせ姿変えたなら、ラピスフィーネがなってほしい姿に変えてあげる。魔物でも、他の使族でも、知り合いでも、誰でもいいよ。私が知っているものなら」
「なんでもなれるんですの?」
「もちろん」

 ラピスフィーネは少し考える素振りをしたあと、恐る恐る言った。

「サフィアの……本当の姿を見たいわ」

 ──なるほど。この子はとことん“悪魔”が好きらしい。醜い悪魔を見て、いったい何を得るものがあるのだろう。
 いや、彼女が本当に欲しいものはとうに分かっている。少しでも私たちに近付きたいのだ。どんなに言葉を重ね知識を蓄えても、一生分からない“私たち”をその目で確かめてみたいのだろう。だが、本当は何もないのだ。最初から何もなかったし、今も、──どこにも、私なんていない。

「それはしたくないな」
「どうしてですの?」
「ラピスフィーネには見せたくないからだよ」
「誰なら見せるんですの?」

 私は首を振った。

「誰にも見せないよ」
「……誰にも? 同じ悪魔にも?」

 私を独占したいの? こんなに良くしてあげてるのに。笑って答えた。

「同じ悪魔は、見せなくても見えちゃうから。けど、それ以外は見せないよ」

 ラピスフィーネは俯いて息を吐いた。でも、またふと顔を上げる。

「あの子は? あの……赤髪の」

 メアリが出てくるってことは、やっぱり私が誰かのものになるのが嫌なんだろう。

 彼らは愚かだ。人間も、人魚も、ヴァンピールも、|妖鬼《オニ》も、アークエンジェルも、獣人も、何も分かっていない。
 自然は美しく、神は気高く、彼らは崇拝すべき存在で、畏怖もすれば憧憬も抱く。だが、本当はこれらに意味なんてない。おそらく神も同じだろう。

 私たちが概念で作られているように、神は数多の概念の寄せ集めだ。数多を照らし、全知全能、不死身の体に近くなれば近くなるほど、それは、薄い透明の膜のように広がっていく。どこにも中心はなく、色はなく、無常の時が流れ続けている──。そこに命の神秘はない。

 私たちが魅力的なはずも、美しいはずもないのに。……だが、皆自分にないものを求めるのだろう。何より私がそうなのだから。

「ああ……メアリね。メアリにも見せないよ」
「どうしてですの? サフィアにとって、メアリは……」
「宝石だね。──お前も、メアリもそうだけどな」

 彼女の顎に指を当て、その瞳が見えるようにこちらへ向けた。

「私などよりずっと美しい。だから、自分の体は見せたくないんだよ。あまりにも違うから」
「……私は醜いなんて思わないわ!」
「そうかもな。今までも、そう言ってくれる人はいたよ」

 私は首を振って笑った。

「でも、それでも驚くだろうし、気を遣うと思う。それに私自身が嫌なんだ。だからお願い。これは諦めて?」

 これ以上駄々をこねられたら困る。目を瞬き、飾り気のない声──それでいて愛らしい声色で言った。男も女も関係ない。魅力的でさえあれば、いくらでも言うことを聞かせられる。

「わかったわ。その代わり、他の方にも見せたらダメよ?」
「見せないよ。安心して」

 見せたくもねえよ。

「それじゃあ、悪魔っぽい姿になってほしいわ」
「悪魔っぽい姿?」
「昔の悪魔は、もっと色んなものをつけていたんでしょう? 角とか、牙とか……」
「ああ」

 まあ、ラピスフィーネは“悪魔”が好きだもんね。
 私はすくりと立ち上がると音を立てて指を弾いた。頭からは禍々しい角が2本、指は人間の指から黒く尖った鉤爪に変わる。履いていた靴はいつの間にか踵のない長い二本指に変わっており、それも指と同じように黒く濁っている。
 久しぶりだけど、それなりに綺麗なものになった。私の本来の姿に比べたら、こんなの“悪魔”でもなんでもない。
 でもこういう恐ろしい姿が好ましいんだろう。自分たちと違ってて、魅力的に映るから。

「……素晴らしいわ! 昔は、こういう悪魔がたくさんいたの?」
「んー、そうだね。中にはこういうのが好きなやつもいたよ」

 主にこういう格好をしていたのは、驚かせたがりのやつだとか、恐怖を植え付けたがるやつだとか、人殺しだとか、そういう妖魔だ。これでもかというほどコテコテに装飾品を付けて暴れていたっけ。懐かしい。
 もうあいつらの姿を見ることは永遠にないんだろうな。

「サフィアは? どうしていたの?」
「俺はなあ」……間違えた。「私は普段は生やしてなかったよ。でも、必要な時は爪とか使ってたかな」

 私は彼女に一歩近づくと、鉤爪を首筋に当てた。

「ほら。凶器が必要ないから、楽ちんだろ?」

 こうしてやると3000年前を思い出す。あの頃はよかった。いくらでも誰のことでも食えたのに。
 今だってラピスフィーネを殺すことなど造作もない。でも──それで私たちは絶滅に追いやられたのだ。今彼女を食ったところで、なんの得もない。

「それで……殺すの?」
「そうだよ。殺してほしい?」

 彼女が不安げに表情を強ばらせるのを見ると、なるほど、私はやっぱり悪魔なのかもしれない。私は安心させるように笑って見せた。

「冗談だよ。ラピスフィーネのことは、守りはすれど、殺しやしない」
「そうなの」

 彼女の隣に腰掛ける。

「じゃあ、さっきの、教えてくれる?」
「まだ諦めていなかったんですの?」
「もちろん」

 ラピスフィーネは目を泳がせたあと、そっと私の角の方に手を伸ばした。角は美しい曲線を描き、人を殺せるくらい鋭く尖らせた。彼女の柔らかい掌じゃ、触れるだけで血が流れるだろう。
 私が大した治癒魔法が使えない以上、怪我をされたら困る。女王に何か言われそうだ。

「怪我しないように、気をつけてね」
「……ええ。これ、すごいわね。初めて見たわ」
「たしかにこの形の角を持ってる使族はいないからね」

 ある魔物の角を模した作りだ。足や腕だけでなく、翼を付けたり尾を付けることもある。ただ、翼も尾もわりと邪魔だ。道を歩きづらい。つければ、誰もが見惚れるほど美しい姿にできるけど。
 ラピスフィーネがおずおずと口を開いた。

「リジェガル王子……とね」
「ああ」
「お子を……作らないと、いけないでしょう? それが、その……」

 やっぱりそんなことか。だがそういう反応をすれば悲しませるだろうし、理解のある友達を装った。

「そっか、怖いんだね。あいつと色々すんのが嫌なのか?」
「そう……ですわね。よく知らないお人だもの。それにお慕いしている方でもないもの」
「好きな人ならいいの?」

 ラピスフィーネはゆっくり頷いた。

「でも、そんなの無理だって分かってますの。私は王女だから、好きでもない方と結婚する運命なのよ……」
「お前もお姫様だから、恋に憧れるのか?」
「誰でも憧れるわ! 女の子なら! かっこよくて素敵な人と恋に落ちて、守ってもらうのよ!」

 どの時代、どの世界のお姫様も変わらないものだな。一度くらい私もそう思ってみたかったよ。冗談。

「今は好きな人がいないのか?」

 ラピスフィーネははっとした顔で俺を見たあと、急いで目を逸らした。分かりやすすぎるでしょう。まあ知ってて聞いたんだが。

「……いるけど、叶わないもの」
「どうして?」
「……好きになって、くれないもの」
「それってさ、俺のこと?」

 一瞬で体を作り替えた。もう女の体に用はない。
 基本的には異性で接した方が上手くいく。女になる時は可憐な振りをしてつけ込めばいいし、男は優しい振りをして支配すればいい。
 利用価値のない相手? そういう者は、食ってしまうのが一番楽だ。機知に富んだ会話もできず、宝石も与えられず、俺の人生に霞ほどのメリットも与えられないような者なら、すみやかに食べてしまおう。“趣味”としてなら、楽しませてくれるだろう。

「ず、ずるいですわ。今のタイミングで戻るなんて」

 ずるいやり方が一番楽なんだぜ。

「つい。面白くて」
「……さ、サフィアじゃないですわ!」
「そっか、残念だな」

 俺じゃないのか。あー、悲しい。涙が出そう。

「落ち込んだフリをしてもいけませんのよ。サフィアは私が好きかどうかなんて、気にしないわ」
「たしかに。分かってるじゃん」

 ラピスフィーネがふうっと息をついた。俺に振り回されてばっかりだから疲れちゃったんだな。あとで添い寝でもしてやるからさ、許してくれ、な?

「と、ともかくそういうことなの。リジェガル王子なんて、嫌ですわ」
「けどじゃあ、どうすんだ? やらねえと怒られんだろ?」
「……サフィアが、連れ出してくれればいいのに」

 ラピスフィーネは、俺に聞こえないようにか細い声で呟いた。だが妖魔に耳とか目とかいう概念はない。聞きたいものは聞こえるし、見たいものは見える。だから聞き逃すことなんてもちろんないし、聞こえないふりをするつもりもさらさらなかった。

「そうだな、ごめんな」

 どんなに彼女が望んでも、そして仮に俺が『連れ出してあげるよ』と言ったところで、ラピスフィーネは王女をやめないだろう。こいつはそういうやつだ。
 えてして王族とはそういうものだ。そうでなければ王になどなれない。もちろんこれまで無能な王がいなかったわけではない。だが俺が取り入る国がお飾りの王であるのはちと困る。滅ぼされちゃ適わんからな。
 だから世話になると決めた国の王族が阿呆にならぬよう育てるのも、俺の仕事なのだ。あーめんどくせ。

 俺は彼女を引き寄せた。その方が『ごめんな』って言葉が映えるから。

「……思ってないでしょう?」
「思ってるよ」

 そりゃ悪いとは思ってない。彼女を連れ出せないのは俺のせいじゃない。そんなことしても愚にも付かない。彼女のためにも、俺のためにもならない。
 だからむしろ頑張って働いてくれ。応援はしてるぜ、だから謝ったんだから。

 俺は続けた。

「ラピスフィーネが望むなら」

 そういえば、彼女は『フィーネ』と呼ばれる方が嬉しいんだったな。

「フィーネが望むなら、可能な限りなんでも叶えてやる」

 なんでもできるから。

「……私がリジェガル様と致さなくても、子供が生まれるようにはできませんの?」
「んー、そうだなあ」

 方法はいくらでも思いつく。とりあえず一番分かりやすいものを彼女に伝えることにした。

「やれなくはねえ。フィーネに魔法をかけて、妊娠したように見せ、どこか違うところから赤ん坊を拾ってくる」
「拾ってくるって、そんなことをしたらその赤ちゃんのお母様が……」
「大丈夫。探されないように、捨てられた子を拾ってくるから」
「捨てられた子……」

 フィーネは俯いた。

「お前が本当にしたくないなら、やってやるよ。女王様やリジェガル王子にはバレないように」
「だけど、リジェガル王子がおかしいと思うわ。致していないのに、お子がいるだなんて」
「んー、じゃあ俺が、お前に変身してリジェガルとヤってきてやるよ」
「えっ?!」

 俺の腕の中で、ラピスフィーネは顔を上げた。

「だってしたくねえんだろ? 大丈夫、お前のことはよく知ってるから、ちゃんと演技してやるよ」

 そういうことじゃない、そう言いたげな顔だったが、俺は気付かないフリをした。男の“俺”が、リジェガル王子と夜伽をするのは違和感があるんだろう。俺としちゃ、違和感も嫌悪感もないが。
 ラピスフィーネは俺の胸元に顔を埋めた。

「でも……もしバレたら……」
「絶対バレない。誓うよ」
「本当に? お母様にも?」
「ああ。万が一誰かが怪しんでも、魔法でなんとかしてやるから」
「そんなこともできるの?」
「俺はなんでもできるんだろ?」
「……ええ、そうよ。そう」

 俺は意味もなく、彼女の髪の毛を鉤爪ですいた。あと少し力を入れれば、彼女の可憐な顔を抉れるだろう。久しく食ってない。今ここで彼女を襲ったら、泣き叫ぶだろうか? それとも喜んで受け入れるだろうか?

「だから安心しろ。フィーネは、俺がいる限り悩むことなんてねえから」

 俺の口が勝手に答えていた。まあ本当のことだからいいや。

「……本当に?」
「本当」
「……じゃあ、私の“王子様”は?」

 俺はお前の悪魔じゃないのかよ。

「探して来いって?」
「……いる、けど」

 そうだな、愛せないからな。それを知ってもなお、まだ俺と仲良くしたがるんだから見上げたお嬢さんだ。
 別に好かれて嬉しくはない。だが、嫌われるよりはずっとマシだ。あわよくば世界中の者が俺を好きになればいい。そうすれば自動的にみんなが俺に宝石を渡すようになる。おお、なんと幸せな世界。

 とそんな夢物語は置いておいて、実際彼女は、好きゆえか王女としての威厳なのか、妖魔である俺に宝石をくれる。それだけで彼女を重宝する価値はある。

「俺はお前のこと愛しちゃいねえけど、大事にしてやってんだろ?」
「でもそれは、宝石を渡すからだわ。もし私が王女じゃなくなったら──」

 彼女の言葉を遮った。

「フィーネが王女じゃなくなっても、大事にしてやるよ」
「嘘よ」
「嘘じゃねえよ。王女じゃないなら、一緒に船に乗せてやるから」
「でも……私は狩りはできないわ」
「教えてやるよ。できるようになるまで」
「サフィアが?」
「ああ。お前が死ぬまでは、面倒見てやる」
「……大変ではないの?」
「そりゃちとめんどいが、俺はそんなに非情じゃないぜ。今よりお願いは聞いてあげられねえかもしれないがな」

 疑ってるって顔だ。なんでそんなに疑われるかなー、別に俺、何も悪いことはしてないのに。
 ラピスフィーネを船に入れることも、彼女に人殺しを覚えさせるのも大した労力じゃない。
 彼女が王女じゃなくなっても、彼女が今まで王女として生きてきた道が嘘に変わるわけではないのだ。元々平民として生きてきた少女と、女王になるために訓練された少女じゃわけが違う。こいつが没落したところで、俺の手にかかれば王は無理でも貴族くらいになら戻せるだろう。
 貴族が嫌なら商人になってもらえばいい。掴んだ人脈を即刻切り捨てるのは阿呆のすることだ。それに俺が今までこいつに費やした時間が無駄になるだろうが。

「こっち向け」
「……サフィア」
「そんな顔すんなよ。せっかくもう一日いることにしてやったんだから」

 どうせ話すなら、快活なラピスフィーネの方が好きだ。

「そうですわね。でも、恋が叶わなくて悲しいの」

 俺が考えていること──王女じゃなくなってもお前には価値があると、そう伝えてもよかった。だが、そう言うよりもずっと簡単で、もっと分かりやすい言葉がある。

「俺がお前を愛してなくても、お前は俺のお姫様だよ」

 彼女はしかとこちらを見据えた。

「本当に?」
「本当に」
「サフィアは……悪魔でしょう? 私のことを見捨てないの?」

 どれほど俺に見捨てられたいんだよ、こいつ。

「見捨てることをお望みなら、仰せのままに」

 ラピスフィーネはくすくす笑った。ようやく理解したらしい。

「分かったわ。優しい悪魔さん」
「ああ」