レヴィへの手紙

レヴィは俺の呪いだ。
恋は盲目とはよく言ったもの。あいつこそ、100年もそばにいて“俺”を見たことは一度もない。いや、見る気がねえんだろう。
俺が悪魔だと知っていてもなお、宝石のように特別視してもらえねえことを嘆いている。辛いなら辛いと言えばいい。嫌なら嫌だと言えばいい。縋りつくなら慰めてやるのに、彼女自身も運命も、その機会すら与えてくれない。俺の言葉を聞く気もなく、雁字搦めの理想に捕らわれ求め続けている。
甘い言葉を囁く俺は俺じゃないらしい。冷たく振る舞う俺が俺らしい。どれも俺だよ、わかんねえかな。自由に宝石に触り、持ち出し、壊すあいつを見ても関心を持たないのが俺だなんて、本当、彼女の自尊心には恐れ入る。
俺はあいつになんでも与えてやってるよな?俺の隣という居場所、酒を注いだり宝石を磨いたりする仕事、魔法、知識、部屋、服、名前。これだけ享受していながら、自分を見てくれないと思いこんでるんだぜ?他ならぬこの俺が、なんの益もなしに可愛がってるっていうのに。盲目にもほどがあるよなあ?

レヴィほど殺したいやつはいねえよ。あいつほど俺の心を苛むやつはいない。ベッドの天蓋に気づいたときは四肢をもいで火炙りにしようかと思ったし、椅子をひっくり返し机上の宝石を落としたときは怒りはおろか喪神しそうになった。だが、そうしなかったし、そうはならなかった。そうだな、彼女を恨むのは間違っているかもしれない。すべては運命が彼女を愛しすぎているがゆえで、彼女は欠片もこの本心を知らないのだから。
それでもあいつは“俺”が好きだという。今までも歪んだ理想に当てはめて俺を愛するやつはいたが、運命に縛られちゃあ手も足も出ない。突き放すことも、優しく質すことも魔法で操ることも、もちろん殺すこともできない。だから俺は彼女に願うばかりさ。どうか俺を好きなら、もう苦しめないでくれと。もう少しこっちを見てくれと。
だから彼女は呪いだ。これ以上ないほどの重い足枷。

……とまあ、手紙にしちゃあちと暗すぎたな。俺は本来もう少し優しくて明るい性格なんだぜ?変に思われるからこう振る舞うだけで。ただレヴィのことは本当に困ってるから、近いうちに殺せるようまた神に祈るとでもするよ。んじゃな。