前戯
耳朶を食み、鼓膜の近くに彼の吐息が零れる。
「っは、ぁ……んッ……んぁ!」
首の付け根を強く噛まれ、全身がびくんと跳ねる。彼は噛んだまま柔らかい舌を動かし、皮膚をちろちろと舐めた。疼痛と快感が同時に襲う。
「ゃぁ、は……ん、ぁあ……」
唇がすうと皮膚を這い、耳孔に尖らせた舌を挿しこんだ。ぴちゃぴちゃと音を立て鼓膜を揺らす。
「やん、ぁっ、ぁっ……は、ぁ……」
ショーツをずり下ろされる。乳丘の突起周りだけを撫でている手に焦れったくなり、せがむように体をよじった。
「なに」
掠れた声が囁く。
「……やぁだ、焦らさ、ないで」
喉の奥で嗤い、細い指がそっと胸の蕾を摘んだ。緩く引っ掻くように指の腹が粒を弄る。求めていた恍惚に体が悶えきゅんきゅんと胸が苦しくなっていく。
「ぁ、あ……ん、やぁっ、は、ぁ……」
いつの間にかショーツは脱がされていて、私は裸の股を擦り合わせた。さっきキスされていたときからずっと内側は水浸しだった。粘ついた液は既に蜜壷から溢れ、太ももにまで銀糸が伸びている。
ラムズは触れるようなキスをひとつして、鎖骨まで唇を滑らせ、ふわりと膨れた右の頂きを食んだ。
「ぁ! んや……っは、」
舌の腹でやんわりとなぞられ、押され、弾くように愛撫される。甘噛みし、媚芯を舌で捏ね回される。左の尖りは指で摘まれ、きゅうと押し潰されこりこりと弾かれる。指や舌で絶え間なく擽られ、甘い疼きが胸から下腹部まで伝っていく。
もじもじと体をくねらせ、快を逃すように体を布団に擦り付けた。膝を立て、ねだるように彼の脚と絡ませようとする。ラムズは太腿を掴み、その内側にするすると手を滑らせた。それだけで体が悦ぶ。長いあいだ焦らされ続けた奥が既にひくひくと口を開けている。
くちゅ、と指が奥に沈んだ。
「あ、ッ」
惚けた嬌声が漏れ、思わず口を覆った。ぬるぬるとした蜜液の溢れたそこを、掻くように弄られる。
「なあ。これやる必要ある」
「……は、ぁッ。え、?」
根元まで埋まった指がぐちゅぐちゅとナカを掻き回し、同時に外側の愛粒を違う指の腹が何度もなぞった。既に奥のいちばんイイ所を探り当てられ、虐めるようにそこをくにくにと押される。腰が跳ねるのを別の腕で押さえつけられ、行き場のない快感で苦しくなっていく。
「十分濡れてんじゃん」
「ん、ぁ……そ。だ、けど。んぁ!? やんッ!」
蕩けた蜜を刷り込むように花芯をちゅくちゅくと弾き、一緒に肉壺を掻く指が好いところを掠め、焦らし、遊ばれる。
頭が快感でいっぱいになり、脳が蕩けていく。お客さんの中にも上手い人はいたけど、こんなによがったことはない。それにナカと粒を両方弄られるなんて、そんなの────。
「ぁ、やッ! んん、っ、あ!」
さんざん焦らされていた秘窟に、強い刺激が繰り返し刻まれる。びりびりと痺れるような淫靡な快が下腹部に走っていく。
「ん、ぁあ、らむ。じゅ、やんッ! は、ぁ!」
見え隠れする白い瞬きに手が届きそうになって、だらしなく舌を伸ばしながら喘いだ。彼の腕を強く掴み、体が強ばる。奥を嬲る指がぐちゅりと甘い肉感を植え、膨れた芯芽がぴくぴくと痙攣した。気持ちいい、気持ちいい気持ちいい気持ちいい気持ちいい。
「んぁ、あぁッ! や?! っあ……!」
下腹部を貫くように快感が走り、真っ白の絶頂に包まれた。あまりの強烈な交歓に、その余韻だけで体が震えている。びくんびくんと秘部の周りが疼いた。息が乱れ、うるさい鼓動に胸が上下する。
「っは……ぁ……。はァッ……んん……」
ど、同時にイかされた? そんな器用に指、動かせる? それに、まだちょっとしか……触ってないじゃ、ん。まぁそれは私が既に濡れてたとか、興奮してたとか、あるかもしれないけど。
「ラム、ズ……」
「なに」
「おかしい、よ。絶対」
「何が」
「片手で両方、いじるとか。無理でしょ。ずるい、なにしたの。まほう?」
彼は軽く笑い、愛液がぐっしょりついた指を広げた。彼の赤い舌が扇情的にそれを舐めとる。そのあと指をぱらぱらと内側に折っていった。そして外側にも、すべての指がぐにゃりと曲がる。
「俺、指の神経とか繋がってねえから。好きなようにできる」
「……は? 意味、わかんな……。ずる……」
「もっかいやる?」
「え、もういい。大丈夫。二回以上とか、ほとんどイかない、しぃ」
「じゃあ何回できるかやってみるか」
彼は私の太腿に手を当て、無理やり開いた。絶頂したばかりのそこは、まだ愛液がどろどろと蕩け、太腿の付け根まで濡れている。
「い、いい。いい。気持ちかった、だから。んっ、は、ぁッ……」
彼は私の制止の声も聞かずに、敏感になった肉粒をくぃと撫でた。粘液をぐちゅぐちゅと周りに撫でつけ、粒だけは羽根帚で触れるように微かな刺激だけを与え続けた。違う指が腟内に挿さり、入口をなぞられる。出したり入れたりされるたび、柔い肉孔が指に吸いつく。思い出したように花芽をくちゅんと掻かれ、「あっ、」と声を上げると、すぐにそれは両側を挟み撫でるのに変わってしまう。花びらばかりを弄び絶妙に好いところを避けて、もどかしい淫楽ばかりが募っていく。
「ゃ、ぁ。ねっ、あッ。ねが……! やめ、ッて、は、……んッ!」
彼は手を伸ばし、胸の頂きを同時に弄った。指の腹が乳丘の尖りを摩った瞬間、体が仰け反った。
「んぁ……! やァッ!」
雷が落ちたような絶頂に体が悲鳴を上げる。下腹部がじんじんと疼き、口の中の唾液が独りでに零れていく。全身の力が抜け、がくがくと腕や足が震えている。
「だ、め……ね。ぁ……。や、め……」
「やめない」
びく、びく、と淫華がまだ脈打っているのに、彼は立て続けにナカを弄った。二本の指がばらばらに痙攣している奥を突き、敏感なざらつきを擦られる。
「ぁあ! んや、ッ! や……、はぁッ!」
全身に送られる濃厚な享楽が海のようにしなって、子宮やその上の臓器まで震わせた。彼の淫快に支配され、囚われ、底知れぬ深みに溺れていく。もうやめて。変になっちゃう、おかしくなっちゃう。さっきよりも声が大きくなり、淫らに体をよじって彼から逃れようとする。胸を触る手に腕を伸ばしたら、しゅるしゅると音がして両手首が何かに括られた。
「あ、んッ?! やぁ、ね。……ほどっ! いッ、ぁあ! てぁ、んんぁ、ん……!」
「うるせえ」
それは口までまわり、猿轡のように歯を噛ませた。頭がくらくらする。強すぎる快感でおかしくなりそう、死んじゃう、死んじゃう。
恥核を小刻みに擽り、弾き、淫水で浸して快を注ぐ。割れ目がひくひくと口を開け、性をほしがるように喘いだ。ぐずぐずになった秘裂は休みなく虐める指にひくつき、粘ついた液で彼の手を汚していく。
「ぁ、い、ッ……。ん、ぃッ、ぁ、やっ、う……。っハ、ぁん!」
ちゅんちゅんと先を弾かれ、淫猥な極地に呼吸が止まった。
「ッあ……、は、ん……っは、ぁ……」
潤んだ瞳で彼を見下ろし、惚けたままの脳で精一杯首を振る。お願い、もうだめ。やめて、おねがい。彼は嗤い、ぐちょりと指を沈ませた。
「まだだめ」
最早拷問とも言える悦を馴染ませ、植え込み、ぐじゅぐじゅに私を蕩かした。
彼はそれからあと三回は指でイかせたあと、股を開き長い舌で秘核を舐め上げた。
「もぉ、い、い。あえ、あくて……い、んぁッ……」
魔法でツタを噛ませられた私は、「舐めなくていい」と伝えたくても言葉にならなかった。言葉の途中も彼が執拗に虐めつづけるせいで、そう伝える意志すらずぶずぶと快感の海に流されていく。
内側の愛液を掻き出すように舌が動き、絶えず膣肉に出し入れされる。ときおり粒をぴくんと弾かれ、愛液と唾液が混ざり絡まり、陰花周りの疼きに病みつきになっていく。ぴちゅぴちゅといやらしい音が聞こえて、それがまた私を煽った。
何度もイかされた体は彼に与えられる絶頂を完璧に覚えてしまった。彼が少し中をかき混ぜるだけで、すぐにその波が襲ってくる。
「ん、ぁッ……んん、んーッ!」
ちかちかと白い刺激が腟内で瞬く。上げられない嬌声も快感を閉じ込める呼び水になって、さらに悦をそそった。
私は声にならない声で喘ぎ、彼に遊ばれつづけた。これがむしろ痛かったらどんなによかっただろう。あまりに気持ちよすぎてどんどん自分じゃなくなっていく。体に刻み込まれる快感がぐちゅぐちゅに奥に響き、内臓ごと倒錯させる。もう何回イかされたかわからない。
ラムズが下手かもとか、試してみたいとか言ってた自分が馬鹿みたいだ。彼を好きってことを抜きにしても、明らかに今までの誰よりも上手かったし、今後誰にされても気持ちいいと思えなくなっちゃいそう。
皮膚の裏側が熱く煮立つように疼き、すべての刺激が絶頂と同じくらい体を惑わせる。あんなに弄られても女淫はひたすら粘液を流しつづけ、ただただ快感の虜になった。
でも……もぉ無理。本当に体が壊れそうだ、あまりの気持ちよさに死んじゃいそうだ。十数回目の絶頂を迎えたあと、私は必死に涙目で訴えた。
「あえ、……あえて。えが、い。や、む……ねっ」
彼は軽く腕を振り、私を捕らえていた魔法を全部解いた。開けっ放しだった口からだらだらと唾液が零れ、枕が水浸しになっている。無理やり体を動かすせいで腕には縛った跡が残り、手首の骨がじんじんした。
シーツの上でぎゅうと体を縮めると、彼はそっと背中に腕を入れ、私の体を起こした。する前とまったく変わらない無機質な碧眼がこちらを捉えている。
「ね、ぇ……ばか。もぉ……、や」
私は彼の胸に倒れ込む。下腹部がびく、びく、と震え全身にまで余韻が伝う。まだ体に燻っている快楽を落ちつかせようと息を整えていると、ラムズも背中を撫でてくれた。
「んで。あん、な、すんの、ぉ」
「お前娼婦じゃん」
答えになってないよ。顔を上げ、彼と目を合わせる。
「散々焦らした挙句、期待外れじゃつまんねえだろ?」
「ラムズも、そういう、の、気にすん、だ」
彼はぎゅうと体を抱き寄せる。独り言のように漏らした。「お前に好かれてたいからな」
せっかく落ちついてきていたのに、また体がどくんと高鳴った。「ふ、ぅん……」
「休憩してるけど、まだ終わんねえからな」
「え、……え?」
「最後までしねえの」
また指や舌でイかされるのかと勘違いした。私が慌てて「する」と言うと、彼は意地悪く笑った。
「ああなに、まだ足りねえの」
「ちが、ちがう!」ベッドに寝かせようとする彼を必死に抑える。「もぉいい。そっちは、十分。大丈夫」
「あー、そ? ほんとにいいの?」
「いい。いい、だめ。もういい」
彼は笑って、傾いていた体を元に戻してくれた。私にそっとキスをする。何気ない会話が幸せすぎて、また泣きそうになってしまった。
こんなに優しくしてくれて、いっぱい愛してくれるなんて思ってなかった。それに「好かれてたい」とか、さっきも「だいすき」とか、もう────。
顔を手で覆ったら、ぜんぶわかってるのか、ただ頭をとんとんと撫でられ額にキスを落としてくれた。
「だいすき。……すき。なんでそんな、優しいの」
「気分」
なにそれ。私はへらりと笑い、頬を彼の胸に押し付けた。
「今日は優しくするってこと?」
「まあ、今まで冷たかったから、甘やかしてる」
「そっか。……ん。すき。誰としても、ラムズとのほうが幸せだよ」
「知ってる」
私は彼の鼓動を聞きながら、黒いシャツのボタンをひとつずつ外していった。
「なにしてんの」
「え、だって。ずっと私裸なのに、ラムズばっかり着ててずるい」
「へえ」
彼はされるがまま、私がすべてのボタンを外すのを待っていた。それが終わると、私を少し離しベッドから立ち上がる。ネックレスを取り、ブレスレットを外す。ベルトも外してしまって、そばのサイドテーブルにのせた。
「ピアスは?」
「いい。引っ張んなよ」
「うん」
彼は最後に持っていたベルトを名残惜しそうに眺めた。何度か宝石に指を滑らせたあと、ベッドに戻ってくる。