口淫

 前戯から本番までじっくり時間をかけて、まるまる三回抱かれた。これでもかというほどイかされるせいで、喘ぎ声は枯れ、全身が倦怠感と恍惚感でぐずぐずになった。客とするときなら声はセーブするし、自分が疲れないように、ある程度イかないよう演技することだってあるのに、ラムズにはなんにも逆らえない。途中で「声枯れるよ」と猿轡を噛ませられたけど、むしろそのせいで余計に体が感じちゃって、今度はイきすぎる体に手を焼くことになった。
 どこかで頭のネジが外れちゃったのか、彼に与えられる快楽の虜になっていった。別に娼婦だからってセックスが好きなわけじゃない。仕事は仕事──人並みには好きだけど、三回してもまだし足りないなんて、そんなの思ったことない。
 体がいくら疲れても、四回目はもっとほしいと無意識に腰を浮かせ、あの倒錯的なキスをせがんだ。息絶えだえに「いっぱい出して」っておねだりしたら、「そんな出したら零れるぜ」と余裕の笑みで返される。こんなの行為中に気持ちを盛り上げるための常套句でしかないのに、「おねがい」と嬌声を上げると、彼は約束どおりどくどくと白の塊を子宮いっぱいに注いでくれた。彼が性棒を抜くと一緒に生温かい精が引きずられ、蜜口からシーツまであふれ白濁の水溜まりを作る。体を起こすと下腹部からぐちゅぐちゅと粘ついた水音が立ち、粘液でたぷたぷになった胎がその流動に疼いた。
 ラムズはずっと綺麗なまんまだ。獣みたいにヤりまくるくせに、そういう表情も、声色も、仕草も、挙動もない。汗もかかないし、体が熱くもならない。どんなにポーカーフェイスの男だって、イく直前は上擦った声や吐息を零したり、少し早く腰を動かすものなのに、そういう様子もなかった。だからいつも不意に終わる。私がどこかでイくタイミングに合わせて、一緒に出してるらしい……。
 四回目が終わり、未だにじんじんと血管の戦慄く体を引きずってラムズのそばに寄った。
「ねぇ……」
 ベッドに座る彼の腕にぎゅうとしがみつく。
「いつ、イってんのぉ? ぜんぜんわかんないよ」
「わかったほうがいいの」彼は淡白に返す。
「そぉいう、わけじゃないけど。えと……私に合わせてる?」
「ああ」
「我慢してるの?」
「そんなとこ」
 私はこくりと首を傾げた。「我慢してるように見えない〜」
「見せたほうがいい」トーンの上がらない問いがかけられる。
「演技ってこと?」
「まあ、そう」
「それはやだ」彼の腕をさらに強く抱いた。ほどよく筋肉の膨れた硬い腕の抱き心地がいい。「演技はだめ」
「じゃあ、しないようにする」
「……今までしてたの?」
 彼は薄く笑い、目を静かに細めた。僅かに顔が傾き、髪がそれに合わせて斜めに落ちる。
「もう、どれが演技かわかんねえや」
 紡いだ声がすぅ、と抜けて落ちた。儚いような寂しいような微笑みにどきりと胸が打ち、奥の透けた硝子玉の眼から顔を逸らした。彼じゃない彼を見た気がした。せっかく一緒にいるのに、愛してもらったのに、彼の心根のその先にすら触れられていない。陶器みたいに美しい指に、自分のそれを絡ませた。女の私のほうが皮膚の細かい線は多く、彼は絵の具を塗りたくったみたいに真っ平らで、真っ白。
 ラムズは私の肩を抱き、額にそっとキスを落とした。
「ねぇラムズ」私は振り返って彼を見た。
 愛おしそうに見る目付きが「ん?」と微笑む。
「別になんでもいいからね。私は……。演技でもいいよ。ラムズが好きなので、いいよ」
「ああ。ありがとう」
 ちくと小さな違和感を覚えた気がしたけど、もう気づかなかった。彼にしがみつき体を寄せ、改めて彼に愛されたことの幸せに浸った。

「……もぉ、たってる、の?」
 つい今さっき終わったばかりだ。私はそろそろと彼のパンツの膨らみ、肉竿に手を伸ばす。立ってる。硬い。そもそも今日初めてしてから、小さくなったのを見た覚えがない。少し扱いてみるけど、精液の残りは出てこない。
「飲みたぁい」
 彼は横目でこちらを見た。「じゃあやって」
「え、ん、うん!」
 ベッドの端で座っていた彼の前に降りようとすると、ふわりと布団を肩にかけられた。体を包むように巻かれる。
「裸じゃ寒いだろ」
「……う、うん」
 照れ隠しに布団を引っ張った。ずるい。あざとい。いつも冷たいくせに気が利くなんて反則だ。絨毯の上に布団を引いたおかげでお尻も痛くないし、してるあいだも寒くならないだろう。
 私は彼の前、地べたに座り太腿に手を添えた。ちゅ、と先に口付けをして、彼のモノを含んだ。想像どおり雄の匂いはしなかった。無味無臭。ちょっとつまんない。
 裏筋に舌を這わせ、頬を凹ませて口いっぱいにしゃぶった。大きい魔羅に合わせて限界まで口を開けているせいで、熱い唾液が溢れていく。潤滑剤の代わりになり、頭を上下させるたびにじゅるじゅると音が立ちはじめる。
「きもち、い?」
 視線を上げて上目遣いに彼を見ると、青い視線が絡んだ。
「ああ」髪を優しく撫で、目を細める。「ありがとう」
 ん、と小さく頷き、吸いつくように恕張をしゃぶる。根元まで咥えることができず、舌を懸命に伸ばしてちろちろと舐めた。大きく包むように舐めたり、ちゅんちゅんと擽るように先を弄ったり。しゃぶるのをやめ手で扱きながら、竿の側面にキスを落とすように愛撫し、舌を回し付け根をぐちゅぐちゅと弄る。
 もう一度上から男根を咥え込む。口内を大きく圧迫し、少し凹凸のあるそれと頬の裏側が擦れ合う。舌を裏筋にぴたと貼り付け、れろれろと刺激を与える。届かないところは同時に手で扱くことにする。
「入んねえの」
「ん、ぅん」
 咥えたまま答えると、彼は笑い、私の頭をぐいと根元に押し込んだ。
「っん、んッ!?」
 口蓋垂の奥にまで筒先が埋まる。抵抗の意味で太腿をぎゅうと掴むと、彼はさらに私の頭を股へ押しつけた。
「んぁー、んっ、んん〜ッ! ん〜!」
 喉の圧迫感と強烈な嘔吐感に喉がぎゅわ、と膨れる。唾液が口いっぱいに広がり、涙が出てきた。彼は頭を持ち上げ引き下ろし、自分のもののようにがんがん喉奥へ突き刺した。
 挿されるたびに喉が悲鳴をあげ、ついに嘔吐いて胸元がぐぅと凹み体が丸まる。
「んぁっ、ぉ、あッ……」
 彼はくつくつと笑い、少し手を緩めた。でも顔をあげようとすると、無理やり頭を抑え抜けないようにする。
「飲みたいんだろ。さぼんなよ」
 私は涙目で彼の竿に舌を沿わせた。ぐちゅんと一回根元のほうへ口を近づけると、また彼に頭を掴まれた。何度か抜き差しされ嘔吐感が戻ってくる。二度三度嘔吐き涙が零れ、苦しげに嗚咽を漏らす。彼の性を搾り取るように喉がぎゅうと締まり、まるで下を犯してるときみたいにピストンを早められた。どんなに嘔吐いても今度は無視され、彼になされるがまま好き勝手に頭を揺らされつづけた。
 生理現象で涙が出るだけで、別に嫌じゃなかった。でもあまりに苦しくて……このままじゃ本当に胃の中のものを吐きそうだ。そしたら彼のことを汚しちゃう。それが嫌で、私は懸命に舌を使い気持ちよくさせるために頑張った。
 途中で彼に少し肩を浮かされる。疑問に思っている間もなく、喉のそのさらに奥にまで突き入れられた。
「ッ?! ん、んんん〜ッ! ん、ッ!」
 気道のあたりへ男根が曲がるようにずずと滑り込み、喉に嵌って呼吸ができなくなる。酷い圧迫感に顔が冷えていき、嘔吐こうにも異物が邪魔でどうにもできない。苦しい、苦しい苦しい苦しい。
 すぅと途中まで抜かれ、かろうじて唇と竿の隙間から息を吸って咳き込んだ。凄まじい嗚咽に襲われ噎せている最中も、彼は否応なくもう一度気道の中まで押し込んだ。
 苦しい、死んじゃう、苦しい。やめて。息ができない。
「出していい」
 最早質問でもなんでもなかった。答えられる余裕なんてないし、焦点の飛んだ目からぼろぼろと涙が落ちるばかりだ。
 太いそれが数回打ち付けられたあと、咥内にどろりと精液が注がれる。もともと機能しなくなっていた口は顎を閉めることができず、半分は広がった喉の奥へ流れ、残りは唇から零れた。
 上半身を起こされる。私は咳き込みながら、口内にあるぶんだけでも無理やり喉へ押し込んだ。口から漏れたものが顎の下をとおり、胸を汚す。
「っは、ぁ……。っあ、ぅッ……」
 何度もむせ返り、あまりの苦しさに背中を丸め胸を抑える。胃の中がぐるぐるする。
 三回もしたくせに、精液も多すぎる。あんな量飲みきれない。でも変な味──というか、少し美味しかった。普通の人と全然違う。少しさらっとした蜂蜜、溶かしたチョコレートに砂糖をかけたような粘液を飲みこんだ。あまりに甘ったるいせいで、喉がひりひりと焼けそうだ。
「あん、まい……」
「あー、そうだったっけ」彼はあっけらかんと答える。
 視線を上げる。「酷いよ、苦しいよ。死ぬかと思った、よ……」
 ラムズは嗤うと、私の脇に手を入れベッドの上にのせた。私は彼に近づき、首に腕を回して抱きついた。「いぢわる」
「お前が言ったんじゃん」
「あそこまでしないと気持ちくないのぉ」
「いや、ただ虐めたかっただけ」
 彼の返答にきゅんと胸が疼いた。そのわりに声も表情も飄々としているのが、さらに私をそそった。
「……ねぇ〜」
 体を擦り付け、ねだるように上目遣いで彼を見る。さっき無理やりされたせいで、また下の口が洪水になってしまっていた。私も相当好きものらしい。こんなに虐められるの、好きだったっけ……。でもラムズだからかも、ラムズにされると嬉しいもん。
 彼は視線を向け、頭をそっと撫でた。「ありがとう」
「ん、ん……」
 まだするよね? あと二回するって言ってた。疲労感は酷く、顎も足もがくがくになっていたけど、早くも彼のモノがほしくて堪らなくなっていた。頬を腕に擦り付け、甘い声を漏らす。
「らむず、だいすきぃ」
 彼は私の股に手を伸ばした。ぐちゅぐちゅになったそこを摩る。びくん、と肩が震えた。
「ほんとマゾだな」からかうように言う。
「ちが、ちがうもん。ラムズだからだもん」
「あんなに苦しがってたくせに」
「だって……。ん……」
 私の頬を包み、長いキスをした。最初は緩く絡ませていただけの舌が、頬の裏側や喉の周囲をなぞりはじめる。甘い口付けにさらに子宮が悶え、さっきまでの快感を思い出した。
 フェラしたあともちゅうしてくれるんだ、なんて些細な幸せに嬉しく思う。彼の腕を掴み、必死に応えた。
 ラムズは私を上に座らせると、既に準備万端になっている秘部へ雄竿をあてがった。ぐちゅぐちゅと肉棒の先が淫花を掻き回し、焦らすような快感が広がっていく。
「ゃ、ぁん……。きもち、ぁ……」
 腰を動かし、彼のほうへ体を近づける。ラムズのものを掴み、自分でナカに入れようとした。
「なにやってんの」
「……ほ、ほし、い」
「まだ」
「なん、で……。ゃだ、ぁ……」
 彼は私の腰を掴んで左右に滑らせた。欲棒の表面が秘裂をじわじわとなぞる。でも入れてもらえない。無理やり体をひねり、角度を変えて咥えこもうとする。
「い、ぃきたい……。ほしぃの……」
「勝手に入れたらもうしてやんねえ」
「ん、んん〜……」
 私は涙目になりながら、ぐちゅぐちゅと腰を動かした。秘核を擦り付けて快感を求める。ラムズは首に手を回し、優しくキスを送る。口を外すと頬や首筋、耳を舐められ、触れるようなフェザータッチに背筋が粟立つ。
「おねがぃ……。いれてぇ……」
「いいよ、そこで擦ってても」
「んんん〜。意地悪、いぢわる……」
 恥ずかしい気持ちはあったけど、快を求める欲求を抑えることができなかった。ラムズの肩を掴み、彼のをなぞるように割れ目を滑らせる。少し凹凸のある血管が秘粒や花弁に細かやかな刺激を与え、亀頭の笠が粒をめくる。スピードを上げるとたまに入りそうになって、入口近くに当たる硬い男根の感触にぞくぞくする。
「ぁ、あん……。ぁ……ッ」
 イきたい。イきたい。私は必死に腰を振り、彼の上でいやらしく乱れた。羞恥心を忘れ、ひたすら悦びを求めて動きつづけた。
「っあ。ゃん……すき。だいすき。らむず、ぁ……あん」
 彼は両手を後ろにつき、ただ私が乱れるさまを寒々しい視線で眺めていた。自慰が見たいのかと思ったのに、心底興味がなさそうだった。
「ら、む……ん、ねぇ……。っぁあ、あん……」
 彼の肩に手を乗せ、縋るように見る。無機質な眼で見られようとも、腰を動かすのをやめられなかった。
「ひとりでできんだろ」
 淡白な一言にずきんと胸が疼く。冷たいことを言われると、心は寂しいのに体は悦んでしまっている。ぐちゅぐちゅとした音が羞恥心を煽り、さらに強く擦り付けた。
「っあ、ぁん! っちゃ、い、い、ィ……! ぁ、あぁあッ!」
 じわじわと追い詰めていた快楽をようやく捉え、びくびくと体を震わせ、果てた。彼に抱きつき息を整える。でも、正直全然足りなかった。いくら彼のモノを擦り付けていても、ラムズに入れられているときや、指で弄ってもらっていたときにイったほうが百倍気持ちいい。
 余計に秘部の寂しさに拍車がかかり、彼の首筋をちゅうと吸った。
「ねぇ。足りないよぉ、おねがぃ……。ラムズのがいい……」
「ほしがり」
 彼は私をベッドに落とした。股を開き、硬度を持った屹立をすぐさま侵入させた。
「っあ! んぁあああぁああぁッ!」
 秘口をぶちぶちと押し広げるように肉棒が挿入ってくる。ほしかった圧迫感が子宮内でいっぱいになり、それだけでまたイきそうになる。彼が動きはじめるとさらに愛液が溢れ、脳内がぐちゅぐちゅに溶けていった。
「ん、ぁ! やぁ、らむ、ずッ! ぁぁああ! きもち、ぁ、きもちい」
 ぱつん、ぱつんと皮膚の当たる音が聞こえる。容赦なく奥を突かれ、子宮や心臓が揺れる。
 激しいピストンにさっきのフェラチオを思い出した。喉にあった異物が今は自分の下半身を犯していると思うと、さらなる劣情を煽り快の波が重なっていく。
「すき、しゅ、き。だい……すき、ぁん、あッ。ゃぁ……ッ」
 そのあと体位を数回変えられ、どのポーズでも嬲るように彼の形を刻みこまれた。あつらえたように男根は膣内をぴったり擦り、襞をめくり、ナカを引きずるように交接する。四回目よりも今のほうがさらに気持ちかった。
 五、六回イったところでようやく終わらせてくれて、彼は愛液とともにずるりと竿を引き抜いた。後ろで突かれていた私はそのままうつ伏せに倒れこむ。気持ちいいけど、眠い。眠いし、疲れたし、体が重い。
 私にそっと布団を被せたあと、彼は上裸のまま部屋を出ていった。