お隣さん

「あ、やべ。今日ゴミの日だ」

携帯に表示されている日付をみて、溜めまくったゴミを処分しなくてはと思い出す
数日前に出し忘れたゴミ袋は玄関先に鎮座したまま今日を逃すともう一つゴミ袋が積み上がるところだった
部屋に散らばったゴミをビニール袋に放り込みながら、足元に丸めてある部屋着を蹴っ飛ばして部屋の端に寄せておく

「掃除機かけたのいつだっけな」

微妙に床がホコリっぽい気がして記憶を手繰るものの思い出せない
流石に掃除した方がいいと思いつつも男の一人暮らしなんてこんなもんだろうと自堕落に秤が傾く
時計を確認して待ち合わせ時間と移動時間を計算しながら、まとめたゴミ袋と玄関先のゴミ袋を持って部屋を出る

俺が部屋を出ると同時に隣に住んでる兄ちゃんも部屋から出てきて、思わず見つめあってしまった

「……」
「……ども」
「……っす」

頷くようにお互いちょいと頭を下げてから、部屋の鍵を閉めて歩き出す
お隣さんとどうにも動きの早さがシンクロして一緒に行動してるみたいになってしまい、大変に気まずい
思わずチラ見でお隣さんを確認してしまう
茶髪で長身、少しぼんやりとした雰囲気の兄ちゃんだ
俺と同じ年か、少し下かもしれない
壁の薄いアパートだから隣に誰か住んでるのも、洗濯物から男だろう事もわかってはいたけど
今どき引越しの挨拶もしないし、顔を合わせたのは今日がはじめてだし何か話した方が良いのか?
お互いに無言で心なしか足早にゴミ捨て場に辿り着いた
今更、お隣さんも手にゴミ袋を持っていることに気がつく
彼より早くゴミ捨て場に辿り着いた俺が、カラスよけのネットを持ち上げて自分のゴミ袋を放り込んだ
ネットを持ち上げたまま、隣に立っているお隣さんに振り返る

「……どぞ」
「あ、どうも……」

言葉少なく、頷くようににまた頭を下げた彼が俺のものよりずいぶん小さいゴミ袋をゴミ捨て場に置いた
彼がゴミを置いて一歩離れたのを確認して、俺もネットから手を離して落ち着かないのかソワソワとしているお隣さんへ向き直る

「……あー、もしかして駅いく?」
「っす」
「俺も……」
「……」

1度目を合わせてから、逸らすというコミュ障を発揮しつつ
目的地が一緒な事が判明してしまった
ここからまた無言で駅まで一緒になるのはキツい!
覚悟を決めるように1度唾を飲み込んで、正面からよく見ると思いのほか整った顔してるお隣さんに向き直る

「今更だけど、俺隣に住んでるみょうじです」
「……どうも、鷹城恭二です」

お隣さんは俺と違ってフルネームを名乗った
真面目な人が?

「鷹城くんな、よろしく」
「……出来れば、名前で。名字好きじゃないんで」
「あ、そうなの?じゃあ恭二くんか。じゃあ俺も名前で呼んでよ。なまえって」
「なまえ、さん」
「呼び捨てでいーって!恭二くんいくつ?」

コミュ障なのか人見知りなのか、途切れ途切れに話す恭二くんに自分からグイグイ行きつつ一緒に駅まで歩き出した
結果、恭二くんとは同じ歳で恭二くんは小動物が苦手で、元コンビニアルバイトで、家事は洗濯が好きで、ってのを聞き出した

今は何かやってるらしいけどあんまり話したくなさそうだからそれは聞き出さなかった

お隣さんと予想外の接触だったけど、もしかしたら友達が増えたのかもしんない