Thanks for your mighty smile [m/je]
顔に降りかかる吐息はコットンのように柔らかく、春の日差しのような心地良さで癒してくれた。頬を包む手の温もりは乾燥した心に潤いを与え、縮まる距離に心臓が喜びで跳ねる。
膝の上で握った手は期待で震え、興奮に濡れた瞳を隠すように目蓋を垂れさせていく。
額から米神に続いた口付けは紳士的に。
鼻から両頬に贈られたキスは穏やかに。
「ジェン……目を瞑って?」
鼓膜をぎゅっと抱き締める魅力的な声を合図に、ジェンセンは少しだけ口元を緩めた。そして、視界を完全な闇に委ねる。最後まで此方を眺めていたアイスブルーの瞳は、何処までも澄んだ色で輝いていた。
「……ん、っ」
顔中に触れた唇の余韻に浸る暇もなく、深く重なった唇にジェンセンの全身が粟立つ。唇が隙間なく合わさり、脳に歓喜が行き渡る。
お互いの吐息を送り合って命を育めば、神経までに達した甘美が咆哮を上げた。膝の上に置いていたジェンセンの手が見えない糸で引き上げられ、ミーシャの項で固く結ばれる。
頬を包んでいた手はするりと背中に回され、服を通して伝わる力強さに幸せが溢れ出す。
「……ぅ……んっ」
弾力を確かめるように甘噛みが繰り返され、何度も啄まれた薄皮を舌先で撫でられる。強弱のリズムで与えられる刺激は、良い意味でジェンセンの心に荒波を立てた。
ミーシャはどんな顔をしているのだろう。自分と同じように瞳を閉ざし、幸せを感じてくれているのか。それとも悪戯っ子の瞳で、此方を楽しそうに観察しているのか。
(見てみたい……。でも、何だか勿体ない気もする。もう少しだけ……このままで)
闇の中ではなく光の先にある現実は、大いにジェンセンの好奇心に揺さぶりをかけた。どんな表情であれ、今の自分には光の粒子を蒔き散らしたように見えるのは間違いない。
ミーシャのキスは何時だって、ジェンセンにパステルカラーの甘い幸せを運んでくれる。
「……ミー……シャ……」
強い抱擁と、お菓子のような甘い口付け。
離れた唇の置き土産は、どうしようもない切なさだった。愛しさを込めて名前を呼び、恋い焦がれて開けた瞳の先には、ミーシャが穏やかに微笑んでいる。
「生まれて来てくれて、ありがとう。僕と出会ってくれてありがとう。こんな僕を選んでくれて、本当にありがとう」
意味と命を吹き込まれた言葉は柔らかく、それでいて強い力を持ってジェンセンの心に響いた。涙腺が緩むのを察知し、顔を隠す為にミーシャの胸元に顔を埋める。
心を騒がせる体温に身を委ね、注がれる愛情に幸せの海を揺蕩う。後にも先にも、此ほどまでに愛せる人間には出会えない。
「俺が、ミーシャじゃないと駄目なんだ。だから、これからも一緒にいて欲しい」
「勿論だよ、ジェンセン。何があっても、絶対に離れない。絶対にだ」
「……うん。ありがとう、ミーシャ」
両肩を掴まれてやんわりと身体を離されてしまい、表情隠れることが出来なくなった。トマトのように赤くなった顔を見られると思うと、とんでもなく恥ずかしい。
なのにミーシャの真摯な言葉が嬉しくて、頬の筋肉を制御することが出来なかった。
「ミーシャ、その……もう一回キスして欲しいんだが……。いい、かな?」
「僕もしたいと思ってたんだ。君の可愛い顔を見てたら、我慢出来なくなったからね」
鼻歌でも歌い出しそうなくらいに上機嫌な顔は、ジェンセンの望みを承知していたらしい。額に触れた唇に目蓋が落ち、視界が黒のカーテンで閉められる。微弱な空気の振動で、ミーシャが笑ったのだと解った。
「happybirthday、ジェンセン」
率直な祝いの言葉は、どんな高級ブランドにも勝る。最高のプレゼントに、ジェンセンは己から薄く唇を開けてミーシャの舌を誘った。
END
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