honeytrap[ノバスミ]
小鳥の囀りに優しく意識を揺り起こされ、朝日が美しく映える純粋な朝。カーテンから零れる太陽は眩しく、一日の開始を告げるに相応しい爽やかさだった。
滑らかなシーツの感触も心地よく、抵抗さえしなければ幸せな二度寝へと踏み込めただろう。だが残念だが、そのチャンスは疾うに失われている。
「く、ぁ……っ、ノヴァ……ック……あうっ!」
胡座の上に跨がるように強要され、鎖骨の下に新しい所有印を刻まれたスミスは、天井を仰いで熱い呼気を溢した。
吐息に香りがあるならば、甘く瑞々しい桃に例えるのが最適だろう。甘露にも勝る程に蕩けた翡翠の瞳は、性別の垣根を越えて扇情的な感情を産み付ける。
「はぁ、ぅ、ぁ……っ、ん」
女性社員からキュートだと騒がれるスミスの美貌は、滲み出る快楽で壮絶な色気を撒き散らしていた。肌が粟立つまでの妖艶さは、何事にも抗えない力を秘めている。
天使のような純粋な美しさと、小悪魔の妖艶な魅力の共演。スミスの鎖骨から喉仏へと丁寧に舌を辿らせていたノヴァックは、清々しいまでの笑顔で語りかけた。
「今の声、凄く良かったよ、スミス。もっと聞きたい。僕の名前を呼んで?」
紳士的な微笑みに加え、顔中に降り注ぐ慈愛のキス。恋は盲目状態のスミスは、状況を忘れてノヴァックに見惚れてしまった。
だから、気付けない。
知的で穏和な蒼い眸に隠され、奥深くで咆哮を上げるノヴァックの欲望に。
「あ、ノ、ヴァック……待っ、待ってくれ……」
恍惚とした表情で恋人を見つめていたスミスだったが、ノヴァックの右手が尻に移動する気配に我に返った。慌ててその腕を掴み、雰囲気に流されかけた己を叱咤する。
求められるのは素直に嬉しいが、今日は二人の休みが重なった貴重な休日。充実した時間を過ごそうと、スケジュールだって立てているのだ。
「どうしたの、スミス?」
「……今日は映画を観に行く予定だっただろ。忘れたのか?」
意を決したスミスは、ノヴァックの首に両腕を回して身を寄せる。汗ばんだ肌同士の密着は、思っていたよりも吸着力があった。伝わる熱だけで、腰が砕けそうになってしまう。
又もや場の空気に流されかけたスミスは、ノヴァックの蒼い眸を見つめながら説得を試みる。
「まさか。僕が君との約束を忘れた事が一度でもあったかい? 前から楽しみにしてたよ。映画の後は、僕のオススメの店でランチしよう」
「なら、朝食を食べて準備しないか? 俺、シャワーも浴びたーーひゃあっ!!」
薄い唇が穏やかな弧を描いたのを見届けたスミスは、浅はかにも警戒心を解いてしまった。腰を掴んでいたノヴァックの左手が前に回り、密かに猛っていた性器をやんわりと握り込まれる。
「ノ、ノヴァック…っ!? あぅっ、あっ…!!」
「朝御飯は僕が作るよ。美味しいオムレツを作ってあげる。確かスミスは、半熟が好きだったよね?」
「うあっあ、あっあっ、やあぁっ」
他愛ない話を続けながら、その手は確実にスミスの快感を引き出していく。尿道口を指の腹で擽られれば、堪え性のない先走りの液が、ノヴァックの指を汚してしまった。
長い指が動く度に、チュクチュクと小さな音が奏でられる。それは、スミスに恥辱を与える物でしかない。
だが、快楽はこの世で最も強い麻薬だ。
逆らえる者など、皆無に等しい。
「はっ……は、うっ、んぅっ……んんっ!」
「スミス、我慢しないで声を出していいんだよ。君の可愛い声を、僕に聞かせて」
皮が切れる程に強く唇を噛んだスミスは、ノヴァックの片口に顔を埋めて大きく身体を震わせる。耳元に熱い息を吹き掛けられ、甘い声で名前を呼ばれると、無条件で降伏したくなってしまう。
「やれやれ、困ったな。仕方ない」
控え目だったノヴァックの手が、声を我慢する事を諫めるように激しさを増した。垂れ下がってきた精液を塗り込めるように、竿の部分を豪快に擦られる。
「ひぃっ、あっ……ノ、ヴァック……待っ、や、止め……っ、あああっ!」
一度開いた口は、閉まらない。
遠慮のないノヴァックの攻撃は、前だけで終わらなかった。尻の割れ目で膠着していた指が、遂に侵入を果たした。
人差し指と薬指で柔らかい肉を開き、中指が縮こまっていた秘所に優しく触れる。
ソコは溢れた精液が伝い、僅かな湿り気を帯びていた。尿道口と同じように、軽く擦られただけで淫猥な音が生じる。
「ノヴァック……!? やっ、やだぁ……っ!」
片口から離れたスミスは、泣き濡れた顔でノヴァックに懇願した。
辛そうに下げられた眉毛の下にはなかった蕩けた翡翠の瞳。びっしりと生え並んだ長い睫毛は、朝露のような涙でしっとりと濡れていた。熟れた唇はチェリーのように瑞々しく、顔にかかる蒸れた吐息、肌を保湿してくれる。
ノヴァックの理性を剥ぎ取るには、充分すぎる破壊力を秘めていた。無論、スミス本人に自覚はない。天然の小悪魔だ。
「スミス、君はいけない子だね。そんな顔をされると、もう止められないよ?」
言葉と抵抗を封じるように、ノヴァックの長い指が秘所へと滑り込む。昨夜の名残で柔らかく解されたソコは、スミスの意思に反して侵入を許可してしまった。
狭い入口が押し広げられ、慣れる事のない異物感に息が詰まる。
「くっ、うっ……や、ぁ……っ」
「昨夜はちょっと無茶させたから心配だったんだけど、大丈夫みたいだね。良かった」
「だ、大丈夫じゃ、な……い!! それ、に、昨日のアレはちょっとじゃ、っああっ!!」
「スミスが居れば僕はいつでも幸せだけど、久し振りのデートも楽しまないと罰が当たるな。素敵な一日にしよう」
優しい物腰とは真逆に、ノヴァックの指は次第に遠慮がなくなった。奥まで侵入した指は的確に前立腺を押し上げ、一時休憩していた左手も動き出す。
前後で与えられる、苦痛にも似た快感。
「ひぁっ、あっ!! あううっ……やああっ!!」
もう、自分を何を言っているか解らない。
酸素を求めて開いたスミスの口からは、断続的な嬌声と涎が滴る。けれども、気にしているだけの余力は残っていなかった。
「映画までまだまだ時間はあるし、早速素敵な時間を楽しもうか。いいだろ、スミス?」
悪魔の囁きに、蒼い眸の強烈な呪縛。
抵抗の字さえ思い出せず、スミスは何度も首を縦に動かした。
「……ノヴァック、頼む……っ」
早く、楽にして欲しい。
恥もプライドも殴り捨てて乞うスミスに返されたのは、ノヴァックの特上の笑顔。深く重なった唇を合図に、快楽の海にダイブした。
END
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