嘘も方弁
以下会話文のみ
「ディーン、私達は友人だな?」
「……何だよ藪から棒に」
「友人だな?」
「ちょ、待てキャス! おい、圧力かけながら顔を近付けるんじゃねぇ!」
「何故だ?」
「何故って、そのまま近付いたどうなるのか解らない訳じゃないよな?」
「勿論だ。いくら私が人間の世界に疎くても、そこまで無知ではない。このまま接近を続ければ、私達の顔は接触する」
「そうだ、その通りだキャス。解ってくれて嬉しいよ。だから、今すぐ俺の上から退け。今すぐにだ」
「何故だ? 私はこのままで居たい」
「ふざけんなキャス。男とキスなんて、俺は死んでも御免だからな」
「? ディーン、口に毒でも塗っていない限り、キスで人が死ぬ事はない。安心して欲しい」
「今の言葉のどこに、安心出来る要素があったってんだ」
「事実を言ったまでだ。それよりもディーン。私達は友人だな?」
「本当に何なんだ? あー、そうだな。友達だよ友達。これで満足か?」
「ああ。ならば、ディーン」
「あ?」
「私は君の友人を止めたい」
「――――は?」
「ディーン、どうしたんだ?」
「……何だよ、それ。お偉い天使様は、やっぱり人間なんて下級な生き物とは仲良く出来ないって言いたいのか?」
「違う。そんな事は思った事もない」
「ハッ…どうだか。……どうせ、お前も俺に愛想が尽きたんだろ?」
「すまないディーン。私の言い方が悪かった。君を悲しませるつもりじゃなかったんだ。だから、そんな顔をしないでくれ」
「……なら、なんでそんな事言うんだよ。嫌いなら嫌いって、言えばいいだろ」
「私が君を嫌うなど有り得ない」
「じゃあ、何でだ? 本当は、嫌いなんだろ?」
「そうじゃない。聞いてくれディーン」
「嫌だ、聞きたくない」
「ディーン」
「聞きたくないって言ってるだろ!」
「擦れ違いの恋人みたいな雰囲気の所悪いんだけど、キャスはただ単に兄貴をからかっただけなんじゃないかな?」
「サ、サム!? お前、何時から其処に!」
「え、今更それを僕に聞くの? 僕のベッドでスナック菓子食べるなよって、注意した途端キャスが現れて兄貴を押し倒した時から見てたのに?」
「そんな所から!? 見てたなら、なんでさっさと助けないんだよ!?」
「あーはいはい、ごめん。ってかさ、今日が何の日か知らないの?」
「なんて冷たいんだサミー!」
「うるさい、サミーって言うな。それより、今日はエイプリルフールだよ、ディーン」
「は? エイプリルフール?」
「そうだよ。だから、キャスは兄貴に嘘を吐いて驚かせたかったんじゃない?」
「な、なんだ…そういう事か」
「……兄貴、今凄く安心しただろ?」
「ばっ、何言ってんだサム!」
「ディーン、エイプリルフールとは何だ?」
「「は?」」
「今日は嘘を吐いて人を驚かす日なのか?」
「えっ…まさかだけどさ、キャスは本気で兄貴と友達を止めたいって言ってたの?」
「無論、そのつもりだが?」
「や、やっぱり嫌いになったんだな!」
「違う。私は君の友人というポジションではなく『恋人』になりたいんだ」
「止めろって――はぁ?」
「友人という位置は確かに居心地がいい。しかし私はそれ以上に特別な関係になりたいんだ」
「………………サム」
「…………何?」
「今日はエイプリルフールだよな?」
「ああ、うん。そうだけど」
「だったら、これも嘘だよな?」
「いや、嘘ではない。これは私の今一番叶えたい願いだ。いや、どんな手段であろうと叶えてみせる」
「……僕、こんなにやる気満々なキャスは初めて見るよ。良かったねディーン。嫌いだって言われるよりマシだろ?」
「サム!?」
「ありがとうサム。私とディーンの仲を応援してくれるんだな。君は良き友人だ」
「嫌だな、キャス。僕が君の応援をする訳がないだろう。全力で邪魔するよ」
「成る程、それが君なりの嘘という訳か」
「キャス、とりあえず退け!」
「となれば、先程のディーンの言葉も嘘という事か。気付かなくてすまなかった」
「何の事だ?」
「ディーン、君は私とのキスを望んでくれていたのだな。君にそんなしおらしい一面があるとは思わなかった」
「どっからそんな結論になった!?」
「愛しているよ、ディーン」
「ぎゃーー!!」
END
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