ダブルクロスしようぜ!
【翌朝 喫茶『プライベートアイ』】
「(アラームの音が鳴ると即座に開眼し)…………(隣で眠るキクの横顔を見つめる)」
「……ん、(もぞりと寝返りを打ってアーサーの方へと身体を寄せる)」
「(置時計の横に置いた眼鏡をとり)…ホンダ、朝だぞ(眼鏡をかけながら煙草を棚から取り出し)」
「ぅ、ん…………朝、ですか……(寝ぼけ眼をこすって欠伸を噛み殺す)」
「ああ、天気は快晴。昨晩の予報通り雲一つない洗濯日和の日といった所か(ジッポで煙草に火を着けうつ伏せの体勢で深く煙を吸う)」
「それはそれは……情報もさぞ回ることでしょう(そう言いながら倣うようにシガーケースから煙草を取り出してライターを手探りに探す)」
「(ふうっと長く息を吐き出しながら横目でキクを見つめ)ホンダ。痛むか?」
「昨日ほどは痛みませんよ。……オーヴァードなのですから、この程度一晩眠れば治りますから(ぺたぺたとナイトテーブルを探ったが見当たらずに諦め)……あとで百均でライターを買わないとですね」
「(トントンと自分の咥えている煙草をノックし顔を近付け)…いや、俺が言っているのは腰の方なんだがな」
「(目を細めるとそっと火種を受け取り)……そっちですか。相変わらずみちみちと変な音がしますよ、違和感が凄まじいです」
「(ふっと小さく笑い)それはおかしい事だな。後処理はお前が寝ている間に丹念にこちらで施していたというのに」
「なっ!?……ま、また掻き出したんですか貴方……(煙草を右手に持ち、恥ずかしそうに毛布の中へとずるずる落ちていく)」
「?ああ。それとも覚醒している時にやるべきだったか?(灰皿に煙草を起きながら不思議そうに掛け布団を捲る)」
「……どちらも謹んで遠慮願いたいです(首まで真っ赤になりながら)」
「……(ふと何かを考えるようにキクの背中を見つめるとそっとそこを指を這わす)」
「ひゃうっ!?(思わず裏返った声が漏れ慌てて振り返り、小火騒ぎにならないように煙草を灰皿へと戻す)」
「ふむ。1度灯った快楽というものはなかなかに消えないようだな。一つ勉強になった(納得したように頷きながら)」
「〜〜っ、(ぱくぱくと口を何度も開閉させ)……勘弁してください、もう……」
「なぜだ?快楽というものは決して不快なものではないだろう。『快く楽しむ』と書くように楽しめばいいさ。…ああ、勿論俺の前でだけだ(無防備な背中にキスを落とし)」
「ッ、あ……(昨晩の性交を匂わせるキスにぞわぞわと身体を震わせ)こ、こんな乱れた姿、貴方以外に見せる予定は……っ、ありませんよ!」
「予定があったのならそれこそ勘弁願いたいものだ。……なんだ、ホンダはこんな軽い接触でも体は敏感に拾うのか?(ゆっくりと背中から腰へと手を這わせ)」
「や、まっ、きのうの……っ、が……!(はくはくと息を乱して首を振り)」
「何を言ってるのか分からないな(くすくすと笑いながら足の付け根を優しく撫でる)」
「っ、っ!(優しい接触にびくびくと震え)ひ、ぁ……っ!」
「触れただけなのにな……分かるか?ホンダ、腰が揺れてるぞ(触れる手はそのままに耳元で囁きながら)」
「ゆ、ゆれてな……っ、あ、はぁ……っ(耳元で囁かれる吐息に自らの呼吸が艶を帯びていく)」
「……嘘つき(ちゅっと音を立てて耳にキス)」
「んっ、あ、ぁ……(キスのリップ音にびくりと一際大きく跳ね上がる)」
「…(じとりと溢れるカウパー液が手を濡らし)…ホンダはマゾヒストの才能があるようだな(裏筋に指を這わせ)」
「っは……は、そんな才能、……なかったはずなのですが(身体から力が抜けてゆっくりと弛緩していく)」
「秘められた才能という事か。良かったじゃないか、新たな才能の開花に気付いて(掛け布団を外し体重をかけないようにキクの上に覆いかぶさると前髪をはらい顕になった額にキスを落とす)」
「……他人事だと思って。もう貴方に刺激してもらわないとイくことすら出来なくなってしまったんですから責任を取ってください(アーサーを見上げて深い溜息を零し)」
「ふふ、なら責任はきっちりととらないとな(足首を掴みその足の甲にキス)」
「っん、……本当にキスがお好きですね(指を噛んで嬌声が漏れないようにしながら)」
「なに、簡単な愛情表現だからな。人より感情が薄い俺には最も有効な絡み手と言ったわけだ(指先に舌を這わせ)」
「(舌が這う生暖かさに息を何度も詰め)っふ、……カークランド、さん……も、今、何時だと……!」
「午前7時36分47秒か?それがどうした(指を吸い上げながら愉しげに)」
「こ、な……お天道様の下で、……やること、ひぁっ!!(吸い上げられたことで感じてしまい首を振る)」
「明るいのが嫌ならすぐにカーテンや灯りを消すが?(指の間に舌先を尖らせて舐め上げながらキクの反応を眺め)」
「ちが、そ、じゃ……っ!(段々と理性が奪われていくように欲に溺れた瞳でアーサーを見つめ返し)」
「何が違うんだ?ほら、ちゃんと言わないとこのまま続けるぞ?(くつくつと笑いながら足の裏に舌を這わせ始める)」
「あぅっ、ぎる、ベルト君と、ジョーンズさ、んが訪ねてきたら……っ!(両手で自分の髪を掴むと喘ぎ声を漏らさないように必死で歯を食いしばる)」
「訪ねて、来たら?(オウム返しをするように尋ねて空いた手で胸元を手を這わせる)」
「〜〜〜〜っ!!!(応える間もなくびくりと跳ね上がって薄い腹に自分の精液が降りかかる)」
「ん、(放たれた精液をすくい舐め取り)…随分とよかったようで?」
「はッ……は、っ……きのう、の段階で……体力、ないのに……朝から勘弁してください……(体中薄紅色に紅潮しながら)」
「ホンダ、こう言ってはなんだが後衛とはいえお前はもう少し体力をつけるべきではないのか?(至極真面目な顔で)」
「誰のせいでここまで疲弊していると思ってるんですかこのすっとこどっこい(疲れ切った表情でじっとりとアーサーを睨みつけ)」
「すっとこどっこい?(意味が理解できないのか首を傾げる)」
「(ばたーんと大きな音を立てて扉を開け)おーい寝坊助2人ー!!あっさだぞおー!!」
「(ギルベルトの後ろから勢いよく飛び出し)今日はマシューのブレックファーストだぞー!」
「……(そっと布団に戻っていく)」
「(素早く掛け布団を掛け直し)ああ、すぐに行く。あとノックをしろとはいつも言っているだろう、アルフレッド」
「……え、っと……うん、お邪魔してごめん(匂いに何か気付いたのか非常に気まずい表情)」
「……(遅れて何かに気づき)お、俺飯食ったら単位について先生と話があるから学校行くからな(バタンと扉を控えめに閉じ)」
「……(ふうっと前髪をかき上げながら溜息をつき)」
「ばれましたね、色々と……」
「いや、バイルシュミットは分からないがあれは勘がいい。言わなくともいつかはバレていたことだろう」
「……はぁ。カークランドさん、私の服はいったいどこに?」
「ん(チェストの上にきちんと畳まれた服を指さし)」
「几帳面ですね。……ん、いたた……(よろよろとよろめきながらチェストの方へ歩いていく)」
「(置時計を確認し)…今日はランチタイムから営業するとしよう」
「(近くにあったタオルで精液を拭い)おや、済みません。私に付き合わせてしまって」
「いや、どうせ客入りの少ない店だ。店を開けるのが遅くとも問題は無い」
「(ごくごくとカフェオレを飲み干し)ぷはああ!!マシューご馳走様!んで行ってきます!!(言い切る前に鞄を持って店から飛び出る)」
「あ、はい行ってら……アル!僕らも学校!」
「やばっ、アーサー!行ってきます!(上階に叫び声を上げながらすっ飛んでいく)」
「……やれやれ、朝から騒がしい奴等だ(ネクタイを結びながらゆっくりと階段から降りる)」
「(サスペンダーまできちんと留めるとワイシャツの襟を直し)……昨日の詫びにはなりませんが、少しばかりお手伝いしますよ。姿を変えさせていただきますが」
「そうか。それなら軽食の方を任せていいか。あの2人にはなぜか厨房に立つなと釘を刺されてな(玄関に歩み寄りプレートをひっくり返す)」
「(光を身に纏って少女のような姿に変わり)……軽食くらいならお任せくださいな」
「相変わらず便利な能力だな。……と、いらっしゃいませ(ドアベルの鳴った方へ振り返り)」
「どうも、今日は遅めの開店だね(ひらりと軽く手を振ってお気に入りの端の席へと向かっていく)」
「こちらも色々事情がありまして。……いつもので(洗練された動きでお冷を起きながら)」
「うん、それにランチのサンドイッチもつけてくれる?深夜まで研究しててお腹ペコペコなんだー」
「かしこまりました。…サンドイッチを頼む(厨房のキクに声をかけ)」
「畏まりました、少々お待ちください(声だけは変えることが出来ないのでか細く囁くように頷く)」
「(からんからんと音を立てて扉を開き)Bonjour.いつものブレンドを頼めるかな」
「……かしこまりました(フランシスを一瞥しながら珈琲豆を引き)」
「〜〜♪(鼻歌を歌いながら論文を広げ始める)」
「っと(店内を見渡しイヴァンを捉える)…やあ、君いつもここに来てるよね。俺も実はここのリピーターなんだよ?(向かいの椅子に腰掛け)」
「ん?(論文から顔を上げ)ここは人が少なくていつも静かだからね、研究上がりにはもってこいなんだよ」
「へえ!研究者なんだ!いやあ、はじめてお目にかかるよ研究者さんには!(興奮した様子で体を乗り出し)」
「研究者って言ってもまだまだ駆け出しだけどね。姉の紹介でチームに入れてもらえたようなものだし(面白そうにクスクス笑い)」
「お姉さんが居るんだね。それでも研究者ってことは頭いいんだね。いやあ、羨ましい限りだよ(頬杖をつきながら)」
「うふふ、褒めても何も出ないよ。残念ながらね(にっこりと可愛らしい笑みを浮かべ)」
「あはは。…お姉さんって美人?いやね、どうしても女性だと聞いてしまうと不躾にも追求してしまう質でね。気を悪くしたなら申し訳ない」
「んー、身内の欲目もあるけど美人だね。それに、素晴らしい人だよ(幸せそうに表情を崩し)」
「……失礼だけど御宅、シスコン?(真顔)」
「まさか!シスコンだなんて!(芝居がかった様子で両手を広げ)」
「おわっと(イヴァンの勢いに思わず椅子ごと少し後退し)」
「お客様、お待たせ致しました。ランチのサンドイッチです(そっとイヴァンの前にサンドイッチを置く)」
「わあ、ありが……あれ、君新入り?(ぱちくりと瞬きを繰り返し)」
「本日のブレンド、ニルギリスです(紅茶をイヴァンの前に置き)…従業員が居ないのでピンチヒッターとして呼んだのですよ」
「(所在なさげに曖昧な笑みを浮かべ)……緊急で来たもので、粗相がありましたら済みません(変わらずか細い声で囁き)」
「ふーん……(じろじろとキクを見ながら紅茶にたっぷりと砂糖を投入)」
「へえ。麗しいマドモアゼル、お名前を聞いていいかな?」
「お客様、従業員に手を出すのはやめて頂けませんか?(ずいっとキクを庇うように立ち塞がり)」
「……(アーサーの後ろで周囲を見渡すと菫の砂糖漬けを見つけ)スミレ、と申します。……今後とも、当店を御贔屓に」
「ああ、ごめんごめん。…スミレちゃんね、よろしく(にこにこと人当たりの良い笑を浮かべ)あ、そうそう。もう1人連れが来るんだけど……と(ドアベルの方を振り返り)」
「(きょろきょろと店内を見渡しお目当ての人間を見つけると深いため息をつきながら近づき)……コーヒー。ブレンドば任せる」
「(他の来客を気にする様子なくサンドイッチを食べながら論文を読んでいる)」
「やあ!この前は危なかったね!それにしても普通に来るんだね!ほんと君が怖いよ!!(爽やかな笑みを浮かべて)」
「おめが呼んだんだろう。ティータイムしやがって(舌打ちしながらどかっと腰掛け)」
「まあねー。あ、スミレちゃん。追加注文いいかなー(厨房の方に手を挙げて)」
「はい、畏まりました。少々お待ちください(そう言いながらメモとペンを持ってフランシスたちの方へと向かう)」
「(スミレの方をじっと見つめ)…プディング1つ。あとクラブハウスサンドも(目を緩やかに細めながら)」
「ご注文繰り返します。プディングがおひとつ、クラブハウスサンドがおひとつですね(掠れ切った声で注文を確認)」
「ああ、それで構わねえ(じっとスミレを捉えたまま)」
「……お客様?(柔らかな笑みを浮かべてルーカスを捉える)」
「いや……職業病でどうも人間観察や言葉尻を捉えちまうんだ、気にするな」
「左様でございましたか。……申し訳ございませんが、私には夫がいますので(冗談めいた笑みを浮かべると厨房に消えていく)」
「(スミレが離れるとすぐにフランシスの方を見つめ)…満漢全席かと思えば質素な懐石料理け?」
「ふふ、意外と出汁の効いた食べごたえのあるものだと思うよ。しっかしティータイムは何度やっても慣れない。形式になれないのか味になれないのか……やれやれ(肩を竦め)」
「……(フランシス達を見つめどこか違和感を感じている)」
「……(客席から死角になる場所で身を縮め)……ばれ、ましたかねこれは……」
「一般人にはバレることはないと思うぞ(クロスでグラスを磨きながら)」
「時々いるんです、光の外套を突き抜けて察知するエキストラが。……言ってしまえば、昔の優良顧客の一人に、そのタイプがいたんです」
「ほう。それは優れた観察眼の主だな。いったいどんな人間だか」
「私がよく姿を借りるチャイニーズですよ、彼は恐ろしい程の観察眼を持っていました」
「……ああ、あの胡散臭そうな」
「はい、あの胡散臭そうな。……あと、声ばかりはどうしても変えることが出来ない。声を知っている人が見たら一目瞭然です」
「便利な能力とは思っていたがなる程。そのような抜け穴があるんだな。……俺としてはあのロシア系の客と今入ってきた客にどこか違和感を覚えるのだがな」
「……彼らがオーヴァードかどうか、ワーディングを張れば確かめることが出来ますよ。……ただ、我々の存在も感知されますが」
「それはリスクが高いな。……ホンダ、お前はどう思う。見解を聞かせてくれ」
「先程近くまで寄った瞬間に感じたのは、警告でした。この男に近付くな、そんな本能。……金髪の優男は間違いなくエキストラでしょう、あとふたりは……確証は持てませんが、オーヴァードかと」
「俺も金髪の優男はエキストラと感じた。……俺としてはあのロシア系の男が只者ではないと感じるが」
「(ちらりとイヴァンのいるテーブルを確認し)……うすら寒い殺気は感じます。しかし、実力で考えてしまえば、あの青年の底が知れない。……そこが、怖い」
「……どちらにしろ警戒に怠らないことに越したことはない、か。やれやれ、とんだ常連客だ」
「……まったくです。はあ、大人しくスミレになって料理を運びますかねえ(肩をごきりと鳴らし)」
*
「……んー(クリアファイルから取り出した書類とにらめっこし)」
「お客様、お待たせ致しました。プディングとクラブハウスサンドになります(洗練された所作で食器を机に乗せてすぐに席を離れる)」
「また翻訳の仕事?大変だねえ、今度は何の翻訳?(ティーカップに口をつけながら)」
「聖書の翻訳だが…幸せについてなんだべ。幸せ……幸せ……(くるりとイヴァンの方を見て)おいおめ、幸せとは(びしりとペンでイヴァンを指し)」
「ん?(顔を上げ)幸せ?姉さんの夢が叶うことかな(首を傾げ)」
「……ああ、さっき言ってたお姉さん」
「なんだシスコンか(ずばり)」
「シスコンじゃないって。姉さんの理想が僕の理想ってだけだよ(純粋な笑みを浮かべ)」
「理想?そんなにすげえもんなのけ」
「姉さんは、皆が幸せに笑って暮らせる世界を作りたいんだよ。だから、僕はその手伝いをしてるんだ(目を細め)」
「お姉さん思いだねえ。君は勿論お姉さんの理想に賛成なんだよねえ」
「勿論。だって、僕の願いは姉さんの願いだから」
「幸せなんざ人それぞれだが他人の幸せが自分の幸せっつーのはなあ……」
「変だった?(こてりと小首を傾げ)」
「傍から見たらな(迷いなく頷き)」
「そっかー、変なのかー。これが普通だって思ってたからなあ」
「まあ人それぞれだよ。……スミレちゃんは?」
「(配膳を終えて洗い物をしていた顔を上げ)……そうですね、記憶出来る日常が幸せでしょうか」
「ほう、なんだか深いねえ…」
「何でもないようなことが幸せだったと思う?(唐突に覚えている歌詞を呟いて首を傾げる)」
「おめ、幾つだ(真顔)」
「僕は24だよ?」
「若いっていいねー(苦笑いを浮かべ)」
「じゃあお兄さんいくつ?(きょとりと目を瞬かせ)」
「ふふー、いくつに見えるー?」
「こいつ30超えてんべ(フランシスを指さし)」
「え、意外とおじさん」
「えー傷付くなー(言葉とは裏腹に笑いながら)」
「なんだただのおっさんか(カウンター越しに言葉を漏らし)」
「若いとは羨ましい(思わずくすくす笑いながら洗い物を続ける)」
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