確定消すな  



 
七海健人
「何で戻ってきたの?」
 数年ぶりに会った同期の顔を見て挨拶
も無しにそう訊けば、七海は無言で眼鏡
を軽く押し上げた。正直またこうしてあ
の頃と同じように七海と一緒に戦えるの
が嬉しくないと言ったら嘘になる。背中
を預けるにしても肩を並べるにしても頼
もしい味方だから。けれどそれ以上に七
海には戻ってきてほしくなかった。七海
には普通のサラリーマンとして生きて、
普通の人間として普通の死に方で死んで
ほしかった。呪術師になれば、誰もが得
られるはずの「普通」すら望めない。そ
んな私の気持ちも知らないで、七海は短
く息を吐いてこう言った。
「理由はいろいろありますが……そうで
すね。最大の理由は、貴女まで失いたく
はなかったから、です」


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