確定消すな  



 
夏油傑
 白檀の香りが強く染み付いた直綴が私
の体を覆い隠した。左肩にかけられた五
条袈裟の布が頬に押し当てられ、高専に
いた時よりも伸びた黒髪が首筋に落ちて
来て、私は漸く夏油に抱き締められてい
るのだと気づいた。抱き締め返す事も突
き飛ばす事もできないまま宙を彷徨う自
分の両手が憎くて仕方ない。もう互いに
歩む道を違えてしまったというのに、そ
れでも心のどこかでもしかしたらと考え
てしまう自分の甘さに吐き気がする。
 何もできない私を嘲笑うかのように、
夏油が耳元でそっと囁いた。
「呪術師に飽きたら私の所においで」


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