確定消すな
富岡義勇
「行くな」
私の手を強く掴み、ただそれだけを言
い放つと、富岡さんは黙ってしまった。
私はその手を振り払う事も握り返す事も
できず、目も合わせられないまま、富岡
さんが手を離してくれるのを願うしかな
かった。私は鬼殺隊の隊士だ。己の剣の
腕を磨き、任務に赴いては鬼との戦いに
明け暮る。明日の命も知れぬこの身で、
誰かを愛する事はできない。弱い私にそ
んな資格もなければ勇気も持ち合わせて
はいない。それなのに何故私は富岡さん
の手を振り払えないのだろうか。何故私
は富岡さんを拒む事ができないのだろう
か。自分の感情が理解できず困惑する私
を、富岡さんの底知れぬ夜の海のような
瞳が見つめていた。△/ TOP /▽