#106_K



──っ!?!?

この、弾力、ハリ。
なにより暴力的なまでのこのサイズ感…!!


と、抗えない感触に顔を埋めたまま思考に陥っていると。

暴力的なまでのバストの持ち主が、[トウイチもダンディだったけれど、息子もチャーミングで素敵じゃない]と、まるで俺の事を知っているかのような言葉を放った。



[な…誰だお前…!?]



[その凶器レベルのおっぱいに埋まりながらそんな事を言っても格好付かないわよ。鼻の下伸びてた、って杏ちゃんにチクっちゃおうかしら]


そこで、聞き慣れた声が、届く。

慌ててば、っと誘惑の箇所から顔を離すと、案の定。
普段とは姿形は変えてはいるが、黒羽千影がそこに居た。


「か、母ちゃん…!?」

[ハーイ、快斗。無事着いて良かったわ。早速だけど、人目がある場所では英語で話しましょう。私たちがその国の人間だと、あまり思われない方が良いわ]

[了解。…っつうか、この人は…?]



そこで改めて目の前の暴力的バストの女性の全身を見遣る。
プラチナブロンドが波打つ、どナイスバディな美女。
どうしても、視線が谷間に向かってしまうのは、恐ろしい吸引力だと思う。


いや。違うんだ、杏。
これはもう、他のどんなおっぱいよりも野郎を吸引してるとしか思えねぇおっぱいなんだ。

でも俺にとって、杏のおっぱいが吸引力の変わらないただ1つのおっぱいだから!



そんな言い訳を心の中で叫んでいると、母ちゃんが俺の言葉に返事をしていて、慌てて思考を元に戻す。


[この方達が、今回の件の協力者よ──峰不二子さん。名前は聞いたことがあるでしょう?]


──この人が。あの。

思わずナイスバディ美女をガン見すると、ひらひらと笑顔で手を振られた。


…これは、あの世界的な泥棒が、振り回されるのもわかる気がすんな。



[…もちろん、無償で協力するなんて、泥棒がそんなことするわけないのはボーイもわかってるわよね?]


──聞いたことがある。
ルパン一味の、特に、この女性。

…不老不死の方法を、探っている、と。


母さんの方を見ると、苦笑をこぼしていて。


[…今回の件は、一筋縄じゃいかないからね。餅は餅屋。ある程度のリスクを背負ってでも、利害の一致している彼らに協力を頼んだの]

[ピンクアイオニーも魅力的だけどね。今回はボーイの純情に免じて譲ってあげるわ。それ相応の対価は、もらうけどね?例えば──パンドラの情報、とか?]


峰不二子がその単語を発した瞬間。
多分、びり、とした雰囲気を醸し出してしまった。

それが分かったのだろう、峰不二子が笑みを深めた。


[ふふ。盗一よりもポーカーフェイスはまだ未熟かしらね?まあ、とにかく今はお互いの利害の為の、協力者として。よろしくね?]


そう、まるで手のひらで男を踊らせるのが常かのように、当たり前の顔して握手を求めてくる女性。


──さすがルパン一味というわけか。

パンドラのこと…杏のことを含めて、どこまで知っているのか。
母ちゃんがどこまで話しているかはわからないが。

これ以上動揺を悟られまいと、名探偵ばりの胡散臭い笑顔を貼り付けて、[こちらこそ]と手を伸ばす。


そんな俺に、ふふ、とまた峰不二子は妖艶に笑って。
そうして差し出した手を、両手で握られた。

しかも、あの、胸元近くで。


[仲良くやりましょ?]


そんな、コケティッシュな微笑み攻撃を直接くらったわけで。


ルパン一味、恐ろしい…。








[で。ここに集合にした理由だけど]

コケティッシュ攻撃にやられ、思わず吸引力のすごい胸元を注視していると。
母ちゃんが窓にむけて、人差し指を指差した。
気を取り直して窓外に視線を向ける。

エメラルドグリーンの海に、まるで楽園のように浮かぶ島が見えた。


[あそこ。ここからなら、あの人工島が一望できるの。──ナフル・ジュメイラ。前に話したけれど。今回の目的地が、あの中心部]

[…あれが]


中心の幹からいくつも枝分かれしている、椰子の木のような形の島模様。
あの規模の人工島を作るのは、時間と労力と、莫大なる資金が掛かってることは、優に想像出来る。


[見えるかしら。あそこの幹のような部分の中心部に、一見さんお断りな国営の7つ星ホテルがあってね]

母ちゃんの言葉に、目を凝らして人工島を見る。
多分、あの半月板のような形のホテルのことだろう。

まるであの島の中心のシンボルタワーのように、鎮座するホテルがみえた。


[そのホテルのエレベーターが、今回のオークション会場の地下施設──アルヤッドに直通しているわけ]


不二子さんが、母ちゃんの言葉を続けるようにそう言った。

…国営ホテルから、直通ねえ。

──まあ、国が国力を挙げて作ったあの人工島の地下に、どうどうと東京ドーム程の大きさの地下施設を作れるわきゃねえんだから。
そりゃ、この国の、暗黙の公認っちゅーわけか。

…国が黙認して、闇オークションに力貸しちゃうってわけね。

ふーん。そりゃ、腕がなるってもんだ。



[──残りの侵入方法は?]


まさかホテルからしか地下施設に入れねぇわけじゃあるめぇ。


今回のオークション品の物資の運搬経路もあるだろうと、女性陣に問いかけると。
もちろん把握済みよ、とばかりの笑みを返された。


[あの、右端ね。椰子が枝分かれしてるような、島の3番目の部分の右端。あそこに、ガソリンスタンドがあるんだけど。そこから、アルヤッドに繋がる地下通路が伸びてるわけ]


ふむ。なるほどなるほど。
ガソリンスタンドなら、どんな車が出入りしても、周りは違和感感じねぇってか。

島の先端で海沿いだから、船から直接物資も運べるしな。


[んじゃ…まずはそのガソリンスタンドの店員になることから始めっかな]



そう、ナフル・ジュメイラを見つめながら。
ニッ、と口角を釣り上げた。







──さあ。
ショーの準備を開始しようじゃねぇか。