きっと依存してる
口を開けば喧嘩、喧嘩、喧嘩。ノルバ・シノとセシル・ラナの関係はまさに犬猿の仲。
鉄華団の中でも特に武闘派のふたりはその能力の高さから実働部隊に回されることが多く、作戦行動中であっても口を開けば喧嘩の応酬。しかし不思議なことにふたりの息はぴったりで、作戦に失敗したことは今までに一度もない。
「シノ! さっきはなに!? あんな突っ込み方じゃ、他のメンバーがカバー出来ないでしょ!?」
「セシル! おめーもな! 援護射撃だってのにあんな撃ち方じゃこっちも動けねーだろ!」
作戦を終えイサリビに戻ってくるなり、いつものように大声で罵り合うシノとセシルはどこか今までと違う視線を感じ、どちらからともなく視線のする方向を見ると、クーデリアがまじまじとふたりの応酬を見つめていたのだった。クーデリアが来てからはふたりで喧嘩をしていることがなかったとセシルは思い出し、お嬢様にはあまり見せたくない光景だったとひとりごちる。
「お、おふたりはいつもこんなに仲がいいんですか?」
「まあ、喧嘩するほど仲がいいと言いますか……」
「馬鹿言ってんじゃないのビスケット、どこが仲良しよ!」
「そうだぞ! あ、お嬢様はこんなガサツ女の真似しちゃぜってー駄目っすからね!」
「うるさいわ馬鹿シノ! クーデリア、馬鹿の言うことなんて無視して!」
「は、はあ……」
まるで嵐のようだと久々に目にする光景にオルガはにやりと笑う。シノとセシル、このふたりは良くも悪くも鉄華団のムードメーカーなのだ。本人達は認めたくないようだが、オルガがシノとセシルならと作戦行動を一任出来るほどの最強の白兵戦コンビだった。だからこそ、次の作戦も当然のようにシノとセシルに任せたのだった。
「うぁッ」
突然の銃声と悲鳴。シノがすぐさま振り返ると腹を打ち抜かれたセシルが目に入る。おかしい、その部屋には子供のヒューマン・デブリしかいなかったはずで、助けるべき人間達だ。倒れ込むセシルを受け止めるとべったりと彼女の血がグローブに染みる。こんなはずでは、とシノは歯を食いしばる。
「おい! セシル! しっかりしろ! まだ死ぬんじゃねーぞ!」
「シノ、あ、の子達、助けなきゃ……」
蒼白な顔で脂汗をかきながら必死に言葉を紡ごうとするセシルをダンテに任せ、シノはブルワーズの船への侵入工作を続けた。いつも背中を任せているセシルがすぐ近くにいないことは、不思議と居心地が悪く動作に精彩を欠いてしまったのは言うまでもなかった。怪我をした人間だけでなく、死んでしまった人間がいる、そうなってしまった原因が自分にあると思うとシノは不甲斐なさから壁を殴りつけた。
ブルワーズ制圧後、容態が安定したタカキと入れ替わりで今度はセシルが医務室に缶詰だった。幸い銃弾は貫通していて、内臓にも影響はなかった。鎮痛剤の影響で今はメディカルマシンの中で眠っているものの、血の気は薄い。静かに眠るセシルを見下ろして、シノは安堵の溜息をもらす。
「……悪かった、守ってやれなくて」
無機質な呼吸器の機械音に紛れ、シノは静かに言葉を紡ぐ。普段は喧嘩ばかりしているセシルが、実はとても気が利いて、子供が好きで、人前では気丈なフリをしているだけということをシノはとうに知っている。セシルといつも一緒にいるのが楽しくて、居心地がいいから、なんて思ってしまっている。
「俺の隣にはお前がいることが当たり前になっちまってて、お前が死ぬんじゃねーかって考えたらすげー怖くなった」
こんな仕事をしている以上、いつ何があってもおかしくない。頭では分かっていたはずなのに、今回の被害が出るまでは鉄華団は大丈夫だとどこかで思い込んでいたのかもしれない。
すぐ隣にいた仲間の命が奪われるなんてことは、二度とごめんだ。
「早く、目を覚ましてくれよ。今度こそ、俺が守る」
力強い言葉で思いを伝えると、シノはセシルの額にそっとキスをした。
2016/1/17
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