あまい蜜のような
肌寒さにふと目が覚めると、隣に眠っているはずのオルガがいなかった。シーツに残る微かな温もりがほんの少し前まで彼がここにいたことを示していて、彼の残り香が恋しくて追いかけるようにベッドを抜け出した。 真夜中3時の基地なんて夜通しの見張り番しかいないだろうと薄着のまま出てきたのは失敗だった。明日は一段と冷える、そんな予報を耳にしたのを思い出すくらいには基地内は冷え込んでいて、いつものあの場所にいるオルガを早く連れ戻そうと角を曲がると、見慣れた鮮やかな銀髪が目に入る。
「オルガ」
「おお、セシル。そんな格好でこんな所まで来るなよ、風邪引くぞ」
「ひどくない? やることやったらさっさとどこかに行っちゃうなんて」
オルガが私の個室に来るのは、決まって何か考え事から解放されたい時。私を抱いている間だけはエンドレスで思考する脳も、一時の快楽だけを求めるから何も考えなくてすむと彼は言っていたし、私は私で、一軍の男共から受ける下卑た仕打ちのストレスをオルガとの性行為で発散しているのだから、おあいこだ。この関係は私とオルガの、遠い昔からの"約束“。どちらかが苦しくなったら、助け合う。幼い頃のささやかな決めごとは身体が大きくなるにつれて単純なものではなくなっていたけれど、互いに何も言わず、体のいい”約束”をもう何年も続けてきた。
「今さらだろ」
「オルガがそんな薄情な男だとは思わなかったわ」
もうすでにお互い離れられないのかもしれない。気がつけばいつも隣にはオルガがいる。私もオルガの傍にいる。それが当たり前になりすぎていて、私達の世界はひどく狭いものになっている。このままずっと、心と体を消耗しながら生き続けていくしかないと分かっていても、きっとここから、オルガの傍から離れられない。
2015/11/8
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