待て、なんて言わないで
お酒の力になんか頼りたくはなかったけれど。
こうでもしないと想いを伝える機会が失われてしまう。
だって、明日には彼は自国へ戻ってしまうから。
酔ったフリをして、そっと彼の、凌統の肩へもたれかかる。
「……大丈夫かい?」
優しい声音が降りそそぎ、それだけでとても幸せな気持ちになる。
「少し、お酒が回ったようで……」
もたれたまま、そっと彼の顔を見る。
端整な顔立ち、甘い声、軽やかな身のこなし。
世の女性が彼に惹かれるのは道理だ。
私だって、そう。
敵国の武将に惹かれるなんて、どうかしていると思った。
今でこそ同盟があるから。
他愛の無い話をしたり、手合わせをしたり。
とうに自分の気持ちを偽れなくなってしまって。
浅はかだけれど、戦が始まればもう会うことはないんだから、言い逃げに近い形で言えれば良いと思った 。
「凌統殿……私、貴方の事が」
言葉を遮るように、彼の人差し指がそっと、私の唇に触れた。
「それ以上は……駄目だ」
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