抱きしめたら消えてしまいそう


「いびつな笑顔」
「愛し方なんて分からない(」
「同じ空を見ていた」の続き


あれ以来、直接会うことをためらっていた俺はひっそりと彼女の様子を見ていたものの、声をかけられずにいた。
そんな矢先、視界にセシルが倒れる姿が映った。
鈍い音を立てて床に倒れたこいつの体に触れると、ひどい熱を孕んでいた。

「こんなになるまで……気付かなかったって言うのかよ……」

気を失った彼女を抱き上げ、医者に診せようと歩き出すと微かに声が聞こえた。

「……気がついたのか?」
「……ジャン……」

瞳は閉じたまま、俺の名前だけを何度も呼ぶ。
無意識なのか判断が付かないが、彼女の言葉を聞き漏らさないように注意しながら歩く。

「……ジャン……私、怖いの……私、自身が……。……頭の中で、巨人を殺すことしか、考えられないの。ただひたすらひたすら、殺すの。」

まるで自分じゃないみたいで、今までの私がどこか別の所にいるみたいで。
そう言いながら、ぎゅっと俺の服の裾を掴んで泣いていた。
セシルを力いっぱい抱きしめて、お前はここにいるって言ってやりたい。
いつもの、本当のお前は俺の隣にちゃんとここにいるって。
俺は、ありったけの気持ちを込めて。
息を止めてしまいそうなくらいに、強く強く。
セシルを抱きしめた。




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