「あれ、そういえば今日いつもの友だちは・・?」
『よく気が付いたね山口くん!彼女らは今日委員会の仕事やらがあるから私の回収には来ないよ。だから観念してよ月島くん。』
「は?嫌だけど。そもそもなんで僕なわけ。」
『え、またそれ?何度も説明しているじゃない…。運命的な出会いだったんだって!』
「それを僕本人が覚えてないって言ってるんだから君が引き下がりなよ。」
『やだ!私諦めの悪さとしつこさには定評があるの!』
「それ定評じゃなくて悪評だろ。」
この2人の言い争いが始まるきっかけとなったのは3週間前のこと―。
***
「君ね、理数系の教科はずば抜けて解けているのに文系科目はこの体たらく・・ここまで差があると後々受験とかに差し支えるから早めに克服してほしいんだが・・」
とある昼休み、1年5組の担任は矢崎を呼び出して事情を聞いていた。
そう、先日返却された中間テストの結果が芳しくなかったのだ。
矢崎は理系科目が得意な生徒だ。
それこそ学年でトップの成績を誇るほどだ。
しかし文系科目の特に語学に限って言えば赤点間際だった。
『答えがひとつじゃないものってどうにも性に合わなくて…。あと、私が考える主人公の気持ちと、答えが考える主人公の気持ちが違うんですよね…。なんでですかね?』
「いや、それはこちらが聞きたいくらいなんだけどねぇ…。」
「すごいね、ツッキー!また満点だったの!?俺はまだ高校の英語には慣れないや…。」
「こんなの授業を真面目に受けてればある程度理解できるデショ。できない人間は自分にはできないと思い込んでるからできないんだろ。」
「さすがツッキー!」
「うるさい山口。」
担任のお小言を横目に、矢崎は廊下から聞こえてくる二人の話声に耳を傾けていた。
頼りなさげな声の持ち主の話から察するに2人は一年生なのだろう。
そして時期から推測すると彼らの話の主軸は先日返却された中間テストなのだろう。
そう予測を立てた矢崎はふと、開いたままになっていた職員室の扉に目を向けた。
その隙間からのぞく廊下を横切る2人の男子生徒・・・
『・・決めた!』
「え?私の話聞いてたかい?矢崎さん…。」
『先生!要するに私の成績が上がれば問題ないんですよね?』
「ん?いやそうだが・・君バイトもしているだろう…?そちらを控えたらどうなんだい?」
『うちの家庭は裕福ではないので…。弟の進学のために私も少しずつ積み立てをしていきたいんですよね。』
「まぁ期末テストで立て直せるのなら良いが…。」
『頑張りますね!』