Scar -4-

部屋の鍵を開けると遙はバッグに入れていたタオルをバスルームまで敷き詰めた。
そして、荷物を脱衣所に置くと、バスルームのドアを開ける。

「私、先に足だけ洗うね。すぐ終わるから、その後政宗はゆっくりシャワー浴びなよ」

すぐ目の前でパタンとドアが閉まる。
霞みがかったドアの向こうに遙のシルエットが浮かび、シャワーが流れ出す。
上機嫌に鼻歌を歌いながら、晒け出された細い脚をゆっくりと下の方から撫で上げるシルエットが浮かび、ドキリとする。
遙の肌理細やかな肌の感触をrealに思い出す。


全くお前は無防備だ。
男が何考えてるか分かっちゃいねぇ。


俺は、今日買ったsoapをバッグの中から出して、香りを確かめると、ニヤリと笑う。


無防備に俺を誘うお前が悪い。


俺がバスルームのドアを開けると、遙はハッとしたように振り向いた。

「政宗!?ゴメン、後ちょっとだから…」

慌てて泡を洗い流そうとする遙の手からシャワーを取り上げて、上の段のフックにかける。
温かいシャワーが俺達の頭上から注ぎ、服を濡らしていく。

「きゃっ」

シャワーを遮るようにかざされた遙の手を取り、壁に押し付けて、俺は遙の唇を奪った。

「んっ…まさむ……っ……」

容赦なく降り注ぐシャワーに濡らされて、kissが湿り気を帯びる。
堪らなくなって、遙の頭を引き寄せて、一層深く唇を重ねる。
抗議するかのように胸に当てられていた手は、いつしか縋り付くように俺のTシャツを握り締めていた。

どれだけ唇を重ねれば。
どれだけ肌を重ねれば。
この渇きは癒されるんだ?

いくら触れても足りねぇ。

柔らかな唇にずっと触れていたくて。
その柔らかさを味わうように殊更ゆったりと唇を食んでいると、遙の脚からかくんと力が抜けた。
慌てて腰に腕を回してぐったりとした身体を支える。

「はぁっ……はぁっ……」

髪からぽたぽたと雫を垂らしながら頬を上気させている遙の姿は堪らなく扇情的だった。

「何でこんなこと……」

潤みきった瞳で俺をなじるように遙が見上げる。

「お前が誘うから」
「え?」

遙の問いには答えず、湯で濡れた服を遙の身体から剥ぎ取っていく。

「ちょっ……!」
「どうせ脱ぐんだろ?手伝ってやるよ」

まだ身体に力が入らないのか、遙のキャミソールを脱がせるのはいとも容易かった。
背中に腕を回して、ブラのホックを外す。
剥ぎ取った衣服を床に捨てると、遙の胸で、翼のロケットが水を滴らせて光っていた。

「政宗、強引だよ……」

遙は両腕で胸を隠して、背中を壁に預ける。

「ここじゃ、嫌だからね?狭いし……。声が近所に聞こえたら困るし……」

小さく縮こまるようにして、困惑したように俺を見上げる姿は、酷く庇護欲と嗜虐心を煽った。

もう一度乱れさせたいという気持ちと。
額に口付けて、安心させて、身を委ねて欲しいという気持ちと。

酷く二律背反な気持ちが俺の中で鬩ぎあい。
結局俺は後者を選んだ。

「今朝みたいな真似はしねぇよ。お前の身体を洗ってやるだけだ」
「本当に?絶対に?」
「ああ。I promise」

そっと額に口付けると、遙が少しだけ緊張を解いた。

ショートパンツに手をかけると、遙がびくりと身体を震わせる。
安心させるように、もう一度額に口付けながら、少しずつずり降ろしていく。
水気をずっしりと含んだそれは、肌にぴったりと張り付いてなかなか簡単に脱がせることは出来なくて、遙の前に跪いて脱がせて行くと、遙は顔を背けて震えた。

「政宗、恥ずかしいよ」
「肌を重ねたのに今更だろ?」
「でも……」

丸みを帯びた白いヒップが露わになって、思わずごくりと喉が鳴りそうになる。
軽い眩暈を覚えながら、遙をすっかり脱がすと、俺も自分の服を脱いだ。

「ほら、座れよ」

未だ身体を隠すようにして立ち尽くす遙の腕を引いて、俺は遙を座らせた。
そして、バスタブに湯を注ぐ。

今日買ったsoapを泡立てると、浴室に甘い香りが広がった。

手でゆっくりと遙の背を洗っていく。
未だ警戒しているのか、遙は両腕で胸を覆ったままだ。


まあ、仕方がねぇか…。


背中全体を洗って首をそっと洗うと、遙が吐息を漏らす。
胸を覆っている腕に手をかけると、遙はビクリと震えた。

「身体を洗うだけだ。Don't be frightened.」

まだ少し固い遙の腕をそっと取り、手のひらでゆっくりと洗っていくと、少しずつ遙の緊張が解けていく。
指を絡めるようにして、丁寧に指先まで洗うと、遙は吐息を漏らし、背中を俺の身体に預けた。
後ろから抱き締めるようにして、あまり刺激しないように、ゆっくりと肩から胸、腹にかけて手を滑らせていく。

「はぁっ……政宗……」
「どうした?」

遙は白い喉を反らし、頭を俺の肩に預けるようにして、うっとりと溜め息を吐いた。

「気持ちいい……こんなの初めて……」

愛しくなって、遙を抱き締める。
遙の身体に付いた泡が、俺の腕に付き、抱き締めるとぬるりと滑る。

元々肌理細かい肌が更に心地良く感じられてそっと腕全体で遙の身体を愛撫すると、遙の口から濡れた吐息が漏れる。
遙は俺を振り向いた。

「キスして……」

俺は遙を椅子から降ろして、膝の上に座らせると、そっと唇を重ねた。
情欲を掻き立てないよう、気怠い触れるだけの口付けを繰り返すと、遙は焦れたように俺の首に両腕を回し、俺の唇を求める。

「あんまり煽るなよ。歯止めが利かなくなる」
「あ……」

ハッと気付いたように遙が唇を離す。

でも、遙が俺を求めてくれるのが嬉しくて。
俺は自ら深く遙の唇を奪った。
遙の口から甘い吐息が零れる。

「甘いな……吐息も、お前の香りも……」

遙はくすりと笑った。

「政宗も甘い香りがするよ?何か似合わない。でも、美味しそう」

そう言ってまた俺の唇を求める。

「じゃあ、甘いついでに、kissしながらでいいから俺の身体も洗ってくれよ」
「うん…」

遙は少し躊躇いつつも、soapを手に取り、泡立てると俺の身体に滑らせていく。
縺れ合うように抱き合い、互いの身体をなぞりながら、息の上がるような口付けを交わす。

漏れる吐息が。
柔らかな唇が。
酷く甘い。

いつまでもこうしていたい。

女と抱き合って、こうして口付けを交わして。
こんなに穏やかで幸せな気持ちになった事なんてなかった。
いつでも自分の欲を満たせればそれで良かった。

遙を抱くと、それまで汚れていた自分が浄化されていくような気がする。

人を愛し愛される事がこんなに幸せな事だと、改めて俺は知った。


ずっとこのまま。
気怠く優しい時間が続けばいい…。
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