「そんな事ないよ。遙は、金銭的にはそりゃ政宗からなにも援助はないけれど、それ以上のものをもらってるよ」
「それは前の男だって同じだろ?遙の欲しい言葉を囁いて。遙の欲しい温もりを与えて」
「はぁ…。そう言うと思ったよ。だから話したくなかったの」
美紀は溜息を吐くとコーヒーを飲んだ。
「金銭的なことが、政宗のネックな訳だ」
「まあ、そういう事になるな」
「うーん。こればっかりは難しいねえ。働く意欲があっても、ちょっとこればかりは政宗には難しい…。ん?待てよ…。もしかしたら……」
「何だ?」
美紀は、ハッと思いついたように表情を輝かせた。
「ねぇ、政宗。金子とか持ってないかな?」
「ぁあ?金子?持ってるに決まってるじゃねぇか。戦だからこそ尚更だ」
「マジで!?それ、ちょっと見せてくれる?私、力になれるかも知れない!」
「金子は持ってるが、今ここにはねぇ。遙の部屋だ」
「そっか…。じゃあ、いったん取りに帰って」
美紀が何をたくらんでいるのか知らないが、それで遙の力になれる。
それは酷く魅力的な申し出だった。
しかし、部屋に帰れば遙がいる。
まだかすかにしか見えない光明に縋っている俺は、まだ遙に会う勇気がなかった。
「取りに行くのは構わねぇが…。まだ、遙に会いたくねぇ。遙に会うのは全てに決着をつけてからだ」
「もう〜。早く顔見せてあげればきっと遙も安心するのに。男ってほんっとそういうところ見栄っ張りだよね。あー、もう分かったよ。私が何とかするから」
美紀は携帯を取り出し、電話をかけた。
「もしもし、由香?ちょーっと頼みごとしていいかな?課題はどう?進んでる?……うん、うん。やっぱり?あのさー、悪いんだけど、それにかこつけて遙連れ出してくれない?出来ればゆっくり食事してきて。……うん、サンキュ、助かる。今度埋め合わせするわ。遙連れ出したらメールして。……オッケー。じゃあね」
電話を切ると、美紀はニヤリと笑って親指を立てた。
「手配完了!もう、本当にこの代償は高くつくからね!」
「悪ぃ。Thanks」
「遙が家出たらメール来るから。金子を取りに行ったら、それ、換金しに行こう。私の叔父さんがサイドビジネスで骨董商やってるから、きっといくらかお金になると思うんだ。その金子ってどんなの?」
「普通の小判だ」
美紀は飲んでいたコーヒーを噴出しそうになってむせた。
「こ、小判!?それって普通じゃないから!」
「そうか?」
「うん、そうだよ!!まずいなぁ。おじさん、持ち合わせあるかなあ。相当高く売れると思うよ」
「なら良かった」
俺達はそれからこれからの計画について話し合った。
やがて、美紀の携帯に連絡が入り、俺達は行動を開始した。
俺は、遙の前の男と違う。
そして、遙を傷つけてしまったことを詫びたくて。
遙とのこれからの生活を俺が保障して。
今まで通り、幸せに過ごして行きたかった。
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