Breathless act.1 -4-

ようやく新宿に着いて、私はデパートが立ち並ぶ通りに程近い駐車場に車を停めた。
車内から解放されて、外に出た政宗は伸びをしてホッと力を抜いた。

「政宗は何を買いたいの?」
「身に着けるもの全部だな。5着くらいあれば十分だろ。このbagは前の男のか?」

政宗は腰に付けているシザーバッグを指差した。
黒い革に、シルバーのドラゴンが描かれているデザインだ。

「ううん。これは元々私の。たまに使う事あるよ。お財布もそう」
「Gotcha。じゃあこれは問題ねぇな。帰ったら、前の男のものは全部処分しろよ」
「うん、分かった」

政宗は満足そうに笑うと私の肩を抱いて歩き出した。
てっきり手を繋ぐものだと思っていた私は何だか拍子抜けすると共に、少しドキドキして政宗を見上げた。

「どうした?」
「今まで何人かと付き合ったけど、肩を抱かれて歩いた事がほとんどなくて、何だか緊張しちゃって」

政宗はクッと笑った。

「じゃあ俺が初めてなんだな。嬉しいぜ。緊張する事はねぇ。人通りも多いし、この方がいいだろ?」

政宗の言葉に頷く。

でも……。

ホルターネックを着た肩はむき出しで、政宗の手が直接触れている。
時折指先が少しくすぐるように腕に触れて、そこからじんわりと僅かに甘い痺れが広がっていく。

政宗を見上げると、私を見下ろし、優しく微笑む。
何だか私一人で敏感になっているみたいで恥ずかしかった。

新宿の雑踏を二人で歩く。
人込みをすり抜けるように政宗は私の肩を抱き、歩いて行く。
付かず離れず政宗の手のひらや指先が時折腕を撫でるようにしていって、何だか身体が疼いてくる。

「ねぇ、政宗。手を繋ごう?」

私は耐えられなくなって縋るように政宗を見上げた。
政宗はきょとんとした表情で私を見下ろした。

「Why?この方がお前を人込みから守ってやれるぜ?」

政宗は無自覚なんだ……。

政宗に触れられて、感じてしまっているなんて言えなくて。
私は政宗の言葉に頷くしかなかった。

「うん……そうだね」

一度意識してしまうと、政宗に触れられたところがまるで熱を持ったように熱く感じられる。
甘い吐息を吐きそうになり、何とか堪えた。

「お前、顔が赤いぜ。大丈夫か?」

心配そうに政宗が私の頬に手を当てて顔を覗き込む。

「熱……はねぇな」

額に大きな手のひらが当てられて、それが心地良くて少し安心感が広がっていく。

「うん、大丈夫。ちょっと暑くてのぼせてるだけだと思う」
「そうか」

政宗はフッと笑うと、額に当てていた手を離し、指の背で、私の顔の輪郭をすっとなぞった。

「っぁ……」

思わず甘い声が漏れてしまって私は身体を強張らせ俯いた。

ここのところ、毎日政宗に抱かれているから、身体が敏感になっているのかも知れない。
政宗にはきっとそんなつもりはないのに……。
指先が触れるだけで感じてしまうなんて……。

政宗は私の葛藤に気付かなかったのか、また私の肩を抱いて歩き出した。




遙が俯いたのをいい事に俺は密かに唇の端を吊り上げて笑った。
遙の顔を見れば、期待通りの効果が上がっているのが分かる。


俺を焦らした代償は身体で払ってもらうぜ、遙……。
まだまだ、こんなもんじゃ済まさねぇ。


俺はもう一度笑うと、遙の腕に指先を滑らせた。
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