もしかしたら、この服装は浮いてしまうんじゃないかと少し心配だったけれど、元々そういう階級のホテルだから、誰も私達の事を不思議そうな目では見なかった。
むしろ違った意味で注目を集めていた。
政宗は目立つから……。
少しゆったりとしたスーツが、背の高い身体に似つかわしい。
フォーマルなスーツを少しカジュアルダウンして着こなしている所が粋だった。
流石政宗様。
レストランのフロアに着くと、夕食時で人がたくさんいる。
ちらりちらりと私達に視線が向けられて少し居心地が悪い。
「お前、見られてるぜ?」
政宗が面白がるように耳元で囁く。
「違うよ。政宗が見られてるんだよ」
自分が視線を集めるなんて考えられない。
驚いて政宗を見上げると、政宗はくつくつと笑った。
「野郎が俺に見蕩れる訳ねぇだろ?」
言われて周囲を見回すと、スーツを着た男の人達と目が合った。
政宗は見せつけるように私の腰に手を回す。
「レストランは個室だから安心しろ」
政宗はニヤリと笑うと、悠然と私をエスコートした。
レストランに入ると奥の個室に通される。
私は周囲の視線から解放され、ようやく安堵した。
「フランス料理、久し振りだな…」
「家で作ってただろ?美味かったぜ」
「あれは家庭料理だもの。ここは本格的だよ。手が込んでてなかなか真似出来ないよ。デザートとかね、本当に綺麗なの。芸術品だよ」
「そうか。楽しみだな」
政宗はふわりと笑った。
ソムリエがやって来て、今日の料理について説明してくれる。
そして、お勧めのワインを色々提示してくれた。
「この後バーに行くつもりだから、出来ればボトルじゃない方がいいんだが」
ホテルのバーなんて、数える程しか行った事がない。
カクテルは自分で作るくらい好きだから楽しみになる。
政宗に贈りたかったカクテルがあるから…。
「ワインは残りましたらお持ち帰り出来ますよ」
「そうか。なら、ボトルで」
政宗様は辛口の赤ワインを頼んだ。
前菜からキャビアが可愛らしくあしらわれている。
私はウェイトレスが下がってから写メを撮った。
政宗がおかしそうに笑う。
「本当はお行儀が悪いのは分かってるの。でも、綺麗だから。後で眺めて政宗とのデートを思い出すの」
「お前って可愛いよな」
くすくすと政宗が笑う。
「思い出しきれないくらいに思い出を作ろうぜ」
「じゃあ尚更写真撮らなきゃ。思い出せなくなる。……嘘。政宗との思い出で忘れるものなんてない。ないけど……記憶って薄れていくものだから……鮮やかなまま取っておきたいの」
政宗は少し寂しそうな表情になった。
「Unfairだぜ。俺の記憶だけ薄れていく」
「あ……ゴメン…」
「いや、構わねぇ」
政宗は目を伏せてフッと笑った。
「俺はお前を絶対に忘れねぇ。例え、俺の記憶が薄れようと、お前の心の中にずっと鮮やかに咲いていられるなら……俺はそれで構わねぇ」
「政宗……」
じっと私を見つめると政宗はふわりと笑った。
「たくさん思い出を作ろうな」
その笑顔が綺麗で、私は見蕩れ、そして頷いた。
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