耳元を政宗の吐息が掠めてくすぐったい。
薄っすらと目を開けると、すっかり政宗に身体を預けて眠ってしまっていた事に気付いた。
「ここは?」
「もうすぐ熱海だ。さっき、少し海が見えたから起こした。熱海で伊東線に乗換えだから丁度いいだろ?」
「熱海かあ。熱海も温泉で有名だよね。フリーパスだから、熱海で一度降りてもいい?」
「ああ、いいぜ」
政宗と二人、車窓から遠くに見える海を眺める。
東京駅では混雑していた車内も今は人もまばらだ。
本を読んだり話に興じたり、ぼんやりと外の景色を見たり、皆、思い思いに時間を過ごしている。
私は政宗と手を繋ぎ、車窓を振り返って、外の景色を一緒に眺めた。
田舎の海辺の温泉街ののどかな景色に何だか癒される。
「海辺の景色っていいな…」
「そうだな。でも、俺は田園の方が好きだ。熱い日差しの中、そよ風に揺れる若い稲穂は緑のcarpetみたいで綺麗だぜ?やませさえ吹かなければ、民が飢える事もない。暑いのは苦手だが、俺は好きだぜ。豊作になるからな」
政宗が田の畔道に馬を走らせる姿を想像する。
民に慕われて、民に笑いかけながら気持ち良さそうに馬を走らせる姿が思い浮かぶ。
「政宗って、やっぱり領主様だね。政宗のそういう所、すごく好きだし、尊敬する。…ねぇ、やっぱり私は政宗には釣り合わないよ…」
政宗はもっと高い次元で物事を見ていて。
器が違うと思い知らされる。
「そんな事はねぇ。お前だってお前なりに色々考えてる。人の好みなんかに理由なんて必要ねぇ。俺だって、民の笑顔があるから好きってだけだ」
「でも…」
尚も言い募ろうとすると、政宗は私の唇に指を宛がって制止した。
「余計な事を考えるんじゃねぇ。釣り合うか釣り合わねぇかなんて他人が勝手に言う事だ。お前は黙って俺だけを愛し、そして、黙って俺に愛されてろ」
何故、政宗はこんなにも私の欲しい言葉が分かるのだろう。
じっと政宗を見つめていると、政宗も私を見つめ返し、有無を言わせぬ声音で言った。
「いいな?俺は誰にも邪魔させねぇ。例えお前自身にもな。お前に自信がないなら、お前のどこに魅かれたか、お前がどんなにいい女か、いくらでも、お前が満足するまで囁いてやる」
「政宗…」
政宗は瞳を伏せてフッと笑うと、笑いを滲ませたまま、私の頭をくしゃりと撫でた。
「ここじゃ言わねぇけどな。もったいなくて他人に聞かせたくねぇ。宿に着いたらゆっくりと愛してやるよ。折角のhoneymoonだしな」
頬に一つkissを落とすと、政宗はまた外の景色を眺めた。
しおりを挟む
top