もしかしたら、雨…?
窓の外を見ようと身体を起こそうとすると、政宗の腕が腰に絡み付いた。
「今日はGood morningのkissもなしか?つれねぇな」
フッと笑って政宗はそっと唇を重ねた。
「Good morning, my sweet heart.」
「政宗、おはよう」
見つめ合うと政宗は嬉しそうに口許を綻ばせ、ゆっくりと私の髪を梳く。
「ずっとこうしていたい」
「ダメだよ。8時には朝食持って来るって仲居さんが言ってたでしょう?」
「Damn!無粋だぜ」
政宗は甘えるように私を抱き寄せて額にキスを落とした。
「ねぇ、窓の外見に行ってもいい?」
「ああ、いいぜ」
身体を起こそうとすると、またじゃれつくように政宗の腕が絡み付いて邪魔をされる。
「ちょっ、政宗っ!あっ!」
腰をしっかりと抱かれ、首筋に、背中に、くすくすと笑いながらキスを落とされて身体から力が抜ける。
「窓の外見たいんだろ?行って来いよ」
耳殻を唇で食む政宗の吐息が耳元を掠める。
「あんっ…いじ…わる……」
シーツを握り締め、震えながらようやく弱々しく言葉を紡ぐと、政宗はやっと腕の力を緩めた。
浴衣を羽織って窓辺に行く。
カーテンを開けると窓ガラスに水滴が付いていた。
窓の外の景色はぼんやりと霞んでいて、どんよりとした雨雲が空を覆い尽くしている。
目の前の浜辺は水気を含んだ濃い灰色をしていた。
霧雨のようなしとしととした雨が降っている。
政宗の気配がして振り向くと、浴衣を着た政宗が歩み寄り、私を後ろから抱き締めた。
「雨だな」
「そうだね。海に行けなくて残念」
燦々と照る日差しの中、政宗と波と戯れるのを楽しみにしていた。
「あと3日ある。晴れるだろ?この時期に雨が続く事はねぇ」
「うん、そうなんだけど…。でもやっぱりつまらないな」
私が溜め息を吐くと、政宗は私を抱き締める腕に力を込めた。
「Hey, 俺がいるのに退屈なのか?」
「そういう訳じゃないけど…。政宗といられるのは嬉しいよ?でも政宗と遊びたかったの」
振り返ってそう言うと政宗はフッと笑って私の唇に掠めるようなキスを落とした。
「Okay. じゃあgameをしようぜ」
政宗の口許にはニヤリとした笑みが上っている。
「きっと退屈はしないぜ。拒否権はなしだ。俺と遊びたいんだろ?」
政宗の笑みに嫌な予感がする。
「ペナルティとかあるの…?」
おずおずと尋ねると、政宗はくすりと笑った。
「特にねぇけど。あった方がいいか?」
私がぶんぶんと首を横に振ると政宗はおかしそうに笑った。
「Okay. じゃあruleの説明だ。今日一日、お前は俺の事を『政宗様』か『殿』と呼ぶ。仲居がいる時は普段通りで構わねぇ。ただし、二人きりの時は正室が呼ぶような言葉遣いで俺に接する事。Do you get it?これなら部屋でしか出来ねぇし、退屈しねぇだろ?」
「えっ?でも…」
昨日、『政宗様』と呼んだ時の政宗の辛そうな表情が蘇る。
痛いくらいに強く私を抱き締め、政宗は震えていた。
政宗に辛い思いはさせたくない。
じっと政宗を見上げると、政宗はフッと表情を緩めて私の頭をくしゃりと撫でた。
「心配すんな。もうあんな風に取り乱したりしねぇよ。俺はお前を連れ帰る。気が早いかも知れねぇけど、お前が俺の世界に来た時のためのpracticeだと思えばいい」
自信たっぷりな口調なのに、隻眼にやるせない哀しみの色が見え隠れしていて切なくなる。
私も政宗のそばで生きたい。
名を呼べばいつでもその温もりで包んで欲しい。
哀しくなって、私は政宗の背中に腕を回して抱き付いた。
政宗も私の背中に腕を回して抱き締める。
政宗の温もりが心地良くて酷く愛しかった。
あと2週間でこの温もりを失ってしまうと思ったら辛くて堪らなかった。
政宗が私の後頭部を優しく撫でる。
「安心しろ。俺はお前を離さねぇ。なぁ、遙。名前、呼んでくれよ」
私は頷き、政宗の胸元に顔を埋めたまま囁いた。
「政宗様、約束ですからね。ずっとずっとお傍にいさせて下さい」
「ああ、約束だ」
政宗は私の顔を上げさせると、何度も優しく口付けた。
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