鮮やかに、美しく、そして儚く -2-

遙に乞われて、翌日も俺達はあの浜辺へ行った。
遙の書いたラブレターは、風にかき消されながらもまだそこに残っていた。
遙は切なそうにそれを眺めていたが、やがてふわりと笑うと俺を海の中に誘った。

二人で波打ち際で水をかけ合ったり、海の中で抱き合いながら飽きる事なくキスを交わしたり。
浜辺に戻って、波打ち際に二人で新たな愛の言葉を砂の上に書き連ねる。
綺麗な貝殻を拾っては、硝子の瓶に詰めていって、帰ったら二人で揃いのアクセサリーを作ろうと約束した。
小さなスイカを小刀で取り分け、肩を寄せ合って食べる。
意味もなく互いのスイカにかじりついて微笑み合う。
カメラで互いの写真や風景の写真を撮る。
岩の上にカメラを置いて二人の写真を何枚も撮った。
タイマーをセットして、二人で頬を寄せ合って微笑んだり、抱き合ってキスをしたり。
二人がここで生きていた証しを形として残すために、たくさんの写真を撮った。
昨日の空白を埋めるように、俺達は甘く優しい時間を過ごした。

やがて、陽は西の方に傾き、白かった太陽の光がオレンジ色に染まっていった。
この楽しくて愛しい時間はもうすぐ終わってしまう。
愛しい時間ほど過ぎるのはあっという間だ。

ずっとここにいたかった。
肌を焦がす太陽の熱と潮騒に包まれて。
嬉しそうに微笑む遙と触れ合ってさえいれば他に何もいらなかった。

俺達は明日の朝、東京に帰らねばならない…。
夢のような時間はもうすぐ終わりを告げる…。

遙は少し寂しそうに、ビニールシートの上のバスタオルに寝そべった。
少し日に焼けた無防備な背中がやけに小さく見えた。
ほんの少し焼けた肌は、それでも白く艶々と柔らかくオレンジ色の西陽を反射していた。
俺も遙の隣りに寝そべると、遙は俺の手を取り指を絡めた。
そしてそっと俺の指先にキスをする。

「昨日もこうすれば良かったな…。政宗とね、海で遊んで抱き合って、浜辺で寄り添って、のんびりするの」

遙は寂しそうに呟き、そのまま俺の指に華奢な指を絡めたまま、親指でそっと指の輪郭をなぞった。
その官能的な指の動きにぞくぞくと甘い痺れが身体に広がっていく。
見つめ合う視線が段々と熱を孕み、遙の瞳が潤んでいく。
俺の指を食むようにキスをすると、誘うように遙がすっと長い睫毛を伏せた。
遙が昨日と同じ水着を着て来たのは、遙もこうなる事を期待していたからかも知れない。

お前がその気なら俺は…。

そう思うと、急に遙が欲しくて堪らなくなって。
胸がドキドキと高鳴る。
身体の中心に急激に熱が高まっていってどくどくと脈打つ。
そのあまりの熱さに堪らなくなって、遙の頭をぐいと引き寄せ、深く口付ける。

身体が熱い。内側も外側も。
胸を焦がすような熱を解放したいのに、いつまでも溺れていたい。

太腿をかろうじて覆うほど短いひらひらとしたスカートの中に手を差し込み、水着の上から形の良いヒップをゆるゆると撫でると、キスを交わしたまま遙は甘く喘いだ。
抱きすくめて舌で遙の弱い所をくすぐると、遙は堪え切れないように俺の髪をくしゃりと掴み、長い脚を俺の脚に絡めた。

「ん、あぁっ…はんっ…!」

甘えたような喘ぎ声に身体の中心が一際どくんと脈打った。
そのままなし崩しに己の欲のまま、貫いてしまう事も出来た。
でも、近くから聞こえる潮騒があまりに穏やかで、いつまでもこの焦れるような身体の疼きのまま、遙の肌をゆっくりと味わいたい気持ちになる。
俺は存分に遙の口内を蹂躙すると、唇を遙の頬に耳元に移して行った。

「はぁっ、政宗っ、そこ、ダメっ!」

元々耳元が敏感な遙だが、今日はいつも以上に反応がいい。
俺は遙を俯せにして覆いかぶさると、長い髪をかき上げ耳を露にし、噛み付くように何度もキスをした。
その度若鮎のように背をしならせる遙の背中をそっとなぞると、遙は焦れたように身体を捩る。

「政宗っ、っぁ、政宗っ!」
「どうした?」

わざと吐息がかかるように耳元で低く問いかけると、遙は堪え切れないように大きく首をのけ反らせて震えた。

「あぁっ、早くっ!」

遙が胸の頂きや花芯への愛撫を欲しがっている事など分かりきっている。
そして、早く貫いて欲しがっている事も。
こんなにも早く俺を欲しがる遙は珍しい。
遙の水着の中に指を入れ、花弁をなぞるとそこはすでに蜜でたっぷりと濡れていた。

「いつもより濡れてるぜ?外だからいつもより感じるか?」
「そんな事言わないでぇっ…」

『外』だという言葉に反応して、温かい蜜がさらに溢れ出す。
その蜜を掬って花芯に絡めると、遙の身体は悦びにうち震えた。

「あぁんっ、あっ、はぁっ!」
「遙、いいのか?お前、『外』じゃ嫌だろ?」

花弁の奥から溢れる蜜をくちゅくちゅと弄ぶと、遙は恥ずかしそうに耳元まで赤くなって小さな声で答えた。

「外でもいい。政宗に早く抱かれたいの」

遙の台詞を耳にして、背徳的な悦びがふつふつと沸き上がる。
こうして外で無防備な背中を晒したまま、女を抱くのは初めてだった。
苦しいくらいのときめきに吐息が震える。

「お前の望み通り、ここでゆっくり可愛がってやるよ」

耳元で低く囁いてそのまま唇を首筋に肩に滑らせた。

遙の首の後ろで結えられている水着の紐を口に咥え引くと、はらりと紐が解ける。
期待にうち震えるように、遙の身体がぴくりと反応した。
遙の太腿を焦らすように愛撫しながら、しなやかな背中に唇を這わせると、堪え切れないようになまめかしく遙の腰が揺れる。
男を誘うような、その動きを目にして、耐えがたいほど腰が疼く。
まだ繋がっていないのに、俺達の呼吸はすでに上がっていた。
すぐにでも欲望のままに突き上げたいのに、焦らされよがる遙の美しい身体をいつまでも眺めてなぶりたい。
俺は殊更に焦らすように手のひらを遙の身体に滑らせながら、背中の後ろで結えられた紐を咥えて解いた。
遙は両腕に顔を埋めたまま甘い吐息を漏らした。
はらりと水着が解け、柔らかな白い双丘が零れ落ちる。
その輪郭を指先でなぞると遙は焦れたようになまめかしく腰をくねらせた。

「あぁっ…政宗ぇ…もっと…」

肘を着いて遙は顔を上げ、空気を求めるように首をのけ反らせて喘いだ。

「もっと激しくして!もっと壊れるくらい乱暴にして!じゃないと私、私…」

狂いそう…。

遙は潤んだ瞳で俺を振り返り、今までにないほど淫らな表情で俺に告げた。
身体を捩り、辛そうに眉根を寄せながら自らの胸をきゅっと鷲掴みにする。
その仕草を目にして、何かがぷちりと切れた気がした。
もしかしたらそれは辛うじて保たれていた理性だったのかも知れない。
俺は遙の耳元で囁いた。

「今のお前、堪らなく淫らで綺麗だ。好きだ」

髪をかき上げてやると、その刺激にすら感じたように遙は目を閉じて吐息を震わせた。

「今日は手加減してやれねぇ。覚悟しろ」

その言葉を合図に、俺は乱暴に遙の身体を嬲り始めた。
噛み付くように遙の身体にキスをする度に赤い華が鮮やかに肌に咲く。
豊かな胸を千切れるくらいにギュッと鷲掴みにして揉み上げると遙は俺の手に小さな手を重ねて身体を妖艶にくねらせてよがる。

「政宗っ…あぁっ…もっと、もっと!」

いつものように優しい愛撫ではない。
肌を擦るように手を滑らせ、柔らかな身体をキツく鷲掴みにするように性急に揉み上げる。
柔らかなキスではなく、遙の白い肌を蹂躙するように噛み付くように激しく口付ける。
なのに、俺の腕の中で踊るようになまめかしく身体をくねらせる遙は熱に浮かされたように俺にねだる。

「気持ち…いいっ。あぁっ、政宗っ、政宗っ!もっと!」
「お前を壊しちまうかも知れねぇ」
「壊れてもいいっ。はぁっ、政宗っ、もっと、壊れるまで抱いてっ!」

喘ぎながら懇願する遙は眩暈がするほど美しく艶っぽく、俺は衝動的に遙の水着の下をはぎ取ると遙の腰を抱え上げて一気に貫いた。

「あぁんっ!」
「くっ…はぁっ」

焦がれていた快楽に悦んだように遙のナカが締め付ける。
気を許せばそのまますぐに欲望を中に吐き出してしまいそうだった。
快楽を堪えるように自然と眉間に皺が寄る。
額からポタポタと汗が遙の胸へ落ちる。
遙は熱に浮かされたような表情で俺を見つめた。

「政宗のその表情好き。すごく綺麗。もっと私を感じて乱れて」
「ああ、じゃあ、目ぇ瞑らないでよく見てろ。お前にしか見せねぇから」

遙は余裕のない表情で嬉しそうに笑う。
またナカがきゅっと収縮して俺は快楽に顔を歪ませた。
そのまま遙の腰を片腕で引き寄せ、もう片方の手は遙と指を絡めるようにして繋ぎ、遙の手を砂の上に縫い止める。
俺は熱につき動かされるまま容赦なく腰を打ち付けた。

遙は快楽を堪えるように目を閉じて喘ぐ。

「目ぇ開いてろって言っただろ?」

遙は辛そうな表情で薄っすらと目を開いた。
何度も奥まで打ち付けると、遙はあっけなく達した。
それでも俺の身体はまだまだ熱を孕み、止める事は出来なかった。
余韻に浸る暇も与えず、何度も体位を変えながら交わる。
やがて俺も遙の中に欲望を吐き出したがそれでも熱は収まらない。
いくら突き上げても足りなくて、遙の柔肌を乱暴に愛撫しながら俺の全てをぶつける。
こんなに優しさの欠片もない抱き方をしているのに、遙は今までで一番感じていた。
俺を求めるように身体をくねらせ、大きく喘ぎ、俺の背に爪を立てる。
時には遙が上になり、俺の上で踊るように淫らに身体をくねらせながら、俺の身体を貪った。
首をのけ反らせて、白い喉を露にし、眉根を寄せて感じながら腰を振る遙は今まで見たどんな女より、美しく淫らだった。
そんな遙を見るのは初めてで、いつまでも眺めていたいのに、煽られて余裕なんてなかった。
また遙を組み敷いて衝動につき動かされるまま、激しく突き上げる。

愛の雫が枯れる事なんてないのかも知れない。
それほど、何度も俺達は絶頂を迎えた。

いつしか辺りは暗くなり、東の入り江の崖から明るい月が上っていた。
温かかった海風がひんやりと冷えて来た頃ようやく俺達は貪り合うのを止めて、キツく抱き合った。
荒い呼吸をつき、身体に燻る熱に耐えるように互いの身体を壊れるほどキツく抱き合う。
まだ俺自身を身体の中に咥えこんだまま、遙は俺の膝の上に跨がり身体を小刻みに震わせる。

明るい月夜だった。
辺りを染めていたオレンジ色の太陽は消え去り、辺りを照らすのは、蒼白い月の光。
万物が色を失ったように、モノクロの世界が広がっていた。
少し身体を離すと、遙の柔らかな乳房が月明りに白く照らされ、まるで陶磁器のように美しかった。
黒いスカートが、太腿の付け根までめくり上がり、しなやかな白い太腿が露になっている。
こうしてお互い着衣を纏っているのに繋がっている事にどうしようもなく妖しく胸がときめく。
汗で張り付いた髪をかき上げてやり、そっと唇を重ねると、遙は甘えたように俺に抱き付いた。
甘い口付けを何度か交わし、俺は海に視線を移した。
段々と月が高度を増し、明るく辺りを照らしている。
浜辺の両側にそびえる崖の岩肌がくっきりと照らされていた。
まるで水墨画のようなその景色は陰影が鮮やかで、陽の光の下で見るより美しかった。
遙もつられて海の方を見遣り、息を呑んだ。

「綺麗…。月明かりに照らされた風景がこんなに綺麗だなんて知らなかった」

松明も必要でないほど、周囲は明るかった。
全ての陰影がくっきりと照らし出され、ただただ静かで美しく儚かった。

「こんな綺麗な景色初めて。月の光がこんなに美しいなんて知らなかった。そして、世界がこんなに美しい事も」
「月夜には小十郎と庭を眺めながら酒を飲んだものだが、綺麗だったぜ。でも、こんなに自然に包まれて、満たされた気持ちで月夜の景色を眺めるのは初めてだ。景色も綺麗だが、遙、お前も綺麗だ。白い肌がさらに輝いて見える」
「政宗の身体も綺麗。鎖骨も筋肉も、まるで石膏像みたい。最高の芸術品だよ。私、この身体に愛されていたんだね」

遙はうっとりしたように吐息を漏らし、そっと俺の背中を抱き締めた。

「政宗とこうしてこの景色が見られて良かった。最高の思い出だよ。自然に包まれて壊れそうなほど激しく抱かれた事も全部。こうしてまだ繋がっている事も。離れたくない。政宗と繋がっていたい」
「俺もだ。まだお前とこうしていたい。さっきみたいに乱暴にするんじゃなくて、景色を見ながらゆっくりとお前を感じたい」

遙の背を抱くと、遙は軽くキスをして、今度はゆっくりと腰を動かし始めた。
愛を囁き合いながら甘い口付けを交わし、互いの優しさが溶け合うようにお互いの身体を愛し合う。

誰もいない浜辺。
打ち寄せる波と美しい月だけが俺達を見守っていた。
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