鮮やかに、美しく、そして儚く -3-

借りていた車を返してしまうと、それが何だか寂しくて、私は思わずレンタカーショップを振り返った。
私達は明日、東京に帰らねばならない。
4日間は長いようで、あっという間だった。
私はものすごく寂しそうな表情を浮かべていたに違いない。
政宗は私の頭をそっと引き寄せ抱き締めてくれた。

「そんな顔するな。夜はまだこれからだろ?旅館に帰ったら部屋の温泉に入ろうぜ。貸切り温泉もまだ入ってねぇしな」

政宗は楽しそうに笑うと、私の背をぽんぽんと叩いた。
そして指を絡めるようにして手を繋ぎ、ゆっくりと歩き出す。

旅館への帰り道は薄暗く寂しく、コンビニとゲームセンターの明かりがやけに煌々と輝いて見えた。
ゲームセンターの前を通りかかって政宗が立ち止まる。

「これ、何だ?」

店内に若者達がたくさんいるのを見て、政宗の隻眼が興味津々に輝く。

「ん?これはゲームセンター。色々なコンピュータゲームが出来るんだよ。私はクイズゲームとプリクラくらいしかやらないけど」
「gameか!面白そうだな!」
「あ、そうだ。政宗、車の運転したいって言ってたよね?レースゲームもあるよ。ちょっと寄ってみる?」
「Really!?Sweet!!早く行こうぜ!」

政宗は嬉しそうに私の手を引いてゲームセンターに入って行った。

ゲームセンターは久し振りだった。
1年くらい前に美紀と渋谷のゲームセンターでプリクラを撮ったのが最後のような気がする。
政宗に乞われるまま、まずはレースゲームをする事にした。
対戦モードで二人で遊ぶ。
政宗は力が入り過ぎて、何度もレースコースを外れ、クラッシュしていた。

「Shit!真直ぐ進まねぇ!」
「政宗、力み過ぎだよ」
「I know!何でハンドルってやつはこうも手応えがねぇんだ!?」

政宗は悪態を吐きながらもしばらくレースゲームと格闘していたが、やがて諦めた。

「やっぱり車は俺の性に合わねぇ。I give up. 断然馬の方がいい。なぁ、遙。あれ、何だ?」

政宗が指差した先にはプリクラがあり、丁度カップルが仲睦まじく出て来た所だった。

「あれはプリクラ。写真を撮るんだよ。色々フレームが選べて文字も書けるの。それでね、写真の裏がシールになっていて、色んな所に貼れるの。ほら、こんな感じに」

私は政宗に携帯の裏を差し出した。
美紀と肩を寄せ合って写っている写真だ。
政宗の眉が吊り上がる。

「お前、何で他のやつと嬉しそうに写真に写ってるんだ!?今すぐ剥せ!」
「そんな無茶な!相手は美紀だし、政宗と出会う前のプリクラだから仕方ないじゃない」
「いいから剥せ!おい、遙、今すぐプリクラ撮るぞ。それですぐに貼り替えろ」

政宗は私の手首を掴んで大股に歩き出す。

「ねぇ、政宗、待って!待ってってば!ヤダヤダ!今すぐは無理!」
「Why!?」

眉間に皺を寄せ、政宗が振り返る。

「だって折角撮るなら綺麗に写りたいもん。政宗の隣りだったら尚更だもん。政宗、カッコいいから絶対見劣りするもん。海でメイク落ちちゃったから直してくる」

政宗は厳しい表情のまま私を見つめていたが、やがて溜め息を吐いた。

「仕方ねぇな。じゃあ早く行って来い。俺は両替してくるから」
「うん、なるべく急ぐね」

踵を返そうとすると、政宗にぐいと腕を引かれ、耳元で囁かれた。

「綺麗なメイク期待してるぜ。お前はそのままでも十分綺麗で可愛いけどな」

頬にキスを落とすと政宗はひらひらと手を振った。
こんなに人がたくさんいる所でキスをされたのが気恥ずかしくて、私は頬を押さえて化粧室に足早に向かった。
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