閑話休題:A Good Day T

現実逃避に私が選んだのは定番のデートスポット、プラネタリウム。
都会は星がよく見えないから、政宗が見ていたかも知れない綺麗な夜空を二人で擬似体験したかった。
政宗の世界で一緒に見る事はきっと叶わないから。
夏休みも終盤の平日のせいか、プラネタリウムは空いていた。

政宗は機械やドームを物珍しげに眺めていたが、やがて上演が始まると、指を絡ませるように手を繋いだ。
きらきらと煌めく星空が目の前に広がると、政宗は軽く感嘆の声を漏らした。

「すげぇ。俺の世界の星空みてぇだ」

政宗は私の頭をすっと撫でると、私の肩を抱き寄せた。
政宗の肩に頭をもたれかけさせて私も星空を見上げる。

ここが広い草原で、政宗の腕枕で星を見上げる白昼夢を見て幸せで切ない気持ちになる。
もし政宗の世界で傍にいられたら、きっとこうして二人で本物の夜空を見上げられただろう。
それとも二人で小十郎に叱られるのだろうか。
そんな事を考えたら何だかおかしくなって笑いが込み上げた。

「どうした、遙?」
「政宗の世界でね、二人でお城を抜け出してこうして夜空を見上げたら、帰った後に小十郎に叱られちゃうなって思って」

そう小声で囁くと、政宗は喉の奥でクッと笑った。

「違いねぇ。はしたないとかあいつ色々煩ぇからな。お前が俺の正室なら尚更だ」

政宗は私の髪をくしゃりと撫でるとくすくすと笑った。

「好きな女を腕に抱いて夜空を見上げる。そして…」

政宗は私の頭を引き寄せると触れるだけの優しいキスを唇に落とした。

「こうしてキスをして、見上げれば綺麗な夜空が広がっている。最高だな。小十郎の説教なんて痛くも痒くもねぇ」
「本当に小十郎には苦労をかけてるね、政宗」
「…遙、少し黙ってろ」

政宗は少し不機嫌そうな押し殺した声で囁くと、やや強引に私の唇を奪った。
立て続けに優しく唇を食まれると、身体が甘く蕩けて私は政宗の首に腕を回した。

そっと目を開けると、政宗のしなやかな髪の向こうに満天の星空が広がっていた。
零れ落ちてきそうな美しい星空に、政宗の美しい顔が視界に広がり、幸せで堪らない気持ちになる。
政宗は角度を変えてまたキスをすると、私と同じように星空を見上げた。

「綺麗な夜空とお前で視界が埋め尽くされて、堪らなく幸せだ。癖になりそうだぜ」

私達は、星座の説明もろくに聞かず、指を絡ませ手を繋ぎ、キスを繰り返した。

「……お前の部屋からはあまり星が見えねぇからな。…俺に想いを届けたかったら星じゃなくて月に願え。特に、三日月ならきっと、お前の想いを届けてくれるぜ。俺も月に願う」
「うん」

躊躇いがちに囁かれた言葉は哀しくて、でも優しくて。
私はもう泣かないと決めていたから、零れそうになる涙を堪えて頷いた。

「Sorry. 悲しい話はここまでだ。happyなday dreamをもう少し見させてくれ」

私の髪を撫でて星空を見上げると、私に視線を移し、涙で少し濡れた睫毛に優しくキスをして、そしてまた唇に蕩けるようなキスを繰り返した。
いつもキスをする時は目を閉じるのに、私は何度もそっと目を開けて星空を眺めた。
政宗の隣りで再び本物の星空をこうして眺めるのを夢見ながら。


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