エピローグ -3-

封筒を開けると、白い便箋が出て来た。
これもノベルティか何かなのか、HERMESのロゴが入っていた。
きっと政宗はバーキンを予約して、そこで手紙を書いたに違いない。
便箋には万年筆の綺麗な字が書かれていた。


『遙へ

元気にしてるか?
一人で泣いてないか?
急に荷物が届いて驚いただろ?
この手紙を読んでいるって事は、俺はお前の傍にいないんだな。
俺達は離れてしまったんだな。
そう考えると辛くて堪らない。
でも、離れてしまったお前に、俺の変わらない想いが届けたくて、バッグを送る事にした。
お前、いつも荷物が多いから。
お前がいつも身に着けられるものを考えてたら、これしか思い浮かばなかった。
きっと、これが、お前にやれる最後のpresentだ。

俺は今、明日の祝言のmarriage ringを取りに銀座に来ている。
お前、今でも指輪してるか?
俺も絶対に外さねぇ。
例え、他の女を娶る事になっても、絶対に。
明日、俺がお前に誓う言葉は俺の本心であり、そして、願いだ。
俺達は一緒にいられないかも知れねぇ。
それでも、この想いだけは偽る事が出来ねぇんだ。

遙、愛してる。
お前をこの腕に抱ける日々は喩えようのないくらいの幸せだ。
お前を抱き締められなくなると考えただけで、狂いそうになる。
そんな日なんて永遠に来なければいいってな。

本当は、お前と二人、この手紙を笑って読めればいいのにって思う。
俺の人生初のLove Letterだぜ。
笑えるだろ?

お前と過ごす日々が当たり前過ぎて、言葉が見つからねぇ。
お前を失うなんて考えられねぇ。
寄り添う温もりも、少しはにかんだような笑顔も、繋いだ手を頬に当てる癖も、愛しくて堪らない。

お前が好きだ。
言葉に出来ないくらい。
お前の存在自体が俺にとって癒しであり、何物にも代えがたい。
愛してる。
例え離れてしまっても。
もう二度と会えなくても。
お前と恋に落ちて、俺は幸せだった。
見つめ合うだけで、唇を重ねるだけで、言葉では言い表せないくらい満たされた。
もしこの想いが届くなら、いや、届かなくても、俺はお前を想い続ける。
俺を忘れないでくれ。

ずっと傍にいたかった。
お前と共に生きて行きたかった。
離れてしまっても、ずっとお前だけを想い続ける。
俺がこの世でたった一人、心から愛した、大切な大切な遙。
お前を愛した俺をどうか忘れないでくれ。

俺はお前の幸せを願っている。
離れてしまっても、ずっと。

政宗』


あの頃と変わらない政宗の想いが伝わって来て、胸が苦しくなる。

あの日、一人で出かけた政宗が、指輪の他にこんなプレゼントを用意していたなんて知らなかった。
何でこんなに大切にしてくれるの?
こんなに愛されたら、切なくて恋しくて堪らなくなる。
指輪、一人の時はいつも着けているよ。

忘れられる訳ないじゃない。
あんなに愛したのは政宗ただ一人なんだから。

手紙を胸に押し抱いて目を閉じると、ふわりと政宗の温もりに包まれたような気がした。

私も、ずっと、ずっと、政宗だけを愛しているよ。
離れてしまっても、ずっと。

ただ一つ、私が出来なかった事は、政宗の夢を叶える事だった。
画面越しでも会ったら恋しくて堪らなくなりそうで、会えなかった。
もう、私に優しい微笑みが向けられないと思うと辛くて堪らなかった。

政宗は、私の幸せを願ってくれているのに…。
ゲームの中の時は止まったまま。
でも、もうそろそろ先に進まなきゃ。
私も政宗の幸せを願うよ。

私は溢れ出した涙を拭って、PS2を起動させた。
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