馬に乗り、楽しそうに唇の端をつり上げて笑うその笑顔が懐かしい。
そっと手を伸ばして、指先で画面に触れても、冷たく固いテレビに触れるだけで、政宗は私に笑いかけない。
それでも、こうして政宗に会うと、想いが溢れ出す。
やっぱり政宗が好きで堪らない。
私は食い入るようにOPを見ると、天下統一モードを選んだ。
不敵に笑った政宗を選ぶと、懐かしい声で「Okay, are you ready?」と言う。
目を閉じれば、まだ政宗の甘い囁きが思い出せる。
どうしようもなく恋しくて堪らないけれど、私にはやらなければならない事があった。
政宗と約束した「決して討ち死にさせない」という事。
私は滲み出した涙を拭って、お茶を入れたポットをテーブルの上に置いた。
今夜は長丁場になる。
政宗の夢を一緒に叶えるために。
北から順に敵を倒していく。
私の指示通りに動いていく政宗は、どこか遠くの世界の人のように感じられた。
それでも、相変わらずやんちゃで溜め息が出るほどカッコいい。
戦場を駆け回る政宗は嬉々としていて、どこか微笑ましかった。
あの頃浮かべていた憂いの表情がまるで夢ではなかったのではないかと思える。
それを少し寂しく思いながらも、やっぱり政宗には不遜な態度の方が似合うと思った。
島津まで攻めて行った頃には、感傷は薄らぎ、夜が明けたのか、窓の外が薄っすらと明るくなっていた。
政宗を討ち死にさせる事なく、天下統一を成し遂げると、何だか張り詰めていた気が緩んだ。
「政宗、天下、取れたね。おめでとう」
そう呟いても政宗からの返事はない。
やはり、政宗はゲームの世界に帰ってしまって、もう二度と私の世界とは交わる事はないと思うと、一年前の別れを思い出す。
あれが最後の別れだと思っていたけど、もしかしたらこれこそが最後の別れだったのかも知れない。
あの時以上に、私は政宗と住む世界が決定的に違うのだと思い知った。
もう思い出に縋るのも止めた方がいいのかも知れない。
あれは夢だったんだ。
ぼんやりとそんな事を思っていると、エンディングロールが終わった。
セーブをして、別れを告げるように、もう一度政宗の姿を見ようとストーリーモードの政宗を選択する。
小十郎と政宗の掛け合いを見て、何となく離れがたくてあと少しだけとばかりに出陣しようとすると、第弐衣装が見られる事に気付いた。
興味を引かれて、第弐衣装を選ぶ。
私は驚きに目を瞠った。
政宗の胸元には、私と分かち合ったロケットが揺れていた。
何度も目を擦ってみても、胸元にロケットが揺れているのは変わらなかった。
自分の胸元に揺れているロケットをギュッと握り締める。
政宗は約束を忘れていなかった。
ゲームの世界に帰ってしまったら、それで私達の想いが終わる訳ではなかった。
ゲームの中で生きている政宗は、紛れもなく私が愛した政宗なんだ。
そう思うと愛しさと恋しさが溢れ出して、私はテレビの画面に触れて涙を流した。
思い出にしようとしてゴメン。
私達の愛を夢の中の出来事にしようとしてゴメン。
政宗は約束を守ってくれたね。
離れてしまっても愛してくれるって。
「私も約束するよ。ずっと政宗だけを想ってるって。もう政宗を疑わないから…」
そう呟いて、私はまた涙を流した。
「遙、ずっとお前だけを愛してる」
政宗のそんな声が聞こえたような気がした。
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