節々が痛んで、頭が割れるように痛い。
漏れる吐息の熱さに相当熱が出ていると見当をつける。
早く起きなければ遙が心配する。
身体を起こそうとする意思とは裏腹に、身体には力が入らず、俺の意識は再び浅い眠りへと沈み込んでいった。
俺は夢を見た。
支離滅裂な場面の断片の夢。
疱瘡を患った俺を心配そうに見つめる優しい母上。
眼球の飛び出した俺を化け物と罵る母上。
母上に毒を盛られ、苦しむ夢。
止めてくれ。
こんなの見たくねぇ。
俺の意思とは裏腹に夢は続く。
戦で敗走し、追手に成実が斬られた。
そして、俺を守るように走っていた小十郎が、俺を先に行かせる。
小十郎が残るなら俺も、と言い張ったら、頬を思いっ切りはたかれ、城主の務めを忘れなさるなと言い置いて、敵陣へと走り去っていく。
みんな、俺を置いていく。
小十郎に背を向けて、走って走って。
背後から小十郎の断末魔が聞こえて振り返ると、そこは戦場ではなく、何もない白い空間だった。
淡い光に包まれた空間で、女が顔を覆って泣いている。
あれは、遙だ。
「遙……?」
初めて出会った時も、ああいう風に一人で静かに泣いていた。
つい2日前だって、俺の腕を振りほどいて、姿を消したと思ったら、隣りの部屋で泣き疲れて眠っていた。
遙はしゃくり上げながら、座り込んで肩を震わせて泣いている。
「どうして…っひっく…どうしてみんな私を置いて行くの…?」
遙、俺はここにいる…!
すぐそこに行くから、だから泣かないでくれ!
俺は、ここだ!
声を限りに叫んでも、遙の耳には届かないのか、遙は顔を覆って静かに泣いている。
俯いて震える遙をこの腕で抱き締めたくて。
遙のもとに駆け寄りたいのに身体が動かない。
「**も、政宗も、私が愛した人はみんな私を置いて行く…」
涙で震える声で呟いた言葉に俺は凍り付いた。
遙が俺を好きと言ってくれた喜びよりも。
遙と結ばれてしまったら、避けられない別れの後、遙はこうして独りで涙を流すに違いない。
その事実に俺は打ちのめされた。
抱き締めて慰めたいのに俺にはそんな資格はない。
俺は近い将来、遙の前から姿を消す。
永遠に…。
遙のもとに歩み寄る事も出来ず、言葉を発する事も出来ずに立ち尽くしていると。
いつの間にか、遙の手には短刀が握られていて。
これから起こる事を悟って身体中から血の気が引いていく。
「止めろ、遙!頼む、止めてくれ!」
俺の叫びも虚しく、遙は白い首筋に刃を突きたて、周囲に鮮やかな血が華を咲かせたように飛び散る。
その瞬間、俺は絶叫した。
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