唇が離れた瞬間、紗夜歌の口から漏れたその名前にやはりと思いつつも衝撃を受けてしまう。
愛しい女は自分に両手首を布団に押し付けられ、顔を横に向けて震えている。
初めて見る肌は白く、しかし、着物の上からわからなかった部分には、無数の赤い華が薄っすらと咲いていた。
紗夜歌が小十郎のものだという証……。
その事実が政宗の胸を締め付ける。
わかっていた筈なのに……。
それでも尚、行灯の柔らかい光に照らし出された彼女の肢体は美しかった。
「綺麗だぜ、紗夜歌……」
「いやっ!!見ないで!!」
政宗は一体どんな気持ちで自分のことを綺麗だと言うのだろう。
小十郎が刻んだこの所有印を見て尚。
政宗にだけは見られたくなかった。
何故なら、政宗のことも好きだったから…。
政宗に再び触れられて、初めて気付いた。
本当にこの子の事が好きだったと。
その温もりを慈しんでいたと。
ただ、このようなことは決してあってはならない。
小十郎さえいればこのようなことは起こらなかっただろうと。
そう思うと、涙がこみ上げてくる。
お願い。私の心をかき乱さないで。
私は小十郎を愛しているのだから。
「…っ……小十郎っ……小十郎っ……」
はらはらと涙を流しながら小十郎の名を呼ぶ紗夜歌の頬に政宗はそっと口付け、露になった耳元で囁いた。
「紗夜歌…Please call my name…please…」
その弱々しい声音に紗夜歌は思わず政宗の方を向いた。
その顔は今までに見たこともないほどに。
切なげに眉が顰められていて苦しそうで。
そんな政宗は見たことがなかった。
自分にふられた時すら余裕の笑みを浮かべていたのに。
その笑みが消えている。
「……まさ…むね……?」
その切なそうな表情に変わりはなかったけれど。
政宗の瞳にかすかに優しげな色が燈った。
「紗夜歌……愛している……」
苦しそうに、愛しそうに囁かれた言葉が胸を締め付ける。
ここまで政宗を追い詰めたのは私……?
でも、何故今更……。
もう、私は政宗を愛することは許されないのに…。
もう全ては手遅れなの…。
それならばいっそあの時…。
そう思うと、傷つけてしまうのはわかっているのに溢れる言葉を止められなかった。
「なら、何故あの時無理矢理にでも奪ってくれなかったの!?そうしたらきっと、私、政宗を愛せたのに…!!私も政宗を愛したかった…!!」
「紗夜歌っ!!」
堰を切ったような紗夜歌の告白に、政宗は最早衝動を抑えることが出来なかった。
今なら…。
今からでも…。
今夜だけは…。
紗夜歌を自分だけのものにしたい…。
政宗は紗夜歌の指に己の指を絡めるようにして手を握り、布団に押さえつけ、片方の手ですべらかな肌に愛撫を施しながら、荒々しく口付けた。
「んっ……ぁっ……はぁっ……」
びくりびくりと身体を震わせながら、その刺激に耐えるように政宗の手を握り返すのが愛しくて堪らない。
繋いだ手の温もりが、冷たい指先だけではなく心まで温める。
紗夜歌とこうして触れ合うことにどうしようもないほど心が昂ぶる。
もう、この思いを抑えることなど出来ない。
唇を首筋に移し、舌を這わせて時折吸い上げると、震えながら耐え切れないように紗夜歌の唇から嬌声が上がった。
「やっ……ダメっ…はぁっ……ぁっ…ぁあん……」
その甘い声に、身体の中から熱がせり上がって来る。
もっとその声を聞きたい…。
心に刻み付けて、一生忘れないように…。
もう、紗夜歌を抱くことはきっと出来ないだろうから…。
柔らかな胸を揉みしだき、頂を摘んだり転がしたりして刺激を加えると、紗夜歌は啜り泣くような声を上げて首を左右に振った。
甘やかな吐息が熱を帯びている。
空気を求めるように喘いでいる姿は、夢に見たほど艶めかしく、愛しく。
紗夜歌の首筋に埋めていた唇を徐々に下の方へずらしていく。
柔らかな胸の頂を唇に含むと、舌でつついたり、甘咬みしたりする。
堪えきれないように、紗夜歌が政宗の髪の毛に手を差し入れた。
押し止めようとしているのだろうか。
しかし、それは政宗を誘っているようにしか思えない。
繋いだ手に指を絡ませるように紗夜歌がぎゅっと握ってきた。
全てが愛しくて、紗夜歌の声がもっと聞きたくて、口で愛撫を施しながら、片方の手でもう一つの頂を執拗に攻めた。
「ぁっ……やっ……はぁっ……ぁっ…んっ…はぁん…」
びくりびくりと身体を震わせながら、腰が揺らめいている。
その膝を割って、政宗は身体を滑り込ませた。
強い刺激を受けるたび、無意識に紗夜歌の足がきゅっと政宗の腰に絡みつく。
紗夜歌が反応するたびに、身体に燈った熱は否応なしに高められていく。
すぐにでも繋がりたい欲求に抗って、政宗は、紗夜歌のすべらかな肌の上に唇を這わせていった。
そして、小十郎が咲かせた赤い華の上に口付け、吸い上げる。
「ああんっ……!!」
止めさせなければならないのに。
与えられる快楽に翻弄されてままならない。
肌を吸い上げられる心地よさに意識が軽く遠のく。
本能的に、より快楽を求め、もっと強く吸って欲しいと願ってしまう。
でも、このままでは肌に痕がついてしまう。
それを小十郎に知られたら……!!
「ぁっ…ダメっ…痕が……!!」
「小十郎のつけた痕の上にしか付けねえよ。Don’t worry」
小十郎の咲かせた華は、胸、腹、背中、太腿に渡っており、その一つ一つをなぞるように、政宗は新たな華を咲かせていく。
紗夜歌が逃げようとしても、体格のいい政宗に押さえつけられそれも叶わない。
しなやかな長い腕が身体に巻きつく。
雨に濡れて冷たかったその腕は、今は熱を帯びたように温かく。
この腕を手放さなければ、政宗が苦しむことはなかったのに…。
自分もその温もりにいつまでも溺れられていたのに…。
それが苦しくて、哀しくて。
拒まなければ…。
でも、もう少しだけこの温もりを感じていたい。
相反する気持ちに、混乱してしまう。
政宗を拒もうと、背に立てた爪は、いつしか縋り付くようになっていて。
身体を反転させられ、背中に小十郎の咲かせた華を丹念に上塗りしていく政宗の腕の中で翻弄され、快楽に身体を震わせ、喘ぎながらぎゅっと寝具を握り締めることしか出来ない。
背中に唇を這わせながら、政宗は執拗に胸を揉みしだき、最も敏感な頂を攻める。
意識に紗がかかり、甘い喘ぎ声を上げながら、足の付け根がじんじんと熱を孕み、濡れてくるのがわかった。
お願い、これ以上はもう……。
しかし、身体が逃げると、すぐに力強い腕に引き戻されてしまう。
胸に、腹に、背中に、太腿に、小十郎が咲かせた華の上に、新たに朱を散らすと、政宗は紗夜歌を正面から抱き締め、また唇を奪った。
完全に上がった息の中、苦しそうに紗夜歌が身を捩る。
もっと乱れさせたくて、政宗は紗夜歌の首筋に顔を埋め、甘咬みをしながら、手を紗夜歌の内股へと滑らせていった。
「やっ…!!政宗!!そこはっ……!!」
足の付け根をそっと指でかき分けると、ぬるりと温かな粘液が指に絡みついた。
自分を感じている紗夜歌が愛しくて堪らない。
「お願い!!これ以上は……!!」
「Sorry, honey。もう止められねえ」
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