政宗は、その温もりを心に刻み付けるかのように、紗夜歌の全身に口付けの雨を降らし、何度も何度も抱いた。
その瞬間、確かに二人は繋がっていた。
幾度もの絶頂を迎え、憔悴しきって政宗の腕に紗夜歌はおとなしく抱かれていた。
その頬に、鼻梁に、瞼に、唇に、政宗が飽くことなく唇を落としていく。
ふいに紗夜歌が口を開いた。
「この夜が終わる前に……城に帰って」
「紗夜歌……」
「もう、私のことは忘れて。忘れられないというのならもう城には行かない。政宗は正室も側室も迎えなければならないんだから」
ずっと怯えるように逸らされていた視線が真っ直ぐに政宗に向けられている。
その瞳は真剣だ。
きっと紗夜歌は本気で言っている。
もう、二度と会えないというのならば…。
「I see。あんたのことは諦める…。だが、最後に一つだけ俺の望みを叶えてくれ」
「……何?」
「……嘘でもいいから、愛していると言ってくれ……please……」
紗夜歌の瞳が揺れる。
しばらく政宗を見つめた後、すっと目を閉じて再び目を開くと、その表情を和らげ紗夜歌は口を開いた。
「政宗……あなたを愛している……」
「紗夜歌っ!!」
その表情は、嘘とは思えないほど愛しげで。
政宗は再び紗夜歌をかき抱き、口付けた。
その胸を紗夜歌が押し返す。
「城に帰って。お願い…」
再び紗夜歌の瞳が涙で潤み始める。
政宗はその頬をすっと撫でて身体を漸く離した。
出来ればその愛しげな眼差しのまま別れたい。
政宗が着物を身につけている間ずっと、紗夜歌は布団の中で蹲っていた。
着替えが済むと、政宗は紗夜歌の夜着を拾い、紗夜歌のそばに跪いた。
「これ、もらっていくぜ」
「うん…」
「じゃあな」
頬に名残惜しげに口付けを落とすと、政宗は部屋を出て行った。
その後を紗夜歌は追い、政宗の姿が闇に消えるまでずっと見つめていた。
政宗の姿が消えると、紗夜歌は膝から力が抜けたように、床に座り込み、声を殺して泣いた。
「政宗っ……愛してるっ……!!」
零れた涙が畳に染みを作っていった。
政宗は城に戻り、濡れた着物を脱ぐと夜着に着替え、紗夜歌の夜着を胸に抱き、布団に入った。
自分の髪の毛からも、紗夜歌の着物からも、紗夜歌の香りがする。
忘れることなど出来ない。
胸に残る温もりも、奪った唇も忘れはしないから。
最後に囁かれた愛の言葉を胸に、紗夜歌の香りを抱き締め、眠りにつきたい。
その言葉はきっと偽りだろうけれど。
この想いが実る事はないけれど。
忘れたくなどないから…。
届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ……。
Fin…
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