思わず固まった後、俺は携帯を構えて写真を撮った。
俺を振り返り、長い髪をかきあげながら満面の笑みを浮かべている。
やっと、あいつの笑顔が撮れた。
きっと今なら……。
俺は携帯をジーンズのポケットに入れて紗夜歌に駆け寄った。
政宗は駆け寄るとじゃれつくように私の肩を抱いた。
それは子供の頃に戯れていたのと同じような感覚で。
自然と笑みが零れた。
「仕切り直しだ。一緒に写真撮ろうぜ」
「うん、いいよ」
頬を寄せ合い、政宗の携帯のカメラを見つめ、笑う。
「カシャリ」
政宗が、撮った写真を確認する。
「Sweet。上出来だぜ。あんたにもメールしておいてやるよ」
「ありがとう。あ、でもさ。携帯の写真って機種変したら見られなくなるじゃん?私、ポラロイド持ってきたんだ。おじさんの家にあったから、フィルム買って来たの」
「へぇ、面白そうじゃねぇか。レトロでいいな」
「でしょ?取ってくるから待っててね!」
私がバッグを漁り、ポラロイドカメラを取り出して政宗を振り返ると、政宗は白いシャツを海風に靡かせて、茶色がかった髪をかきあげて沖の方を眩しそうに見ていた。
その姿があまりにも絵になっていて。
私はそっとその姿をカメラに収めた。
宝物にしよう。
まだ画像が浮かび上がっていないその写真をバッグに入れると、カメラを持って私は政宗に駆け寄った。
ジーンズの裾を膝まで捲り上げて、二人で海に入る。
海水はとても冷たかったけど、服が波で濡れないかというスリルでどうしようもなくはしゃいでしまう。
政宗がおどけたように、雑誌モデルのようなポーズを取るので、私はおかしくて思わずたくさん写真を撮ってしまった。
いちいち様になっているところにどうしようもなくときめいてしまったけれど、政宗が冗談めかしているので、笑ってしまった。
政宗も私のカメラを取り上げ、カメラマンのようにポーズの指示を出す。
ブーブー文句を言うと、海水を蹴り上げて水をかけてくるので、私は仕方なしに政宗の言うとおりにポーズを取った。
また二人で肩を寄せ合い、写真を撮る。
フィルムを3本使いきろうというところで、急にあたりが薄暗くなってきた。
さっきまで真っ白だった入道雲が濃い灰色に染まって稲光が見える。
少し遅れて遠雷が聞こえる。
「Shit、まずいな。一雨来そうだぜ。行くぞ」
政宗は私の手を引いて走り出した。
二人でビニールシートを畳んで政宗のリュックにしまう。
政宗は着ている白いシャツを脱いでリュックに入れた。
雷が段々と近づいてきた。
ぽつりぽつりと大粒の雨が降り出す。
肩にリュックと私のバッグをかけると、政宗は私の手を引いて自転車の方へと駆け出して行った。
自転車に乗った頃にはもう、雨はかなりの勢いになっていた。
「もう少しの辛抱だ。ここから1分のところに喫茶店がある」
政宗は勢いよく自転車を走らせた。
落ちないように私もしっかりと政宗にしがみつく。
夕立はあっという間に私達の服を濡らしていった。喫茶店に着いたころには私達は濡れ鼠になっていた。
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