繁華街の、路地を入ったところにあるそのレストランは、路地の汚さとは裏腹に、西欧の家庭料理風のコケティッシュな外装だった。
レストランの入り口には店名のプレートがかけられている。
『注文の多い料理店』
まるで、宮沢賢治の小説みたいだな、と思わず笑みが零れる。
ドアを引くと、カランカランとベルが鳴った。
「いらっしゃいませ」
柔らかな女の人の声で出迎えられる。
裾の長いメイド服を着たウェイトレスが廊下の左側の部屋から現れた。
「お客様、ご予約は?」
「あの…伊達で予約していると思うのですが」
「畏まりました。コートをお預かり致します。こちらへどうぞ」
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