注文の多い料理店 -5-

ドアの向こうには、想像していたような、ダイニングテーブルなどはなく。
いや、あることにはあるけれど、大きなダイニングテーブルが奥に一つだけで、その手前の広い空間には、大きな革張りのソファと、ガラスのテーブルがその前に置かれていた。
そして、その革張りのソファに、タキシードを着た政宗が長い脚を組んで座っている。
というか、政宗以外、この部屋にはいない。

私は頭に疑問符を浮かべながら政宗に近寄った。

「Oh〜, honey. 俺の注文どおりだな」
「は?」
「脱がせやすい服に乱しやすい髪形。綺麗だぜ」

政宗が私の頭のてっぺんから足元まで視線を往復させて、満足そうにニヤリと笑った。

「政宗、冗談でしょ?一緒に食事に行こうって言うから来たんだよ?会員制のレストランのVIPルームってこんな感じなの?」
「Ah〜、まあな」

広い部屋には、私達二人しかいなくて、何だか落ち着かない。

「ねぇ、政宗。普通のレストランで良かったのに。何だか広いし、高級そうな内装だし、落ち着いて食事出来ないよ」

そう言うと、政宗は至極楽しそうにニヤリと笑った。

「No worries. 別にあんたは食べなくてもいい」
「は?」

政宗が何を言っているのか分からなくて私は政宗をきょとんと見つめた。

「俺があんたを食うんだよ」

次の瞬間、政宗にぐいと腕を引かれ、気付いたら、ソファの上に押し倒されていた。
私の手首を頭上で纏め上げてソファに縫いとめて、ドレスのスリットから手を差し入れて、ゆったりと愛撫する。

「楽しませてくれよ」

唇の端をつり上げた政宗の目は愉しそうだった。

政宗の腕の中で乱されながら思う。
このレストランの名前…。
ただ、名前を借りているだけじゃなくて、本当に『注文の多い』料理店だったのだと。

そして、食べられるのは私。
甘く甘く料理されて、政宗に食べられる。

ああ、こんなことなら。
店名を見た時に引き返せばよかった。

「フルコースのディナーだからな。ゆっくり味あわせてもらうぜ」

その言葉通り、政宗は、何時間もかけてゆっくりと料理を味わったのだった。



Fin……


アトガキ

突発で思いついた童話ネタ。
何か、化け猫が政宗様だったら食われてもいいと思いました。
ああ、私、壊れてる(いつものことだけど)。
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