Because I love you -6-

紗夜歌の反応が薄い…。
俺は唇を離し、じっと紗夜歌を見つめた。
紗夜歌はくすりと笑った。でも、その瞳は酷く優しげで。
俺は怪訝そうに片眉を吊り上げた。
紗夜歌は俺を受け入れてくれるのか?それとも……?

「政宗、がっつきすぎ。まだまだ若いね」
「何だよ、それは…」

不服そうに口を開いた俺の唇を紗夜歌は親指でそっとなぞった。
ゾクゾクする。

「Close your eye, and don’t move, okay?」

そう柔らかい声で告げられて。
わけがわからない。
でも、俺は言われた通りに目を閉じた。
紗夜歌が俺の髪の毛に手を差し入れ、頭を引き寄せる。
そして、軽く啄ばむような柔らかい口付けをしてきた。
じれったいが酷く甘い。
心が蕩け、熱い想いが溢れ出しそうだ。
俺は求めるように紗夜歌を抱き締める腕に力をこめると、もっと深く繋がりたくて紗夜歌の唇を求めた。
すっと紗夜歌の顔が離れる。

「政宗、less tongue, you see?(舌は控えめにね?)」

唇にかかる吐息は甘く。
弧を描いた唇は艶かしく。
俺は軽い眩暈を覚えた。
紗夜歌は俺の背中に腕を回し、ぽんぽんと叩いた。

「はい、キスのレッスンはこれでおしまい」
「Huh!?レッスン!?何だそりゃ!?」

紗夜歌は困ったような笑みを浮かべた。

「んーと、その…。私を愛してくれてありがとう。そのお礼かな?」
「………あんた、俺のこと好きだろう?」
「好きだけど………。More than like, but less than loveってところかな」
「Ha!!そういうことか……」

みっともねえ。
だが惚れた女に想いを伝える事が出来た。
それだけで充分だ。
例え愛されていなくても。
More than like, but less than loveか……。
普通の『好き』よりも心を寄せてくれているだけでもいい。
紗夜歌が俺を断る理由なんて一つしか思い浮かばねえ。

「小十郎か……?」
「ええっ!?なななななな何で!?」

さっきまで余裕の笑みを見せていた紗夜歌が慌てふためく。
やっぱりな…。

「あんたを見てたらバレバレだ。小十郎が来ると逃げ出すくせに、いつも目で追っていやがる」
「そっか……。バレてたんだ……」
「惚れた女のことだ。俺をなめんなよ。あんたがあんまりじれったいから俺のものにしようかと思ったが、心までは奪えねえ。I give up」

俺はもう一度軽く触れるだけの口付けを紗夜歌の唇に落とすと身体を起こし、立ち上がった。
きっとこれが最後のkiss……。
名残惜しい気持ちを、何度でもその唇を奪いたいという気持ちをぐっと堪えて俺は余裕の笑みを浮かべた。

「だが、あんたを手放す気はねえからな。あんたは帰れるまで俺だけのEnglish teacherだ」
「うん、わかった…」

紗夜歌はホッとしたように微笑んだ。
また以前のような関係に戻れる。
それは今までとは距離を置いたものになるだろうけれど。
俺はそう確信した。でもそれだけで充分だ。

「Okay。See you later」

俺はひらひらと手を振ると、紗夜歌の部屋を後にした。
やらなければならないことがある。
もう一人のじれったいやつを焚き付けなければ。
俺は小十郎の部屋に向かった。
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