Bitter Sweet Chocolat -1-

溜息を吐いて時計を見上げると、もう、12時を過ぎていた。
プロジェクトに加えてもらったのが1月。
それから、ずっと休みなしのような気がする。
入社して初めて任された大きな仕事を成功させたくて。
私は、持ち帰れる仕事は持ち帰り、度重なるミーティングのためのスライドを作っていた。

「もうこんな時間。寝なきゃ…」

ここのところ、睡眠時間が5時間ほどしか取れていない。
元々7時間は寝ないと持たない身体だから、正直キツい。
私はファイルを保存し、欠伸をしながらベッドに倒れこんだ。
そして、携帯のアラームをセットしようと、携帯を開くと、メールの着信がある。
メールを開くと、政宗だった。




2008/02/13
Fm:政宗
Sub:Do you remember?

Do you remember what the date tomorrow is?
期待してるからな。




明日?
明日って何だっけ?
朝にミーティングがあって、その後、取引先の会社でプレゼンをする予定だけど…。

しばらく考えて、私は、血の気がさっと引いていく思いがした。

しまった……!!
明日は、乙女の聖なる日。
バレンタイン・デーだ!!

ここのところ、どこにも寄らず会社から直接帰って来ていたので、すっかり忘れていた。
地下鉄の中吊り広告で、そう言えばバレンタインが近いなと思ってはいたのだけれど、明日だなんて!!

今まで、特に学生時代は奮発して、手作りのチョコレートケーキを作って政宗と小十郎にあげていた。
カカオをたっぷり入れて、甘さを控えめにした、ラム酒入りの少しほろ苦いチョコレートケーキ。
去年はまだペーペーで暇だったから、作ってあげていた。
今年は連日帰宅は10時を過ぎていて、その後、仕事を家でもしていたのだから、そんな暇はなかった。
というより、忘れていた。
チョコレートすら買っていない。

ヤバい。
これはヤバい。

政宗にも、と思うけれど、明日、会社で義理チョコを私だけ渡さないという事態になる事の方が恐ろしかった。
政宗のメールにグッジョブ!!と思いつつ、明日の行動の算段をする。
とりあえず、昼休みにチョコレートを買いに走るしかない。


政宗には…。


思わず溜息が漏れる。
学校でもらってきたバレンタインのチョコの数を一通り数えると、紙袋にごそっと入れて、私のおやつに、とくれていた。
そして、私の作ったケーキを、丁寧に紅茶を入れて、嬉しそうに食べていたものだった。

それを忘れるなんて……。
きっと今年も楽しみにしていたのに…。
ケーキを食べる、政宗の笑顔が堪らなく好きだったのに……。

仕事をするようになって、少しずつ政宗との距離が空いていくような気がして。
それが、酷く寂しかった。

手作りじゃないけれど。
もし、明日早く帰れそうだったら、どこかでおいしいチョコレートを買って帰ろう…。
政宗、ごめんね……。

政宗に申し訳なくて、何とメールを返したらいいのか分からず。
アラームをセットして、政宗のメールを眺めながら思案しているうちに、私はいつの間にか眠ってしまった。
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