政宗様と何があったか分からないが、あの血相を変えた様子では何かあったに違いない。
それとも男の部屋に出かけたと聞いて、心配になっただけなのか。
俺にとって政宗様が弟のように大切なように、あの男にとっては妹が大切なのだろう。
確かにあの娘は愛されて育った顔つきをしている。
家族の愛情が欠乏していた政宗様が惹かれるのも分かる。
どんなに政宗様を大切に養育したつもりでも、やはり俺は所詮他人なのではないかと思う事がある。
俺はあの男が妹を大切にするように政宗様を大切にしているだろうか。
甘やかしてはいないだろうか。
今更ながらに嘘を吐いた事に罪悪感を感じ、俺は政宗様の様子を見に行く事にした。
嘘を吐いた以上、あの男の信頼を裏切る訳には行かない。
俺は政宗様の部屋に向かった。
足音を立てないように静かに部屋の前まで行くと、ドアをノックしてすぐに間髪を入れずドアを開けた。
二人は仲良く座卓に向かって座り、ノートに落としていた視線を驚いたように上げて俺を見た。
「小十郎、どうかしたか?」
「いえ、来客があったのでご報告に」
「追い返したんだろ?後で聞く」
二人はずっと勉強していた様子で、俺の心配していたような事は何も起こっていなかったと安堵しかけたその時。
彼女の首筋に赤い虫刺されのようなものを数ヵ所見付けて俺は思わず声を上げた。
「ままま、政宗様!!無茶はなされるなとあれ程!」
全く、この小十郎が目を離したのはたったの20分ほどだというのにこの御方は…!
政宗様は、きょとんと俺を見つめ、それから彼女に視線を移すと合点がいったように頷いた。
「ああ。心配するような事は何もねぇよ。ちょっとkissしただけだ」
笑いながら言う政宗様に彼女が慌てる。
「ちょっ、政宗、何て事言うの!!」
真っ赤に顔を染める彼女に、本当にキスだけだったのか本気で心配になる。
「本当にキスだけでしょうね」
業とキツい視線で二人を交互に見遣ると、彼女は恥ずかしそうに頷いた。
彼女は嘘は苦手そうだから事実なのだろう。
でも、一体何て事をしてくれたんだ!!
しおりを挟む
top