渚のシンドバッド -5-

「お嬢、彼氏とラブラブっすね。アニキ、作戦Aは失敗っすね。すいませんでしたっ!」
「はぁ…だから言っただろ?あいつにやきもち妬かせてもどうにもなんねぇって。むしろ逆効果だ」

お嬢はアニキLoveだからやきもち妬かせればヒヨコみたいに後をついてくると舎弟に言われ、ガキじゃあるめぇし、んなわけねぇだろと言いつつ、言い包められるままに決行した作戦A。結果は惨敗。
あいつのキスシーン見せられるとはな。
二人共幸せそうだったし、清い雰囲気だったから目を瞑るか。
俺は軽く頭を振って振り返った。

「野郎共!気合い入れて波に乗るぞ!」
「「「おーっ!」」」
「鬼の名前を言ってみろ!」
「「「モ・ト・チ・カ!!」」」

雄叫びにテンションが上がっていく。
今日はあまり波が高くないからロングボードで正解だ。
もう少し波が高いともっと楽しめるんだが。

そんな事を思いながら沖に漕ぎ出そうとすると、舎弟に呼び止められた。

「アニキ!次は作戦Bっすよ!」

俺は呆れて溜め息を吐いた。
確かに邪魔してやりてぇのはやまやまだが、裏目に出ては困る。

「お前ぇ、まだそんな事言ってんのか?」
「今度は大丈夫っス!アニキの華麗なボード捌きでお嬢の心を引きつけるっス!アニキのテクでお嬢はメロメロになって、一緒にサーフィンしたいって言うに決まってるっス!」

まあ、作戦Aよりはまともだな。
元々サーフィンしに来た訳だし。

「分かった分かった。お前ぇの気持ちは嬉しい。要はいつも通りサーフィンしてればいいんだろ?やってやるぜ」
「流石アニキ!」
「「アニキー!!」」

アニキコールが沸き起こって、悪い気はしねぇ。
そのまま俺はパドリングして行った。


サーフィンしながらも、妹と独眼竜の様子を伺う。
二人は仲良く波間を漂っている。
肩から上しか見えねぇから、何をしてるか分らなくて不安に駆られる。
まあ、妹は分かりやすい性格だから、いかがわしい事をされたらすぐに顔に出るからまだ何もないんだろう。
優しく頭を撫でられたり、肩を抱き寄せられたりって程度みたいだ。

心配のし過ぎか。

俺は、いい波が来た事に気付き、その波に乗った。
浜辺から歓声が上がる。

今は全てを忘れて波に乗ろう。
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