何で政宗がここにいるの!?
振り返ると、政宗は眉間に深い皺を刻んで私を睨み付けていた。
学校で睨みを利かせている時に見かけた表情ではあるけれど。
そんなの比べ物にならないくらい政宗は怖い顔をしていて。
まずい。
これはまずい。
一番やばい人に一番やばいところを見られた!!
私は思わず救いを求めるようにアニキを見上げた。
アニキはニヤリと笑って政宗を真直ぐに見据えている。
「よう、独眼竜。部屋に入る時はノックぐらいしろよ」
ちょっと、アニキ、火に油注ぐようなこと言わないでよ!!
「Shut up!てめぇこそ人の女に、それも妹に手ぇ出してんじゃねぇ!」
政宗はイラついたように言い放つと、つかつかと私に歩み寄り、私の腕を強く引いた。
「いつまでも他の男の腕の中にいるんじゃねぇ!」
「ちょっ、政宗!聞いて!!」
「聞きたくねぇな」
私を引きずるようにアニキの部屋から出ると、隣の私の部屋のドアをバタンと開け、中に入る。
そして、私を抱き上げると、どさりとベッドの上に降ろす。
その衝撃に目を瞑ると、顔の横にどんと手が付かれる。
私の顎をくいと持ち上げると、政宗は私を正面から睨み付けた。
「あんた、いつも兄貴とあんなことしてんのか?ァあ!?純情そうなツラしてヤることやってんだなァ。言えよ。いつも兄貴にどんな風に抱かれてんだ?」
「抱かれてなんて……」
「Ha!口では何とでも言えるからな!直接身体に聞いてやる」
政宗は片手で、ブラウスの襟元を力任せに引いた。
ボタンがはじけ飛んで、ひやりとした空気に肌が触れる。
下着を押し上げて、胸に触れると、政宗は頂をこねるようにしながらもみしだいた。
今まで感じたこともない、奇妙な感覚がぞくぞくと身体を走り抜ける。
政宗を押しとどめようと、手を重ねると、手首をつかまれ、頭の上に固定されてしまった。
政宗が首筋に顔を埋めて、唇を這わせる。
「ひゃっ……ちょっ……!!」
「いつもみたいにいい声で啼いてみろよ」
いい声って、見たことないけどアダルトビデオみたいな声?
無理無理!!
そんな声出るわけないから!!
首筋に触れる政宗の唇がくすぐったくて。
胸を揉まれて、何だか身体の奥が熱くなってきて。
何だか怖い。
「ねぇ、政宗っ!!やめてっ!!お願い!!」
「そんなに兄貴がいいのか!?」
「ちがっ!!……っ…うっ……ひっく……」
このまま政宗に犯されるようにして抱かれてしまうのが悲しくて。
政宗とは少しずつ段階を踏んで深い関係になって行きたかったから。
どうしたら止めてもらえるのか分からなくて。
涙が出てきた。
「ううっ……初めてがこんなのなんて、ひどいよ……」
ぴくり、と政宗の身体が動き、愛撫が止まる。
そして、私を見つめた。
「どうしたらいい声で啼けるかなんてわかんないもん。誰も教えてくれなかったもん。気持ちいいってどういうことかもわかんないもん。キスだって……。分かんないからアニキに聞いてたら……」
政宗の目が見開かれる。
「What!?兄貴にkiss!?Why!?」
「だってだって!!ファーストキスは特別だもん!!失敗したくなかったんだもん!!上手くいかなかったら政宗に嫌われちゃうと思ったんだもん!!」
政宗はしばし放心したかのように固まった後、深い溜息を吐いた。
「兄貴とkissしたら、first kissじゃねぇよ」
「家族はノーカウントだもん!カウントしたら、私のファーストキス、1歳くらいだもん。もしかしたら0歳かも知れない。そんなのヤダっ!!」
ぐすぐすと泣いていると、政宗が拘束していた手を離して、親指で私の涙を拭う。
「政宗とのファーストキスはね、特別なの!!だからっ、だからっ……」
「Alright, allright. 分かったから泣くな」
政宗は私の上から退くと、隣にごろんと横になり、私を抱き締めた。
そして、優しく優しく背中を撫でてくれる。
少しずつ涙が止まっていって、呼吸が落ち着いていく。
政宗は私の髪をゆっくりと梳きながら口を開いた。
「さっきは悪かったな。でも、お前も悪い。俺に醜い嫉妬をさせるな。本当は、昨日kissしようとした時点で、お前が誰にもkissされたことがないことぐらい分かってた。お前が大切だから。今まで手を出せなかったんだよ」
政宗はそこで溜息を吐く。
「だが、よりによって兄貴なんかに唇奪われやがって。Kissの仕方が分からなかったら、俺が教えてやる。男に抱かれる悦びも全部。お前はそのまんまでいいんだ」
髪を梳いていた手を止めると、政宗は私を上向かせた。
政宗の切れ長の目がすっと伏せられて。
ああ、睫毛長いな、なんて見蕩れてると、政宗が苦笑いをする。
「兄貴に教わんなかったか?kissする時くらい、目ぇ閉じろって」
「あ……。ゴメン。言われたけど…。こうして近くで見ると、政宗って睫毛長くて綺麗だなって見蕩れてたら、忘れてた」
堪えきれないというように政宗がくつくつと笑う。
「お前はやっぱり可愛いな。もう少しこのまま清い関係でいるか。穢すのがもったいねぇ」
「でも……kissくらいしたいな……」
そっと政宗の胸に頬を寄せて呟くと、政宗がフッと笑う。
「じゃあ、目ぇ瞑ってろ」
言われるままに、目を閉じると、少し冷たい唇が柔らかく唇に触れた。
ゆっくりと啄ばむように口付けられ。
冷たかった唇が少しずつ熱を帯びていく。
やっぱり好きな人とのキスは兄貴とのキスと違う。
比べ物にならないくらい、何だか身体がふわふわとして。
唇を吸い上げられると、自然と鼻にかかった甘い声が漏れた。
「兄貴にもそんな声聞かせたのか?」
少し唇を離して政宗が囁く。
「ううん。アニキにこんなにドキドキするわけないじゃん。どうしよう…。何か、身体がふわふわして変……」
「変じゃねぇよ。もっと気持ちよくさせてやるよ」
段々と口付けが深くなっていって、身体から力が抜けていく。
軽く食むように唇を吸われるのがものすごく気持ちいい。
政宗の手がゆっくりと私の身体をなぞっていって、思わず甘い声が漏れた。
「本当はAだけのつもりだったけど。お前の兄貴への当てつけだ。Bまで覚悟しとけよ」
「ええっ!?」
政宗は意地悪そうにくっくっと笑う。
「隣の部屋だからなァ。声、聞こえるかもな。いい声で啼けるようになるまで、じっくり俺が教えてやるよ。手取り足取りな」
抗議しようとした声は、そのまま政宗のキスによって掻き消えた。
そして、政宗はその言葉通り、私が愛撫による快楽を享受するまで私を抱いた。
Fin…
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