近所に食材を買いに行く事くらいは出来たけど、政宗はなかなか私を離してくれなかった。
ベッドで抱き合ったり、二人で音楽を聴いたりして過ごすのは、とても甘くて幸せな時間だ。
いくら政宗の温もりを求めても足りない。
ボサノバをかけながら、政宗の腕の中でまどろんでいると、私の髪を撫でていた政宗が、私の顔を上げさせた。
「なあ。お前と結ばれた日、歌ってくれた曲が聴きたい。かけてくれるか?」
「うん、いいよ」
タオルケットを身に纏わせてベッドを抜け出ると、私はCDを差し替えた。
優しいキーボードのイントロからすぐに少し高い女性ヴォーカルの歌声が重なる。
政宗は、私の腕をぐいと引いて、ベッドの中に引きずり込んだ。
そして、私を抱き締めたまま、じっと歌声に耳を澄す。
「バングルスの『胸いっぱいの愛』っていう歌なの。それは日本語のタイトルで、元々は『Eternal Flame』っていうタイトルだよ」
「I see. Eternal Flameか…」
ふわりと笑って私に口付けると、政宗はもう覚えたのか、1番が終わると低く甘い声で歌い出した。
「Close your eyes. Give me your hand, darling」
あの日、私が政宗にしたように、今度は政宗が私の両目を大きな手のひらで覆い、私の手を取って政宗の左胸に当てる。
とくんとくんと、力強い鼓動が手のひらに伝わってくる。
「Do you feel my heart beating? Do you understand? Do you feel the same? Am I only dreaming? Or is this burning an eternal flame?」
政宗の声は甘くて優しくて、胸がきゅっと締め付けられた。
ただメロディーをなぞっているのではない。
言葉一つ一つに政宗の想いが込められていて、胸が熱くなる。
「You told me. We're not dreaming. It's an eternal flame.」
私の目を覆っていた政宗の手をそっと離して政宗を見上げて言うと、政宗は笑みを深めた。
「I know. お前がこの歌を捧げてくれた時、嬉しくて堪らなかった。だから、お前にもしてやりたかった」
私の頭をそっと撫でると、そのまま引き寄せて、酷く甘くて優しいキスをして政宗は微笑んだ。
「誕生日なんて、今まで考えた事がなかった。正月に祝いの席で贈物をもらっても、本当に大切にしたいと思うものはなかった」
私の頬をそっと撫でて、親指でゆっくりと唇をなぞりながら政宗は続ける。
「誕生日がこんなに意味深いものになったのはお前のお陰だ。俺は生を受けたこの日に感謝している。生まれて来て良かった。俺が生を授かった事が一番の贈物だったら、お前が俺にお前の心も身体もくれた事も、俺にとっては同じくらい大切な、かけがえのない贈物だ」
政宗は私の額にキスすると、私をかき抱き、首筋に顔を埋めた。
「お前がくれたもの全部、俺の宝物だ。誕生日のpresentも、この歌も。俺は絶対に忘れねぇ。例え、別れる時に何も持って帰れなくても、お前が愛してくれた事やこの歌は忘れねぇ。一生心に残り続ける俺のかけがえのない宝物だ」
政宗は少し身体を離して、両手で私の頬を包んだ。
「遙、お前が愛しい。愛しくて堪らない。もう二度と会えなくなるというなら、俺はお前に一生分の愛を注ぐ」
「じゃあ、私も政宗に一生分の愛をあげたい。政宗の愛があれば、例え添い遂げられなくても、この思い出だけで私は幸せだから」
二人の視線が絡み合い、身体が甘く痺れたような感覚に陥る。
どちらからともなく目を閉じて、私達はいつまでも甘い口付けを交わし、互いの温もりを求めた。
Fin…
政宗様お誕生日おめでとうございます!
生まれて来て下さってありがとうございます!
政宗様にEternal Flameを歌って欲しかっただけです(笑)
あの声で歌われたら死ねます。
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