風呂から上がった俺を迎えるように遙が俺の首に腕を回して背伸びをする。
少し屈んで抱き寄せると額が触れ合った。
唇が触れるまであと数cm。
遙の甘い吐息を唇に感じるこの焦れったい距離に胸がときめく。
伏せていた目を上げると、熱っぽい遙の視線とかち合った。
「キスして…」
いつもなら言葉を交わす前に俺が堪え切れなくてキスをしている。
でも何だか今日は遙を愛すのではなく遙に愛されたい気分になった。
いつもなら溢れる気持ちを肌の温もりで伝えたくて、それでも足りなくて飽きる事なく口付けているのに。
もし俺が何のアクションも起こさなかったら、遙はどんな風に俺にキスをするんだろう。
ふとそんな事が気になった。
「たまにはお前からしてみろよ。お前にキスされたい」
遙は一瞬躊躇ったような表情を浮かべたが、すぐに長い睫毛を伏せて俺の後頭部を引き寄せた。
下唇を食むだけの軽いキス。
それから唇の端に、顎に、また唇にしっとりと食むようなキスを落とされて胸の奥が甘く疼いた。
それから数回互いの唇を食むようにキスを交わして唇を離した。
「お前の唇、好きだ」
遙の唇は少しぽってりとしていて、綺麗な桃色をしている。
触れると柔らかく、遙がいつか買って来たマシュマロのように甘く蕩けるようだ。
初めて食べた時、遙とのキスの味のようだと思った。
俺は指先でゆっくりと遙の唇の輪郭をなぞった。
吐息を震わせて遙が瞳を伏せる。
「マシュマロみたいに柔らかくて、蕩けそうで…so sweet」
Kiss me more…。
吐息混じりに囁くと、空気を軽く震わせるように遙は忍び笑いを漏らし、また焦れるような甘いキスを繰り返した。
ただ絶頂を迎えるだけが快楽ではない。
こうして柔らかく触れ合う温もりだって較べがたいほどに心地よく、何より愛しい。
キスを交わしながら遙の頬を撫で、肩の輪郭を指先でなぞり、そして遙の手を取って指を絡め合うようにして手を繋いだ。
遙の体温が伝わる全ての所から、いや、こうして俺達が纏う空気からすら遙の愛が伝わって来る。
愛し過ぎて、苦しくなって。
それでもこの瞬間が大切で離しがたくて。
俺は飽きる事なく遙にキスをねだった。
Fin…
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