Skinship

政宗と過ごす時間は穏やかで優しい。
外に出かける事が多い私達だけど、何より幸せなのは、家で夕食を終えて、とりとめもなくテレビを見ている時間だ。

と言っても別段お気に入りの番組がある訳でもない。
何となくテレビを流しっ放しにしているだけだ。

食後のお茶を淹れて、ソファに身を沈めてテレビを見る。
そんな時は、政宗は私の肩を抱き寄せ、私は政宗の肩に頭を預けてぴったりと寄り添う。
その身体が温かくて、温もりから政宗の愛情が伝わってくるような気がする。

政宗に甘えるようにそっと胸に手を当てると、手のひらから温もりと心音が伝わってきてどうしようもなく幸せで、愛しさが込み上げる。
シャツ越しに政宗の身体をそっと愛撫しながら政宗の首筋に顔を埋めると、決まって政宗は私のこめかみにキスをする。
軽く触れるだけのキスが堪らなく好きだ。
そのキスが、額に、頬に、首筋に落とされると、政宗しか目に入らなくなる。
温かな身体に寄り添っていると、政宗の温もりからだけではなく、纏う空気からすら政宗の深い愛情が伝わってくるような気がする。

互いの指先を絡めて口付けを交わすと、政宗がくしゃりと私の頭を撫でる。
唇を離すと、私の髪を撫でながら、また政宗の唇が瞼に頬に触れていく。
幸せで堪らなくなって、政宗を抱き締めると、政宗も私をキツく抱き締める。
二人同時に甘い吐息を漏らすと、政宗はテーブルに手を伸ばし、リモコンでテレビのスイッチを切った。
これもいつもの事。
流れる音声が煩わしくて、ただ、互いの甘い吐息と愛の囁きに溺れていたいから。

「政宗、好き。愛してる」

目が合ってそう囁くと、政宗は幸せそうにフッと笑って、「遙、俺もだ」と甘い声で囁いた。

睦み合う訳ではない。
ただ、ソファに深く身を沈めて飽きる事なく触れ合っては見つめ合うだけ。

背中に回される力強い腕が好きだ。
抱き寄せられると安心して、甘えたくなる。
政宗の肩口に頬擦りをすると、政宗の温もりを一層近く感じて愛しさが込み上げる。
政宗もまた、指の背でそっと私の頬を撫でる。
緩やかな愛撫に、空気が濃密になっていく。

とても、とても甘い、愛し合った二人だけが纏う空気。

多くは望んでいない。
望んでいるのは、こうして二人温もりを分かち合う事だけ。
ベッドの中でも愛し合うくせに、私達はソファの上で、ただ優しく温もりを分かち合うだけの時間も大切にしていた。

この温もりと幸福感だけはきっと忘れられないだろう。

もっともっと身体と心に政宗の温もりと愛を刻み付けたい。
そうして私達は、夜が更けるまでいつまでも抱き合っていた。








忘れたくないんじゃない。
忘れられない。
目を閉じて思い出すのは政宗の温もり。
別れてしまって寂しかった。悲しかった。
でも、どうしてだろう。
目を閉じれば優しく温かな温もりを思い出して幸せな気持ちになる。

もう二度と会えないかも知れないけど、それでも幸せだった。
愛してくれてありがとう。
ありったけの温もりでいつも包みこんでくれてありがとう。
確かに寂しいけど、それでもこの想いと記憶はきっと一生消えない。

政宗、別れてからも、私、幸せなんだよ…。
政宗は私の心の中で今も鮮やかに生きているから…。


Fin…
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