媚薬 -2-

急にバタンとドアを開ける音がして、驚いた弾みでつけようとしていた化粧水の瓶を取り落としてしまった。
バスマットの上に鈍い音を立てて転がる。
それを拾い上げる余裕もない位に私は驚いた。
鏡に映る、私の肩の向こうに、眉を吊り上げて、鋭い眼光で私を睨みつける、政宗の視線と目が合ってしまったから。

どうして、そんな顔で睨むの…?
私、何か悪い事、した…?

振り返ってそう尋ねる間も与えず、政宗はあっという間に大股に私に近付き、後ろからギュッと抱き締めた。
政宗に抱き締められると、いつもキュンと胸が甘く疼く。
その後のキスをねだろうと、身体を捻ろうとしたら、無理矢理身体を鏡の正面に向かされて、首筋をキツく吸われた。

「あっ…!」

毎晩、政宗に愛されている身体は、敏感に反応し、思わず甘い吐息が漏れてしまう。
きゅっと瞑った目を開けると、首筋に吸い付いたままの政宗の左目は、熱を孕んだようでいて、どこか冷たく、私を射抜くような眼光で真っ直ぐ私を睨んでいた。
目が合うと、その目がすうっと意地悪そうに細められた。
そして、私を抱き締めたまま、手がバスローブの上から胸を乱暴に揉み始め、腰に回された手も腰からピップのラインをなぞるように艶めかしく動かされ始めた。
まるで、この場で抱いてしまうような仕草に慌てて抵抗しようと身を捩ってみるけれど、ますますキツく抱き締められ。
バスローブの上から胸の頂きをきゅっと抓まれ、熱い吐息と共に耳を舌で舐め上げられると、痺れたような快感に膝がかくんと折れて、思わず甘い声を上げながら、洗面台に両手をついた。

「やっ…!んっ…何…で、あっ!」

両手をついた事によって、抵抗出来なくなった私の身体に、政宗は遠慮なく荒っぽい愛撫を施していった。
胸を痛い位に鷲掴みにして揉み上げたと思ったら、胸の頂きを親指と中指でつまみ上げ、人差し指で容赦なく感じる所を攻め立てた。
堪らず、仰け反るように顔を上げたら、快楽に歪んだ自分の顔と、耳元に熱い吐息を吹きかけながら、横目で私の乱れる様を、さっきと変わらぬ表情のままでじっと見つめる政宗が鏡に映っていた。

吐息だけなのに。
胸への意地悪な愛撫だけなのに。
いつもより、感じてしまう。

「やっ…!!」

恥ずかしくて逃げ出したいのに、自力で立っていられないほどに甘く身体は痺れて、私は視界を遮るために俯いていやいやと首を横に振る事しか出来なかった。

「チッ…!」

耳元で政宗の舌打ちが聞こえ、次の瞬間には首の後ろの襟をぐいと力任せに引っ張られた。
バスローブがはだけて、肩から胸が露わになったのを感じて、慌てて隠そうと身体を起こしたけれども、私の手が届くより先に政宗はきゅっと頂きをつまみ、転がすように弄び始めた。

「ああっ!…んっ!やぁっ!」

再び身体を支えるために、両手を洗面台につく。
半分着衣のまま、肩と胸だけ晒された姿は、いっそ全裸よりも淫らだった。
胸の谷間は強調され、時折見せつけるように揉みしだきながら、すぐに、一番感じる所を執拗に攻められ、あられもない甘い声が止まらない。
感じると背中が反り返るので、否が応でも自分の乱れた姿と政宗のいやらしい指の動きが視界に入った。

まるで、犯されているみたい…。
こんな、半裸の状態で、男を悦ばせるだけのような姿で、鏡の前で、自分の乱れる様を見せつけられるなんて…。

こんなの、嫌なのに。
いつもみたいにベッドで優しくお互いの温もりを分かち合うように愛を確かめ合いたいのに。
そんな気持ちとは裏腹に、下腹部は熱く疼き。
いつもより熱を孕んだ雫が零れんばかりに溢れていくのを感じて、恥ずかしさと快楽に、頬も身体も紅潮していく。

「お前、顔が真っ赤だな、肩までピンク色に染まってる。此処だって…いつもより敏感で、綺麗な色しやがって…」

鏡の中の政宗はくつくつと意地悪そうに笑いながら、首筋から肩にかけて、舌を這わせた。
視線は、私の姿から目を離さないまま。
その間も、意地悪な指は、執拗に私の胸の一番感じる所を攻めたて続けていた。
もう片方の手まで加わり、いやらしく胸を揉みながら、左右同時に頂きを爪先で刺激されたらたまらなかった。
弱い首筋と、胸の強い快楽に、背中がびくびくとはねる。

「やっ…め…あっ…あんっ…やぁんっ!!」
「いい声だ…。もっと啼けよ。俺にしか聞かせない、俺で感じてる声を、もっと聞かせろよ」

身体がいう事をきかなくて、喘ぎ声が止まらなくて。
どんどん欲情して理性が犯されていく。
おかしくなりそうで、私は夢中でいやいやと頭を振った。
政宗は私の顎を掴むとくいっと鏡に向かせた。
首筋と肩についた、いくつもの赤い華。
何時の間にか、乳房に爪を立てられ、赤い筋が数本浮き上がっていた。
それが、かえっていやらしくて、視覚からも犯されているような気分になる。

「お前のこの格好、すっげぇ、エロい。こんなにここを硬くさせて、寝てる時より胸もこんなに大きくて…んっ…は…」

顎を掴まれ横を向かせられると、奪うような深い口付けをされた。
舌を、絡ませ、きゅっと吸われると、頭の中がぼんやりするくらいに気持ち良くて。

「んっ…んん…はぁ…」

キスですら感じてしまって甘えるような声が出てしまう。
キスの合間を縫って、吐息だけで政宗が囁く。

「んっ…お前は…んっ…俺だけの…んっ…俺だけの…はぁっ」

キスをやめると、再び噛み付くように首筋に吸い付かれ、意地悪な愛撫がまた始まった。
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